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【第49話】サマースクール1日目!

「暑い......」

朝から気温は30℃はあろう月曜日。

世間は夏休みに入っているというのに、なぜか大学に来ている。

そう、今日からサマースクールが始まるのだ。


英語を3年まで残している時点で終わってるが、このサマースクールを受けて授業に全部出席すれば「99%単位が取れる」という魅惑のシステム。


『どんな授業なのか楽しみですね』

陽花は授業中はしゃべらない約束だが、後でわからなかった所を聞けるように、スマホでリスニングモードになっている。

画面上では、バカンスを満喫している陽花のグラフィックが、すでに夏休みに入ってる感をアピールしてくる。当てつけかな?


どうせ、英語の長文苦手ですよっ!

サーバーのヘルプファイルなら、どんな長文英語でも意味分かるのに......なんでだ。


せめて前の方に座ろう。

正直、英語苦手なのに遠くて聞こえないとか、ありえない。

サマースクールの単位を落とした1%の人間になってしまう。

それだけは避けなければ。


結局、一番前の席にした。

誰も座っていなくて、気合入ってる感マル出しだけど、ここで単位取ってしまえば、別で取ってる英語の授業の方は出なくて済む。

なんて消極的なんだ......


俺と同じ考えの人もいるもんで、2つ隣の席にボーイッシュな女の子が座った。


陽花はテキストで『眠くなったら起こしますよ』とスマホのバイブレーションをONにした。

一瞬びっくりしたが、すぐ止まったので、スマホを落とさずに済んだけど……いきなりはやめて。


教科書は「Kwaidan」。

ラフカディオ・ハーン作。和名は小泉八雲。

要するに英語版の「怪談」だ。


授業の時間になると、先生が入ってきた。

金髪で、巨乳。そして黒ぶちメガネの女性の先生だ。


最近金髪の遭遇率高いな......って昨日のサマンサだけか。


「ジュギョウをハジメます」

「ワタシのナマエは」

と言って、黒板に「Samantha」と書き込んだ。


ん?

「サマンサ?」


まさかの同一人物!?


「サイショはMUJINAからデス」

「イチバン後ろのアナタからドウゾ」


おーっ、後ろに座らなくて良かったーって、まあ、プチ留学らしいから、少しは読んでも良いかな?


段々と順番が近くなってきたところで、ふと隣をみると、さっきのボーイッシュの子が「どうしよう」って顔で、下を向いてる。あれ?教科書が違う?

確かに購買で教科書買うとき、ホントにこれ?って思ったけど、どうやら違うのを持ってきちゃったみたいだ。


自分の順番が回ってきたので

「――and the man saw that she had no eyes or nose or mouth」

と担当のところを読んで、教科書を指さしつつ、隣の女の子に渡す。


「......and he screamed and ran away」

続けて読んでくれた。

伝わったみたいだ。


「アレ?リョウヤ?」


サマンサもこっちに気づいたらしい。にっこりと微笑むとそのまま授業を続けた。


――


「ハイ、キョウはここまでデス」

と授業が終わりの時間になった。

「アシタもヨロシク」

と言うと、サマンサが教壇を降りて駆け寄ってくる。


「リョウヤセンセイ、ここの学生デシタカ」

というが、揺れる胸に目が行って、頭に入ってこない。


「リョウヤ先生?」

隣の女の子が不思議そうな顔をしてこちらを見てくる。いや、先生に先生って言われると訳が分からないよね。


「パソコンを教えたことがあって」というと


「社会学科の2年、高木たかぎあやです。さっきはありがとうございました」


「情報科学科3年、忍野おしの涼也りょうやです。よろしく」

と自己紹介をしあった。


「フタリは友達デスカ?」とサマンサが聞いてくる。


「いえ、今日会ったばっかりで」


「ワタシもトモダチにイれてクダサイネ」


とサマンサが高木さんとLIMEの連絡先を交換。その流れで、高木さんとも連絡先を交換した。


「それが、教科書を間違って買っちゃって、先輩がみせてくれたんです」


「ソウナンデスネ、イッサツ、サシアゲマス」


「えっ!良いんですか! ありがとうございます!」


どうやら、何冊か持ってるみたいだ。


「アシタも来てクダサイネ」


と手を振りながら、去っていくサマンサ


「先輩は、帰宅ですか?」


「いや、これから研究室に行かないといけなくて」


「えっ、何の研究をしてるんですか?」


「えーっと、AIを作ってるんだ」


「えっ、スゴ!」


「じゃあ、完成したら見せてくださいね」


実は完成以上に進化しちゃったのが一人いるけど、それは学校では伏せておかないと……


「うん、出来上がったらね」


まず、再構築しないといけない。


「それじゃ、また明日!」

と元気に去っていく高木さん。なんか急に女の子の連絡先が増えたな。

高校の時の反動かも......


そう考えると、、あれも必要だったのかな?

サマースクール、意外と楽しいかも。そう思う初日だった。

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