エピソード2「悪人の仮装」①
「ババ!!」
ある街で起きる連続失踪事件。
真相を追う刑事、沢登修吾と
街で喫茶店を営む女店主、馬場カーミラルの物語。
「ちゃちな悪事で悪人ぶるなよ。みっともないぜ。」
=①=
「四季はもう、なくなったね」
そんな言葉が、日常の会話に織り込まれるようになった昨今。八月の猛暑が暦の上では終わりを告げても、太陽はなお容赦なく、激しい暑さという名の贈り物を今日も街に届け続けていた。
九月。残暑は、夏の終わりを引き延ばすかのように、その扉を閉じることを拒んでいる。
それは深水市中央区・中瀬も、今日もニコニコ笑顔な太陽からの“返品不可”の暑さを受け取っていた。
それでも、空気の中には確かに秋の足音が混じり始めていた。朝晩は過ごしやすくなり、初秋の香りがふとした瞬間に鼻先をくすぐる。たしかに残暑は厳しい。だが、それは肌で感じられる“季節の境目”でもある。
しかし、昼間の暑さと夜の涼しさが生む大きな寒暖差は、意識せずとも人々の身体に無駄な体力を要求してくる。それもまた、現代のこの気候という“都合”においては、致し方ないことなのだろう。
温暖化という言葉が、人々の耳に届くようになったのはいつ頃からだっただろうか。その言葉を初めて聞いた頃、誰もが今のような灼熱とも言える猛暑を想像していたとは思えない。だが、それは現実となり、今という時代の空気を確かに形づくっている。
四季が二季になった。そんな言葉が冗談ではなく、日常の実感として語られるようになった昨今。それでも人は、何だかんだ変わらぬ日々を過ごしている。「暑いねぇ」「そうだねぇ」と言葉を交わしながら、いつものように時間に追われ、予定をこなし、街を歩く。
そんな中瀬の街も、今日という朝をいつも通りに迎える、はずだった。
深水市中央区中瀬。レトロな商店街、カルチャー系の施設、個人店と雑踏が混在するこの街は、観光とサブカルチャーが交錯する独特の情緒を持っている。だが今、この街では、ある奇妙な事件が立て続けに起こっていた。
深水市中瀬連続失踪事件。
この一年という短い期間に、老若男女を問わず、人が忽然と姿を消す。しかも、その手がかりは一向につかめていない。事件は深水市中央区、特に中瀬を中心に頻発し、今やこの街は“人が消える街”として都市伝説のように語られるようになっていた。
噂は口コミやネットを通じて急速に広まり、街の空気にじわじわと染み込んでいく。 だが、失踪者を知る者たちは、なぜか口を閉ざす。「自業自得だ」と、誰もがそう思っているようでいて、誰もそれを口にしない。語られぬまま、しかし確かに共有されている“何か”が、この街には存在していた。
そんな街を騒がせている連続失踪事件。今日は、それをひとまず脇に置いておこう。
この日の中瀬は、別の出来事によって大きくざわめくことになる。そしてその騒ぎの果てに残されたのは、“三人の若者の失踪”という新たな記録だった。
結果としては、またひとつ失踪事件が加わったに過ぎない。だが、この出来事は、街にとって少しばかり特別だった。
中瀬の街は、それをどこかで“歓迎”していた。そして同時に、恐れを新たにしていた。
この日の中瀬は、まるで失踪という現象が街の呼吸の一部になってしまったかのように、 人々はそれを、静かに受け入れているかのようだった。
◇◆◇
馬場カーミラルの朝は早い。喫茶店Terminalの開店は午前八時。それに間に合わせるため、彼女は毎朝五時五十五分発の地下鉄に乗り、中瀬へと向かう。六時には店に入り、店内と表の掃除、コーヒーの抽出、モーニングの仕込み。その朝は、静かでありながら慌ただしく、彼女の手は止まることがない。
時刻は五時五十五分。今日も変わらず、馬場は駅のホームに立っていた。通勤ラッシュにはまだ早い時間帯だが、地下鉄深城線棚田駅構内にはちらほらと人影がある。それは街がゆっくりと目を覚まし、今日が動き始めていることを、どこか物語っているようだ。
そんな中、電車を待つ馬場の姿はひときわ目を引いた。長く艶やかな黒髪。白のシャツに、体のラインがすっきりと映えるデニム。立ち仕事に適した動きやすい白のスニーカー。買い物鞄として販売されたにも関わらずその機能性とファッション性を兼ね備えたラージサイズのベジバッグを肩にかけた、奇麗な立ち姿。
姿勢はまっすぐに、視線は静かに前を見据えて。その佇まいは、始発の電車の到着を待つ駅の中で異質なほど整っており、まるで街の風景に一筆、意図的に描き加えられたかのような凛とした存在感を放っていた。
時間通り、地下道を押し出すような空気の流れとともに、深鉄線棚田駅に電車が滑り込んできた。シュゥゥ……カタン、停止した電車の乗降扉が静かに開くと、馬場はまるで吸い込まれるように車内へ足を進める。扉からすぐ近くの席に腰を下ろし、ホッと一息、呼吸を整える。
深水市営地下鉄、深鉄線右回り。ここから六駅先になる津ノ上駅まで、中瀬の街へ向かうまで二十一分間、地下鉄車両に揺られての移動。
その間馬場は、いつものようにバッグからスマートフォンを取り出し、画面に「深中新聞Web版」を表示させた。画面に並ぶ見出しのひとつに、スッと目が止まる。
八月末までに七人が失踪。 通称「深水市中瀬連続失踪事件」。
八月の深水市議会議員・白川誠一郎の失踪以降、事件は日々、大小さまざまな形で報じられ続けていた。その記事は、もはや日常の一部のように、馬場の“黒い瞳”にスーッと吸い込まれるかのように静かに溶け込んでいた。
わずか一年という短い期間で、老若男女を問わず人が消えていく。その手がかりを一向につかめないこの事件は、深水市中央区、特に中瀬を中心に頻発していた。今や中瀬は、“人が消える街”として都市伝説のように語られ、その噂は口コミやネットを通じて急速に広がっている。
遂にオカルト雑誌もこの現象を取り上げ始め、 「深水市の神隠し!?新進の妖怪の仕業か?」 そんな見出しが紙面を飾り、その界隈はちょっとした盛り上がりを見せていた。
そして、街の空気をさらにざわつかせたのが八月に起きた、深水市議会の重鎮と言われる男、白川誠一郎の失踪だった。
それを新聞が騒ぎ立てないはずもない。だが、報道の熱量はどこか的を外しているようで、街には奇妙な“冷めた空気”が漂っていた。
失踪者の名前が大きく取り上げられるたび、その人物にまつわる“裏の顔”の噂が、嘘か誠かと囁かれる。そして、彼らを知る者たちは決まってこう言うのだ。 「自業自得だよ」と。
誰もがそれを知っている。だが、誰もそれを口にしない。その声のある沈黙こそが、街に冷ややかな空気を染み込ませているかのようだった。
“新進の妖怪?失礼ね。私を生んだのは、アンタたちじゃない。ニシシシシシ…”
フォオォフォォォォン。地下鉄車両が流れるように、滑るように走行音を響かせながら、地下道の空気を震わせて進んでいく。その車内でほんの一瞬、馬場の瞳が“金色”に輝く。だが、それに気づいた乗客はどうやら誰ひとりいない様子。
彼女はスマートフォンの画面を静かに閉じ、目を閉じてひとつ、深くホッと息を吐く。
その吐息は、人間の仕草のようでいて、そうであってもまるでどこか“人ならざるもの”の静かな余韻を残していた。
深水市営地下鉄・深鉄線「津ノ上駅」。 深水市中央区中瀬北二丁目「喫茶店Terminal」に最も近い地下鉄出口のある駅である。
棚田駅から二十一分。地下鉄に揺られ、津ノ上駅に到着した馬場は、いつものように九番出口へと向かう。姿勢はまっすぐ、ペースはやや早め。スッスッとリズムよく進む足取りは、とても軽やかだ。構内に響くのは、彼女の靴音だけ。静かな朝の空気に、小さくささやくような足音がスッと溶けていく。
改札口から二番目に遠い九番出口まで、徒歩でおよそ三分。その階段を登れば、地上へ。 そして、そこから一分もかからず、彼女の店、喫茶店Terminalに辿り着く。
六時二十分。構内を歩くまばらな人影。街はまだ目覚めきっていない。そんな中、馬場の一歩一歩は、その静けさに確かな今日の始まりを思わせていた。
「さあ、今日もがんばっていきましょうか。」
彼女の唇からこぼれた小さな呟きが、朝の空気に溶けていく。だがその瞬間、彼女はすぐに異変に気づいた。登り始めた階段通路の壁面。そこに、昨日まではなかったはずの落書きがある。
黒のスプレーで描かれたそれは、絵画なのか図なのか、それとも何かの記号なのか、判別しがたい。それをいずれ誰かが“芸術”と呼ぶかもしれない。だが今の馬場の目には、ただの無秩序な痕跡にしか映らなかった。
“……いまだに、こういうことをするんだ。滑稽ねぇ。”
吐き捨てるような呟きが、誰もいない通路に静かに吸い込まれていく。
その数分後。馬場カーミラルは喫茶店Terminalの前に立っていた。表情はない。ただ、口元に浮かんだのは、言葉にならない“闇笑”。それは、優しい女店主の顔とは似ても似つかぬ、冷ややかな微笑みだった。
◇◆◇
「何だこりゃ?」
八時七分。深水市中央区中瀬北「喫茶店Terminal」の前。残暑の太陽が街をじわじわと熱し始める頃、沢登修吾はそこで足を止めた。
その口から漏れた第一声は、シャッターに貼られた“臨時休業”の張り紙に向けられたものか。それとも、シャッター一面に描かれた、芸術的絵画とも無作為無造作な記号ともつかぬ黒のスプレーによる“何か”に対してだったのか。どちらにせよ、沢登はそれを見た瞬間、思わず思考に浮かんだ言葉をそのまま声にしていた。
Terminalの白いシャッターには、「本日臨時休業」とだけ書かれているA4サイズの紙が一枚。だが、それ以上に目を引くのは、黒のスプレーで無秩序に描かれた絵、図形、記号の群れ。それは芸術と呼ぶには“幼稚”、悪戯と断じるには行き過ぎだ。
世間一般大多数の九割がこれを見れば、きっと“落書き”か“悪戯”と答えるだろう。だが、沢登の目には、それだけには見えていなかった。
沢登修吾はスラックスのポケットからスマートフォンを取り出した。シャッターに張り紙があるということは、馬場はすでにこの状況を把握しているはずだ。彼女とは店の店主とそこの客という関係ではあるが、それでも何か一言、声をかけておきたい。そんな思いが、自然と胸の内に浮かんでいた。
香蘭亭に行くとき、馬場とは連絡先を交換している。沢登は迷わず画面をタップし、耳にスマートフォンを当てると、コール音が二回、三回……五回。
『こんにちは、馬場です。今は電話に出られません。ご用件を発信音の後に残していただければ、後ほど折り返します。』
馬場の声が録音された留守番電話のメッセージが流れる。 沢登はひとつ息を吐き、スマートフォンを静かにポケットへ戻した。
「悪戯にしても、これはちょっと酷いな……」
ぽつりと呟きながら、沢登はもう一度シャッターに目をやる。黒のスプレーで描かれた無秩序な“何か”が、白い面に広がっている中に、ぽつんと小さく貼られた臨時休業の張り紙。それからは、どこか言葉にできない寂しさが滲んでいた。今朝のいつものコーヒーは、お預けだな。沢登は小さくため息を吐いた。
馬場のスマートフォンには、彼の着信履歴が残っている。手が空けば、きっと折り返しがあるだろう。それまで待てばいい。
彼女の淹れる一杯ではないが、朝のコーヒーはやはり欠かせない。 沢登は、香蘭亭と同じ通りにある別の喫茶店へと、静かに足を向けた。
喫茶店Terminalを離れ、中瀬商店街のアーケード街へと足を踏み入れた沢登修吾は、思わず空を仰いだ。 目に映ったのは、いつもと違う街の風景だった。
「……おいおい。」
Terminalだけではない。アーケード街の店々のシャッターにも、黒のスプレーで描かれたそれがいくつも見られる。Terminalと同じように、無秩序に描かれた絵、図形、記号の数々。芸術とも言えず、記号とも呼べず、ただ無秩序に広がる痕跡。誰かが町中のシャッターを狙って、無作為に落書きをして歩いた……これは相当悪質な悪戯だ。
通りでは、店主らしき人物たちが集まり、被害の状況について言葉を交わしている。そこにはまだ警察官の姿は見当たらない。どうやらこの一件、まだ通報されていないようだ。
沢登は立ち止まり、しばしその様子を見つめたのち、静かにスマートフォンを取り出した。画面を操作し、深水署の番号をタップする。
「これは……一報、入れておくか。」
彼の指先が、街の異変に対して最初の“通報”を選び取った。
どうやらこの悪質な悪戯は、シャッターのある店だけを狙ったものらしい。シャッターのない店舗は、街の不幸中の幸いか、被害を免れているようだった。
沢登が先日訪れた「喫茶・風待庵」もその一つ。木陰のように落ち着いた、涼やかな外観の店。事件でざわつく中瀬の街のなかで、そこはいつもと変わらない静か落ち着きを纏い佇んでいた。
入口看板の黄色い回転灯が、くるりくるりと回りながら開店中であることを知らせている。Terminalがあの有様で臨時休業の今、選ぶべき店はここしかない。
ざわつく街の喧騒に背を向けた沢登は、迷うことなくその扉へと足を進めた。
◇◆◇
喫茶・風待庵。ここもまたTerminalと同じく、こじんまりとした喫茶店である。だが、大きく異なるのは、ここの店主が白髪の老人であり、店そのものが長年にわたり中瀬商店街の歴史を静かに支えてきた存在だということ。一年前に若い女店主が始めたTerminalとは、まさに対照的。だが、どちらも店内に漂う“静かな癒し”の空気は、どこか共通しているようにも感じられる。
風待庵の店内には、大小さまざまな観葉植物が並び、耳に心地よいクラシックのBGMが流れている。そして何より強く印象付けられるのは、Terminalよりも濃く香るコーヒーの香り。それはこの店が、自家焙煎の豆を使っていることを物語っていた。
長い時間を中瀬の歴史と共に重ねてきた店の空気からは、どこかその重みを感じるものがあった。
前回は、昼間の暑さから逃れるために立ち寄った喫茶・風待庵。今日はまだ朝の時間帯で、いつもならTerminalで“いつものコーヒー”を飲んでいる頃だ。店内に入り、三つある二人掛けのテーブル席のひとつに腰を下ろした沢登。席に着くと、今回はいつものようにコーヒーを注文する。そして、何故かふと目に留まったのは、前回ここで何気なく手に取った一冊の雑誌。オカルト雑誌『月刊ヌー?』。
なぜその時、手に取ったのかは自分でもよくわからない。だが、今日もまた、沢登の指は自然とその表紙に触れていた。
静かな店内。 クラシックの音楽が流れ、観葉植物が揺れる。その空気の中で、沢登に何かを訴えかけるかのように、黒々としたタイトルが、鈍い輝きを放っていた。
『新進の妖怪とは、現代の感情・技術・社会の揺らぎから姿を現す、新世代の妖怪である。彼らは古来の伝承には存在せず、都市の隙間、人々の孤独と共感の境界線に潜む。その姿は伝統的な妖怪の形を借りながらも、まったく異なる意味を帯びて現れ、見る者の感性によってその姿を変えるという。新進の妖怪は、現代人の心に巣食うノイズを鏡として映し、こう問いかける。“あなたは、あなた自身を理解していますか?”』
それは、前回読んだ『月刊ヌー?』の記事の一節。そして今、手に取った新号にも同じように、この言葉が記されている。どうやらこの雑誌は、「新進の妖怪」という概念を、読者の記憶に強く刻みつけたいらしい。
沢登は、ページをめくりながら、ふっとどこか嘲笑にも似た、小さな笑みを浮かべた。
彼自身、こうした怪奇現象を信じているわけではない。だが、深水市中瀬で続く連続失踪事件。その真相に迫る手がかりが、こうした都市伝説の中に潜んでいる可能性を、完全には否定できなくなっていた。
そんな考えが浮かんだのは、ほんの数日前。まさにこの店で、この雑誌を手に取ったことがきっかけだった。
四十を過ぎて、まさか自分がオカルト雑誌の記事から事件の糸口を探そうとするとは。そう思っていた頃の沢登は、もう過去の自分だ。
今の彼は、“まさかな”という目線で、しかし確かにその言葉に目を通している。そして、ページの奥に潜む“何か”を、じっと静かに探していた。
『新進の妖怪は、現代人の心に巣食うノイズを鏡として映し、こう問いかける。“あなたは、あなた自身を理解していますか?”』
シャラーン。その時、澄んだ電子音が一度だけ鳴り、沢登のスマートフォンが新着メールの到着を彼に告げた。スラックスのポケットからそれを取り出すと、画面には「馬場さん」の名前が表示されている。どうやら、電話の着信に気づいて返信をくれたようだった。沢登は早速メールボックスを開き、メッセージを確認する。
メッセージ
『おはようございます。先ほどは電話に出られず、申し訳ありません。 お店のシャッターに悪戯があり、修繕業者さんとの打ち合わせをしていました。 明日は通常通り、開店予定です。』
沢登は、馬場からのメッセージを確認すると、その文面に滲む落ち着いた雰囲気にふっと安堵の息を漏らした。年齢不相応に落ち着いた大人の雰囲気を纏う馬場カーミラルだが、彼女はまだ二十代半ば。開店してまだ一年の店にあのような悪戯があれば、さすがにショックを受け動揺しているのでは。そんな心配も、どうやら取り越し苦労だったようだ。
沢登は、労いの言葉と「明日またお邪魔するよ」と短く返信を送り、今度は少し深く、長めの息、安堵の息を吐いた。胸の奥にあった小さな緊張が、静かにほどけていく。
“現代人の心に巣食うノイズ”
そのとき雑誌で読んだ言葉が、ふと彼の脳裏に浮かんだ。 今回の落書き騒動、そんなノイズに突き動かされた誰かの仕業なのでは?そんな事を思いながら沢登は、手元の雑誌を静かに閉じた。左腕のチープカシオ、腕時計を見ると、八時四十三分。
「……おっと、少しゆっくりしすぎたな。」
カップの底に残ったコーヒーをくいっと飲み干し、椅子を引いて、立ち上がる沢登。支払いを済ませ喫茶・風待庵の静かな空気を背に、沢登は仕事の、深水市中瀬連続失踪事件の手掛かりを掴むため、中瀬の街のざわめきへと歩みを進めた。
②へつづく




