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で、ここどこよ?

どうも、はんぺn(ry



というわけで第13話です。



「……要するに、アンタは別の世界で『規格外』って言われてこの世界に飛ばされたと……この世界ですら規格外な力を持って」


「無理矢理な」


「で、この状況につながるわけ?」


「そうなるな。多分」


雪原のど真ん中で2人は派祓の胴体に現れた無数の線を観察していた。

左腕の付け根……おそらく心臓から血管をたどるように首元からみぞおちのあたりまで届いた奇怪な、漆黒の魔力線。それが派祓の胴体の表のほぼ全てを占めていた。


胴全体を蝕むようなそれを見たゆきちぃは思わず顔をしかめる。


「これ、魔術回路……?気持ち悪い」


「おい」


「ご、ごめん……でも普通は見えないはずなのよ?」


「……あの最後の、床にあったやつと関係してるのか?」


「とりあえず詮索はあとにしましょう。私たちは『転移魔法』で飛ばされてきたみたいだし」


おそらくあの城に床にあった『魔方陣』のようなものがそうなのであろう。

派祓もまくったシャツをもとに戻して辺りを見る。


「で、見知らぬ雪原にダイブ……と。しかも椅子ごと。それにしても、なんか嬉しそうだな」


「当然!私の人生に抜け道ができたんだもの!!!」


とっても嬉しそうなゆきちぃ。


……傍から見ればそう見えただろう。

でも俺にはそうは見えない。多分本人もわかってない。


自分が心の底から笑っていないことに、彼女は気づいていない。



「さ、そろそろ行きましょ?」


「どこに?ここどんな領地か分かってないんだろ?」


「まぁでも、あの規模からしてみれば首都レベルでしょ?しかもこの雪から察するに、ここは……まぁいいわ。それに、私が王族だなんて向こうは分からないでしょ」


「ま、そりゃそうだ。亡くなったと思われていたはずの姫様が転移魔法で領地に忍び込んでいるなんて誰も思わないだろうな」


「それに、そもそも『転移魔法』なんて使える人間はこの世界2000年の歴史上、過去5人程度よ?ましてや目視可能、歴代大魔道士20人相当の魔術回路なんて持ってる人間なんてこの世界初じゃないかしら?」


「……もし、バレたら?」


「良くて公爵令嬢、国の姫様レベルから婚約の嵐。悪ければ実験台」


おい待て。


「しばらく使わずに隠すぞ?」


「いいわよ?どうせすぐに帰ろうとも思わないし。そうだ!せっかく来たんだから観光でもしましょうよ!」


まぁ何とも楽しそうだ。


そのあと、俺は歩きながら此処のわずかな情報を得た。詳しい話は宿でするそうだ。


何でもここは『グランツ王国』とかいう国の領土らしい。

特徴はなんといってもこの雪。今自分たちの足元に積もっているこの雪は厚さが3㎝程度ではあるが、向こうの山は相当積もっている。そして何より寒い。


「にしてもずいぶん北に来たわね?」


「ダジャレ?」


「永久凍土とお友達になりたい?」


どんな言い回しだ……。


「で、どうする?とりあえず凍死する前に首都に入るか?」


自分たちが今いるわずかな丘からすぐ近くに、この世界にしては機械の溢れている近代都市のような風情の都市が広がっていた。歩いておよそ10分くらいの道のりを指し示す。


「そうね、この椅子売れば当分は潜伏できるわ」


一緒に転移魔法に乗ってやってきたかわいそうなまでに不幸なこの椅子は立派な素材でできており、背もたれには綺麗な刺繍が施されている。これは高く売れそうだ。


とりあえず、『解放軍』の制服を標準装備のゆきちぃとスーツ姿を譲らなかった俺たちは首都へと向かった。もちろん、俺が椅子とゆきちぃ・・・・を担ぎながら……ん?


「なんでお前俺が持ってる椅子に座ってるわけ?」


「何で派祓は私が座ってたのに気付かないわけ?」


「軽いから気づかなかった」


「無意識型の乙女キラーね貴方。サイテー」


そこまで言われるもんかね?


「理不尽だ……」


さすがに今の状況で「お前の体の方が男性キラーだろ」とか言ったら上からメテオ程度なら降りかねない。しかも下手すれば大事な収入源イスが消える。


「何か言おうとした?」


「言うまでもないかと思って」


誰が嫌味ひとつで収入イスを棒に振るか。


「言う~?……何を?」


しくじった。

今の一言で天使と悪魔が入り混じったような気がした。


とにかく今わかることはゆきちぃが何かに感づいたことだ。マズい。


今思えばなんだこのシュールな絵は?

黒スーツ着た就活真っ只中の一般異世界人が現国王有力候補が座った椅子を両手で持ち上げて近くの街まで運んでいる。もっとシュールなのが、そのお姫様が今全力でイライラしているとこだ。


「大したことじゃない。それよりほら、着いたぞ?」


「ほんとだ」


ちょっとだけ(?)残念そうにつぶやいた。


目の前には都市の外周を取り囲む大きな塀と中へと通じる大きな門があり、その手前で2人の兵士たちが警備をしていた。雪国ということもあってか、紺に近い青を基調とした警備服を着ている。


「止まれ。何者だ?」


「おらぁ、椅子を売り歩いて商売してるもんです。首都のお客様からこの椅子の注文を預かっとるもんで、妹と一緒に遠路はるばるここまで来たしだいどすえ?」


どこぞの田舎に伝わっているであろう謎の方言を駆使する俺。

兵士どころか、ゆきちぃまでも顔をしかめている。


(((何なのコイツ?)))


心配するな。俺も知らん。


「あの、それでは急ぎますんで……」


「まて。その娘を置いて行け」


は?

俺はすかさず突っかかろうとしたゆきちぃを相手に気づかれないように制す。


顔を上げると下種な笑みをこぼす2人の衛兵たちの顔がそこにあった。

全く、ゆきちぃ、人のことが全く言えてない。

理由はわからなくもない。というか、ほかに考えられない。

一国を背負う予定だった美人姫様が男の注目をひかずに通れるわけがなかった。


「そ、それは困ります!妹を一人でそんな……」


「この都市は物騒だ」


お前が言うか?


「だから、こんな可愛い子がいたら、すぐに攫われちまう。だから俺らが親切心で保護してやろうっていうんだよ!!!田舎者はすっこんでろ!」


下心が見えすぎてゆきちぃの不機嫌度がヤバい。


兵士の一人は俺のことを押し飛ばそうとしてきた。


よし。これで正当防衛になるな。

ちなみにゆきちぃは相変わらずの不機嫌+ジト目である。


「っ」


スッ、ズドン


俺は兵士の腕が自分の方に触れる寸前でその手をつかみ懐に回り込んで一本背負い。

もちろん、首元からはみ出ている魔力線を相手に見せないように配慮する。


「いやぁ~あぶなかっただぁ~」


「き、貴様!」スチャッ


残りの兵士は剣を抜いてきた。

が、所詮は番兵・・・・・。俺の相手ではない。


ドガッ、ボキッ


「あ」


とある攻撃を敵にくらわせてから気づいた。


「…………何よその「あ」は」


不機嫌+ジト目に呆れが加わったかのような表情でなおも俺を見るゆきちぃ。

俺はその視線から目をそらす。


「てっきり鎧付けてるかと思った」


「それで?」


「あばら2~3本逝ったかもしれない」


「…………逃げるわよ」


俺とゆきちぃは全速力で門の内側に入って行った。

もちろん、俺は椅子をおいていくというような愚かなマネはしない。


今夜はゆっくり寝よう。


しみじみそう思った。

というわけでやってきました雪国!

果たしてどうなるのだろうか……


何かあれば……

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