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ひとまず落ち着けそーだな

どうも、はんぺ(ry


いろいろあって遅れました。


第20話です。

ホテルのエントランスには出てくるときに見た場所と全く同じ場所で総支配人が立っていた。彼は入り口から人が入ってきたのに気付き、頭を下げる。


「いらっしゃいませ……おや、派祓様でしたか。お早いお戻りで」


「ちょっとね、気分がそがれた」

片手で適当にやり過ごそうとする。


「それは残念でございました。して、そちらの荷物は……?」


早々に支配人から俺の担いでいる麻袋について言及が来る。

それもそうだ。なにしろこんなにデカい荷物を涼しい顔で運んできたのだ。

不審に思うのも不思議ではない。


「俺は心配性でね」


薬だ。と暗喩する。

まさか総支配人もこの中に自国の姫様が収容されているとも思わない。


「踏み入ったことを……申し訳ありません」


「ま、心配すんな。それより、水持ってきてくれるか?コップ一杯でいい」


「わたくしが後でお持ちいたしますが?」


「んー…………」

多分バレるな。そんなことしたら。

だがしかし、いま俺が持っていく発言をしたら「何で大きな荷物を持ってもなおコップを自分でもっていくのか?」とか若干怪しまれそうだが……。ミスったな。あとでまた戻ってくりゃ良かった。


そもそも、総支配人が客のプライベートに踏み入るようなまねをするとは到底思えないのだが、ほんの少しの事でも不信感を与えたくはなかった。まぁ、結果このような状況に陥ってしまったのでまったく意味無いのだが。


まぁ、そうなってしまったのなら、『他人』から『関係者』へとシフトさせてしまえばいい。


「それより、なんかさっき街で噂を聞いたんだけど……」


「ハイ……?」


俺は支配人の耳元に口を持って行きヒソヒソ話モードに移行する。


「今、王城が権力争いでドロドロだとか」


「っ!?」と目に見える驚きかたをした支配人。

彼は周りを一瞥してほかの従業員に感づかれていないのを確認すると、ため息をついてそれにこたえる。


「おっしゃる通りです。今、現国王、現女王、第一王女の『レ・ア=ドラグニル様』、第一王子の『ハイドン=ドラグニル様』、第三王子『カイラ=ドラグニル様』が処刑のために地下牢へと投獄されました。主犯はラーギィ率いる宰相派のグループです」


「そんなこと言って大丈夫なわけ?」


思ったより酷い。

というか何故そんなにあっけなく捕まってるのかとかいろいろ疑問は残っているのだが…。


「あなた様なら口は堅いでしょう。他人との対応の仕方がプロのそれです」


やっぱ俺俳優でもやって行けたかもな……。

っつか、あっさりとそんなこと口にして大丈夫かね?


「でもなんでそれほどの一大事で街の人たちは平然としている?」


「それが、私にもわからないのです……現状が現状なので、下手な口外を謹んでおります」


「そうか……第二王子はどうした?」


「彼は数年前にすでに病気で他界されております」


となれば、

「王族全滅か?」


「いえ、最後の希望がおります……第一王女が命がけで逃がした第二王女『ミ・ラ=ドラグニル様』があの暴虐なラーギィを打ち取ることのできる最後の希望……と、私は信じております。ですが……」


「どうした?」


「行方不明なのです。国外に亡命したのであれば安心なのですが、その形跡はあらず……」


そりゃそうだ。そいつ俺が今持ってるからな。


「ラーギィだっけ?……よほど嫌われてんのなそいつ」


「もちろんです!王に刃向いあまつさえその地位を略奪しようなど……!」


「もし俺がそいつの手下だったらどうしてたんだ?」


「っ!?」


慌てて口をふさぐがもう遅い。

もし俺が本当にラーギィとかいうやつの手下なら本当に終わっていた。


「安心しろって。俺はただの客だ。あとで水よろしくな~」


ふむ、となると、王の腹心の反乱と考えて間違いないな。


しかし、いくつか不審な点がある。


一つ目、城の異常が一切城下町に漏れていないこと(総支配人を除く)。

二つ目、一度目にしただけだが、城の雰囲気が静かすぎること。

三つ目、関係ないかもしれないが、この国で『雪』を一切見ていないこと。

四つ目、そもそも何故総支配人がこの現状を知っているのか。


派祓は素直に異常だと感じた。


まぁ、『あの場所』と比べりゃまだまだかわいいものだ。

あの異常な研究所に勝るモノなど今のところどこにも無い。


ほっと胸をなでおろす総支配人に手を振ってエレベーターのレバーに手をかけ、


「そだ、総支配人。反逆者と逃亡中のお姫様。あなたならどちら側につく?」


「もちろん姫様にございます」


何も考えることなく彼は即答した。

これで信憑性は得た。ならばここは限りなく安全だろう。


俺はレバーに手をかけ、最上階へと向かう。








「おかえり~……うぁ~」


ジャージ(下)に白のTシャツ(ピンクのブラがうっすら透けている)を着てベッドにうつぶせの某お姫様はエレベーターのドアが開くのを見てむっくりと起き上がる。


「良かった。まだ治ってないな」


「あんたどんだけサディストな思考回路してんのよ~」


言いながらトントンと軽く頭をたたくサフィ。


「治ってなかったら薬買って来た意味がない」


「言われてみればそうね。にしても…」

その黒いマフラー、似合ってる…

と、思ったはいいが、なぜか声に出すことはできなかった。


「ん?」


「な、なんでもない」


「?……ほらよ」


「ありがと」


俺はクスリをサフィに手渡し、姫様入りの麻袋を静かに床に卸す。

サフィはその薬を手に取って何やらつぶやいている。


「何してんの?」


「あれ、派祓知らないの?これは魔法薬よ?飲む人が魔力を込めて自分の病状を念じるの。風邪とか二日酔いとか軽い症状ならこれで直るわ」


「は?」

便利にもほどがあるだろ……。


サフィは元気よくゴクゴクと一気飲みで飲み干しすぐさま復活した。


「このご都合主義めが」


「派祓の世界はなかったの?」


「そんな薬どころか魔法すらない」


「えっ!?嘘!魔法ないの!?」


「代わりに科学が発達していた。おそらく、魔法と同等だ」


『科学』という単語に首をかしげ、『自然魔法』ならあるわよと答える。

俺がまぁ間違ってはいないと答えると、サフィは今度、俺の持ってきた麻袋に目が行った。


「アレ何?」


「女の子」


「女の子?」


「なんか誘拐されそうになってたから逆誘拐してきた」


スパァン


「痛いじゃないか」


スリッパで豪快にはたかれた。


「どんだけ突拍子もないことしてくれちゃってんのよアンタ!何で誘拐し返してんのよ!っていうか何でここに連れてきたのよ!っていうかよく不審がられなかったわね!?」


「此処は俺が今一番安全な場所に変えてきた」


「どう言う事?」


俺の言葉を理解できていないサフィ。

もうすぐ分かるであろうから、俺は麻袋から姫様を取り出した。


「んー、ふにゃぁ…」

寝ている。


「うわ、サイテー」


「なんでだ」


俺は反論しながら大量の綿の中ですやすや寝ているミラをベッドに寝かせた。

服装はいかにもどこかの村娘といった感じの白ワンピース、髪は銀色のふわふわロング。瞳の色はつむっていて見えないが碧眼、肌は白く顔は美形。お姫様ですと言われても誰も疑わない程度には美人である。姫様だが。


……要するにサフィといい勝負だ。胸以外。


……胸以外。


「なんか納得」


「何にだ」


「誘拐犯に」


「とりあえず起きたら事情を聴かないとな」


「とっても面倒だったらどうする?逃げる?」


どっちでもいいが、面倒なのは間違いないぞサフィ?おまけに今更逃げるとか無理。なんせサフィと俺は今一国の権力闘争の真っただ中にいるんだからな(笑)。




「派祓さま。水をお持ちいたしました」


ここで、エレベーターに乗って総支配人が水を持ってきたようだ。

派祓とサフィの2人はそろってそちらを向く。


「水?」


「なんか飲みたくならないか?薬飲んだ後とか……口直し的な?」


まさかあんなご都合主義全開の薬があるとは思わなかったがな。


「ま、そう言う事ならありがたく受け取るわ」


言ってサフィは水を飲み始め、役目の終わった総支配人は帰ろうとしてふとベッドを見た。

もちろんそこには先ほどの話題の中心人物がいらっしゃる。


「ひ、姫様!?」


ブフーッ!「姫様ぁ!?」


「おい、なんでわざわざ俺の方を向いたし」



総支配人は顎が落ちそうなほど呆然とし、


サフィは思いっきり俺の顔に水を吹き出し、


俺はタオルで顔をふく。


当の本人はすやすや寝ている。



とある王国の一大事は意外なところで解決の兆しがさしてきた。

そんな気がした。

そろそろ区切りをつけないと…

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