さて、初お披露目といこうか
どうも、はんぺn(ry
第11話です。
---------side倉敷派祓---------
俺は今空を飛んでいる。
正確には落下している。
眼下に見える大理石の床まであと1秒弱。
上を見れば般若のような顔をした少女が一人。
ゆきちぃの胸の感触=priceless。
……なんて馬鹿なことをやってる場合じゃない。
俺は落下しながらクロウ君に「あとはよろしく」と視線を送る。
さて、オトリ兼能力お披露目と行きますか……。
ズガン
「な、何事だ!?」
「く、曲者!」
「いや、でも、天井から落ちてこなかったか?」
突然の出来事にその場に集まってくる衛兵たち。
皆、頭まで鎧を着て剣や槍のようなものを持って武装している。
「いっつつ……ホントに容赦ねぇなゆきちぃ」
「「「っ!?」」」
空中で一回転し足から着地。
地面の大理石にはクモの巣状にひびが入った。
俺は殴られた顎をさすりながら何ごともなかったかのように立ち上がる。
「やはり曲者だ!打ち取れ!!!」
「……やっぱ俺の体強化されてんな。やっぱり正体不明の力ってのはこうやって確かめるのが一番だ」
自分の体の状態を確かめる。
-----まず初めに、あなたにデフォルトで付着している無属性身体強化スキルについてですね
あれほどまでの攻撃を受けて無傷というのは生身の人間ではまずありえない。
-----それは、もとの世界のあなたのステータスをこちらの世界に適応化したものです。まぁ、自分で使って確かめてみるのが一番でしょう。
ユキの説明が脳裏をよぎる。
そして、丸腰の人間相手に武装した100人の兵士たち……
派祓は腕の関節をこきこきと鳴らしながら迫り来る兵士の一人を見据える。
「てやぁぁぁぁ!!!」
「っ!」
顔めがけて躊躇なく振り下ろされる相手の縦切りを鼻先1cm程度のすれすれでかわし、すかさず右手を相手の兜へ。剣を持つ敵の両手へ手刀を浴びせる。
カランッ
その流れですかさず身体にひじ打ちをめり込ませる。
ドサッ
その動きを見ていたほかの兵士は何が起こったのかわからないような表情をしていた。
「い、一体何が起こった……?」
「なんだあの技は!?見たことないぞ!?」
兵士たちが動揺の声をあらわにし、後ずさる。
俺は兵士の落とした剣を拾い上げ、残りの兵士へ剣を向ける
「死にたくなければ早々に去れ。来る者に容赦はしない」
「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
得体のしれないものの恐怖におびえて一人突っ走ってきた兵士の剣をかわして足を引っ掛ける。そして、体勢を崩した相手の後頭部へ柄の部分を振り下ろす。
ガッ!ドサッ
すると兵士は力なく床に倒れた。
「こいつの二の舞にはなりたくないだろう?」
「「「うぉぉぉぉ!!!」」」
シュン、ゴッ、ドカッ、スパッ、ズドン
「はーい。次の方どうぞ~?」
派祓は同時に5人を相手どるペースで敵をさばいていく。
もとの世界にいた自分の体と同じ感覚、同じ感触……すべてが完璧なコンディション。
「てやぁぁぁっ!!!」
後ろから切りかかってきた敵に対して振り向きざまにスレスレで剣を躱し、振り下ろされる剣の腹を右手の人差し指で撫でながらそのまま剣を持つ相手の右手首を右手で掴み取る。
「悪くはない」「っ!?」
「が、」
掴み取った腕を地面の方へと引っ張った。
当然兵士の体はそれにつられて体勢を崩す。
そして、地面へと向かう兵士の視界に派祓の左手が映り込む。
正確には、剣を持ったままのその鉄拳が。
グシャッ「ごがっ!?」ドサッ
腕をクロスさせるような体制で敵兵を無力化した。
殺しはしない。
出来ないのではなくしない。
理由はただこの兵士たちが不憫に思ったから。
間違いなく今の王に不服を抱いている兵士たちも少なくはない。何しろあのゴミは衛兵が自分を命がけで守るのを当たり前のように思っているからである。加えて今の王は頭が悪い。
利用するのならもっとうまく利用するべきだ。
その国に仕えているのなら少しくらいの不服、不公平は当たり前のはずだが、此処の王は最初から理不尽だ。そんなものについて行こうとするのは一部の甘い汁を吸おうとする、悪どいお偉いさんかよほどのバカだけだ。
不満も絶えないだろうに……。
「うおおおおおお!!!」
倒した敵が地面に倒れた瞬間、またもや別方向から敵が斬りかかってくる。
派祓は掴んでいた右手首を離して右手に剣を持ち替え、その剣を受け止める。
そして、
「なっ!?」
そのまま敵の勢いを殺さずに剣の軌道をわずかに派祓自身から右にずらす。
「遅い」
そのまま派祓は左足を軸に右ひざを相手の胴に打ち込む。
「かはっ!?」
くの字に折れ曲がった体が派祓の脚から離れた瞬間、派祓は曲げていた膝を伸ばす。軸足である左足にスナップを効かせて伸びた分の脚のリーチで回転蹴りをお見舞いする。
-----『自身の魔力』を右足に束ねて。
ズガン!!!
ドサッ!
その兵士は反対側の壁まで吹き飛ばされ壁にひびを作って停止した。
そのまま兵士は重力に従って地面に倒れた。
-----あなたの性質は『束ねること』。あなたに備わった莫大量の無属性魔素を一点に収束させて放つことだって可能です。もちろん、応用次第でもっと高度な能力として扱うことができるでしょう…
ユキの言っていた言葉。
感覚でつかめるほど簡単な内容。
それでもこれはむちゃくちゃすぎる。
「く、くそっ!何で俺たちがこんな目に……!」
硬直状態の中、不意に一人に兵士がそんなことをつぶやいた。
「これくらいでいいかなー」
俺はそれを聞いて構えを解き、剣を下した。
意味の分からない衛兵はその場で剣を構えて一歩も動かない。
さて、この数は面倒だし、一芝居打つか。と考える。
どこまでが新しい王を歓迎するか……ま、面倒なことはゆきちぃに丸投げの方向で。
派祓は持っていた件を地面に突き刺し、そこに両手を載せると口を開いた。
「聞け!我ら『解放軍』は暴虐な現国王を打ち取り、新たな王『スノーフィア・ブリューゲル』をその王座に置かんとする組織だ!それを達成したあかつきには現状の待遇全てを見直し検討の末、貴君ら国民すべてに快適な暮らしを提供する所存だ!この考えに賛同せんとするものは今すぐに剣を捨てよ!罪に問うつもりは毛頭ない!!!我が偉大なる新たな王を祝福せんとする者全てを歓迎し迎え入れよう!!!」
かなり力の籠った大声でそう口にすると、辺りは静まり返る。
ま、リーダーだし綺麗だし、大丈夫だろ一国の王くらい。
そういう問題ではないとどこかから聞こえてきたような気がした。
カラン
一つ、金属が床に落ちる音がした。
「な、なんと……あのスノーフィア様が」
兵士の一人が呆然として剣を取りこぼした。
「確か、3年前に亡くなられたと聞いたが……」
「生きておられたのか……!?」
……あれ?嘘、マジでほんとに姫様かアイツ?
その場にいる兵士全員が驚いたような表情をした。
もちろんガチで姫様だったとは知らない俺もビックリだ。が、これは使える。
「そうだ!ゆき……スノーフィア……さま?はこの3年間、この王国を奪還すべしと活動してきたお方だ!今のゴミみたいな王が国のトップでいいのか貴様ら!?その甘い蜜をすする自己中の大臣共のためにその命を犠牲にしてもいいのか貴様ら!?今こそ革命の時だとは思わないのか!!!」
「「「「「っ!」」」」」
徐々に兵士たちの心が傾き始めている。
もともと待遇に不平不満があるのは火を見るよりも明らか。
ならばここで切り札導入と行こう。
「それに、スノーフィア様はこの3年間でめっちゃ美人に育ったぞ?」
「「「「「っ!?」」」」」
「考えてもみろ!お前らの君主があんな薄汚いブタでいいのか!?それで他国に自国を自慢できるのか!?考えても見ろ!もしスノーフィア様が王位につけば、それはもう、めっちゃ自慢できるぞ!何しろ美人だ!胸もデカい!ドレスを着たあのお方は世界中のどの女性にも勝る!そんな彼女に仕えてみたくはないのか!?どうせ命を懸けるのならゴミより美人だ!そうは思わないのか!!!」
演説終了。ちょろいな。
俺は大学で一通り『人間の集団心理』を習得している。
わずかな沈黙の後、兵士の一人が口を開いた。
「す、スノーフィア様万歳!」
それがきっかけ。
「「「スノーフィア様万歳!!!」」」
声は声を呼び、いつしか意識のある兵士の大歓声と化した。
「「「「「スノーフィア様万歳!!!!!スノーフィア様万歳!!!!!」」」」」
「き、貴様ら!いったい何をほざいている!!!王は私だろうが!!!」
すると、いいところを邪魔するように後ろからゴミ……現国王が出てきた。
よく見れば肩から血を流している。
大方命かながら逃げてきたというところであろう。
そんでもってここにいる100人の兵士たちを使って形勢逆転を図ろうとした。
俺が懐柔してるとも知らずに。
「クロウ君、わざとでしょ?」
俺は王の後ろから出てきたクロウ君に声をかける。
剣を出していないが、切ったのは彼であろう。口が笑ってる。
「絶望っていうのは希望が裏切られた瞬間が一番精神に効果があるんです。まさか懐柔しているとは思いませんでしたがね」
なるほど、クロウ君中々腹黒いな。
「だって1対100とか面倒じゃん……ゆきちぃは?」
俺がそう聞くと、クロウ君は噴き出した。
「派祓さん、あの声、こっちまで丸聞こえでしたよ?ククッ」
その言葉と同時に後ろからゆでだこのように真っ赤な顔をしたゆきちぃが出てきた。
そして、その姿を見た兵士たちが「綺麗だ……」とか「あんなに成長されて……」とかしみじみした声が聞こえてくる。
そしてゆきちぃの目は完全に俺をとらえていた。
あ、やばい。こっちくる。
ガシッ「クロウ君!あとお願い!」
「なっ!?」
なんてスピード!?見えなかったぞ今!?
「かしこまりました、王女陛下。ただちにそのゴミをひっとらえろ!!!」
「「「「「はっ!」」」」」
元国王は今まで身を守ってもらっていた兵士たちに連行された。
一方俺はなすすべなくゆきちぃに連行された。
ただ、照れてる彼女はなかなか可愛いかった。とだけ言っておこう。
はい、というわけでチートじみてきました(笑)
何かあれば……