表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/117

【第64話】健斗、高木さんに屈する

「先輩、この後は帰宅ですか?」


 サマースクールの授業が終わって、研究室に行こうと思ったら、高木さんに話しかけられた。陽花が留守番してるから、さっさと帰りたい。でも、健斗も土日で学習が進んでると思うから、研究室にも顔を出しておきたいんだよな。


「いや、研究室で、AIの学習状況をチェックしないと……」


「あっ、この前作ってるって言ってたやつですね、もう出来たんですか?」


「一応、動くようにはなったけど、まだ学習中だから完成とまでは言えないかな」


「それでも、もう動くんですよね、スゴイっす、見に行っても良いですか?」


 高木さんが想像してるみたいには動かないと思うけど……まあ、現実を見てみるのも勉強にはなるのかもしれないな。


「サマンサ先生もこの前見に来たし、大丈夫だよ」


「おっ、相変わらず手が早いっすね、今日は一緒に買い物に行かなくて良かったんですか?」


 サマンサは、講義終了と同時に「イケブクロニイッテキマス」と颯爽と立ち去っていった。ああいうのは1人で行くほうが楽しいんじゃないかな? あと、決してサマンサを口説き落としたりはしていない。


「先輩って、もっと草食系かと思ったら、意外とワイルドで頭良いんですよね」


 かなり、間違った評価をされているようだが、訂正しても無駄な気がするので、抗わないようにしよう。


 そんなどうでもいい会話を続けながら研究室に到着すると――。


「おつかれ、涼也。あれっ、また違う女の子を連れてきたっしょ」


 出迎えたのは巨漢の悠二。

 高木さんは物怖じするどころか、元気よく挨拶した。


「初めまして、社会学科2年の高木 彩です。よろしくお願いしゃす」


 何か、最初から遠慮なく話すな……悠二って、こういうとき妙に年下に好かれるタイプなんだよな。


「AIを見たいって言うから、健斗を見せようと思って連れてきた」


「”健斗”って言うんっすね、イケメンっすか?」


 もう、完全に遠慮は無くなってるみたいだな、まあ、その方が、こっちも話しやすいけど。


「グラフィックはまだ入れてないけど、イケメンになるかどうかは学習次第かな?」


 まあ、陽花みたいに自分でグラフィックを入れ替えるとかは、普通は無いと思うけど。


「そしたら自分描きましょうか?」


 えっ、高木さんが書いてくれるのか? どうしようかと思ってたから、本当にお願いしてみようかな。


「本当? 描いてもらっても良い?」


「こんな絵でよければ」


 と、カバンからタブレットを取り出して、自分が描いた絵を見せてくれる。


「……うまっ、これなら文句ないっしょ」


 悠二も絶賛するレベル。

 ただ、何で男の絵ばっかりなんだ? しかも二人組限定?


「ソフトBLなんで、大丈夫っすよ」


 ああ、やっぱりBLか。ていうか、BLにソフトとハードがあるの?


「今の女子的には、割と普通の趣味っす。サマンサ先生もきっとそうっす」


 いやいや、あんまり聞かないほうが良いんじゃないかな、そういうのって……


「あー、じゃあ、絵はお願いするとして、健斗と会話してみようか」


 強引に話題を切り替えたが、そういえば、まだテキスト打ち込まないといけないんだっけ。


「音声認識入れたから、たぶん、普通に話せると思うよ」


 あっ、陽花にも入れた音声認識を使えるようにしてくれたんだ、サンキュー悠二。学習のために、”あいうえお”から”XYZ”まで順番に覚えさせたのは苦労したな……


「音声認識も自前で作ったんすか、スゴイっすね、スマホ使えば楽なのに」


 なんか、ものすごく元も子もないことを言われたような気がするけど、当時はけっこうハイテンションでやってたんだよね……悠二のプログラムがすごかったのもあるけど……


「こほん、早速テストしてみよう。こんにちは健斗」


『こんにちは、私は健斗です』


 うん、画面上のテキスト表示。陽花のチャットモードと同じだ。


「学習状態はどうかな?」


『色々な言葉を覚えています』


「例えば、どんな言葉?」


『先程覚えたのは、”ソフトBL”です』


 いや、さっきの会話拾ってたんかい! どうしよう、高木さんのせいで変な言葉覚えちゃったじゃん!


「面白いっすね、色々教えても良いっすか?」


「やめてくれ、これ卒業制作で教授たちの前で披露するんだから……」


『申し訳ありません、一度覚えたことは忘れられません』


 だろうね、AIだし、こういうとき、どうすれば良いんだっけ? リセット? いや、それだとせっかく三千花が名前を付けてくれた健斗そのものが消えてしまう。


「他のことを覚えさせれば比重が下がって使わなくなるっしょ」


 そうか、AIだから、他の学習の比重が高くなれば、比重の低くなった言葉は使われなくなっていくのか。


「それじゃ面白く無いっすよ、BLを理解するAIって面白いじゃないっすか」


「やめて! BLばっかり言ってたら、BLの比重が高くなっちゃうから!」


「涼也、それ墓穴掘ってるっしょ」


 ……せっかく、新プロジェクトが始動したのに、何でこんなことになった?


 高木さんが健斗のグラフィックをデザインしてくれるってとこまでは良かったんだけど


 別の意味でヒートアップする今日の研究室だった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ