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第一部 農奴の娘 第一話「地雷系幼女のプロローグ」


 夕風月夜(ゆうかぜ つきよ)、28歳。

ついでに言うと独身、年齢イコール彼氏いない歴の残念美女である。そう、残念美人。大事なことだから2回言った。


 私はとある男性……ホストなのだが、そのホストの追っかけをしている。いや、追っかけというか推し活というか。あ、ちなみに同拒だから。そこも重要。


 甘草キラという名の青年は私にとって癒しでありどれだけお金をつぎ込んでもいいと思えるほど、沼にハマっていた。


 因みに私はとある大手化粧品企業に就職しており趣味に一直線になれるほどのお金はあった。


 だからだろうか、生活費すらもホストに注ぎ込んでもそれ程苦労しないと思えたのは。いや、馬鹿だったのだろう前が見えていなかったのだ。


 大金を注ぎ込んで得られる彼との触れ合いの密度に沈み込んでいく沼の典型に、私は手遅れになるまで気づくことなく彼に夢中だった。


「愛してる」


 その一言で安心できた。きっとお金が無くったって、私を見てくれる。大丈夫、大丈夫だから他の女を見ないで。と。


 次第に夜が眠れなくなり、薬を飲むようになった。不安で不安で仕方なかった。彼から私はどう思われているのだろう。気持ち悪いと思われていないかなと、心無い言葉が浮かんでは消えを繰り返して枕を濡らす日々だった。もう、推し活の域を超えてしまって、依存の域にまでホスト狂いだった。


 ある日のこと。クラブに入る前に仕事の都合で電話をかけていた時その会話は聞こえてきた。その時のキラくんは別の女性を担当していたようで……


「今日はあの人きてないんだね」


「あー、あのいつも来るおばさん?あとちょっとで三十路なのにさ、寂しい女だよな」


「キラくん大人ー、そんな寂しい女でも相手してあげてるんでしょ?」


「あぁ、それが仕事だからな。」



 その会話の節々から漏れる悪意に、それが誰なのかを悟る前に、私は携帯を落としてしまった。


 あぁ、崩れていく。やはりそうだったのだ。ホストになんて行くんじゃなかった。ほら、こうして勝手に傷ついて彼はどうせ何の支障もなく暮らしていくんだろう。私の事なんて忘れて。


 その日から、私の生活はどんどんと荒れていった。


 常備薬の他に頓服薬や鎮静剤を多く飲むようになり、リストカットもする様になり、ホスト狂いは日に日に増して行った。


 お金が無くて、仕事も無い日は苦痛だった。


 愛って、なんだろう。口先で囁く嘯いた言の葉の数々に笑いたくなる程狂った、沼にハマってしまった現実。


 


此処はどこだろう。夜の街のネオンの燐光が煌びやかに私を照らす。


 あぁ、此処はビルの屋上だ。


 なんの目的で此処にきたんだろうね?ふふふ、ここで、私が死ぬって言ったらあの人は驚くかな。それとも、笑うかな。軽率だよね。でも私は本気。


 夜風が吹いた。風は首筋をちろりと舐めて強く吹いた。それが合図だったのか、ひらりと軽やかに落ちていく。


 あぁ、私の人生って、なんだったんだろう。


 今振り返ってみればどうしてホスト狂いになんてなったのか、どうして彼にそこまで注ぎ込んだのかも理解できない。真っ当に生きていれば彼氏を作る機会だって、結婚する機会だってあった。社交場で頑張ればそういう機会は山程あったはずなのに自分の趣味に没頭しすぎて、それもこれも全部無駄だったのかな。


 来世では、きっと、私は、私は………


神様お願いします。来世では、存分に楽しめる推し活ライフを………













 龍刻のメサイア〜推し活地雷少女の下克上〜



第一部 農奴の娘 第一話「地雷系幼女のプロローグ」










バタン、バタン、ダン、ダン。


小刻みに来る衝撃の数々と、遠くから聞こえてくる野次や爆音にうるさいなぁと思いながらそれでも睡眠を止めることなく眠り耽っている。


 鼻を啜ってみれば酷い悪臭がして鼻を摘みちくちくする布団を勢いよくかぶる。


 うぅ、ぐらぐらして気持ち悪い。首筋が寒くて鳥肌がやばい。倦怠感がどばーっと押し寄せて鼻水が止まらない。頭の鈍痛も酷くて何も考えられない。きっと熱も酷いのだろう。暑くて暑くて仕方ないが布団をとったら寒くなるためどうしようもないのだ。



うぅ、だれかたすけて。いーたーいーよー。



「………ナ……………る…………ルナお姉ちゃん!!」



「ひゃっ!?な、何っ、」


知らない天井………ってなんのネタだったっけ?じゃなくて!此処は………ってか私死んだ筈じゃ。何が何やらわからん。取り敢えず起きようかな。


 再び目を開けると、爛れてしまって黒く汚れた太い柱と巨大な蜘蛛の巣。こんな汚い場所私の記憶の中にはなかった。


「おはよ、ルナお姉ちゃん」


と、自然にキスしてくる謎の少女。もちのマウストゥマウスで。は?!私今熱がやばくて、風邪か何かの菌があると思うんだけどそれはそれで大丈夫なのかな。じゃなくて!なんでキス?!この子だれ???


「んっ??!」


 ちょ、何何?!どういうことなの!!説明して!誰かぁ!でも、嫌でもわかってしまうのは此処は日本では無いことだった。そして、目の前の少女は天使であること。じゃないわよ!天使って何さ!私の記憶にはないよ?じゃあだれの記憶さ!?天井の建築様式から現代ではない西洋風で、鉄骨ではない石造建築であることからもかなり昔だよ?


「あ、お姉ちゃん?!ま、また倒れたよ。うぅ、今日は何回倒れれば気が済むのさ!」


 ちょっと情報不足だ。さっきのキスは忘れよう。外国に来たと思えばいい。それか狐に摘まれたとでも思えばいいのだ。うんそうしよう。というか、此処はどこ?やけに汚いというか、ボロいというか、率直にいうと不衛生な場所なのだろう……


 そして、私をお姉ちゃんと呼ぶこの金髪の天使は一体………もしや此処は天国?!


「ついに私は天に召されたんだね。あぁ、アーメン」


「何言ってるのさルナお姉ちゃん!お姉ちゃんは病弱なんだから寝てないとダメだよ」


全く、お姉ちゃん係の私の身にもなって欲しいものだよ。うふふん。と、可愛さ抜群の天使は私の身を案じる。


 っ、ちょっと待って。私の手ってこんなに小さかったっけ?あれ身体もだ。てか、めっちゃ痩せてんだけど。不健康過ぎない?やばー。



……………も、も、もしかしてこれって、あのライトノベルとかで流行りのアレじゃ無い?アレ。ええと、異世界なんたらって奴。転移?転生かな?落ち着いて考えないと!ひっひっふー。はっ?!ついラマーズ法で呼吸してしまった。そんな場合じゃないのに!


「んー?今日のお姉ちゃんはなんだかおかしいね。いつもは無口なのに…んー?」


 首を傾げてなんでだろうー、ふみゅーと可愛らしく疑問符を浮かべる少女。か、可愛すぎる。男だったら惚れて……いやいやこんな4、3歳くらいの子に惚れちゃダメでしょ!許さないかんね!


「あはは、愛してるよ我が妹よ」


 うふふ。決まった。適応力高くない?私。キスの仕返しじゃ馬鹿やろー!!


「ひゃ、な、なんだか変だよお姉ちゃん!いつもと違う!」


 お姉ちゃんはそんなこと言わないもんと叫びながら、ぴゅーと駆けて去っていく謎の少女。


 あ、名前聞いてなかったな。くそぅ。中身が違うのがバレないように自然に聞ける名前の聞き方ってなんだろう。中身が違うって、自分で言っててなんだか申し訳なくなってくるなぁ。だってこの身体の持ち主は違うんだよ?私が乗っ取ったと言っても過言では無いこの状況では流石にね……憑依?転生?なんだろうね。


 まぁ、今の自分の名前だけはわかった。ルナ…か。前世の名前と少し似てるなぁ。何か関係があるのかな。


 一応、曖昧な混濁する記憶を探ってみると、彼女は私の妹でニナという名前らしい。そして、私の家族構成はお父さん、お母さん、妹、弟の5人家族らしい。叔父や、叔母、お祖父さんやお祖母さんも含めればもっといるけれど今は必要のない情報だ。


 お父さんはブレイズ、お母さんはエヴァ、そして弟がマルクという名前だ。一瞬弟の顔が頭に浮かんだが、まだ一才の赤ちゃんだった。正直まじ可愛すぐる。今すぐにでも構いに行きたいくらいである。前世では兄弟がいなかったからかちょっと嬉しく感じる。でもよかった。ちゃんと記憶はある。だから、バレないように取り繕うだけで生活は成り立ちそうだ。


 けれど、今の私にそんな家族構成を案じてる暇などないのだ。


 この場合転生というのが正しいのだろう。


 神様は、理不尽にもこの病弱の身の少女に転生させてくれたらしい。しかも生活環境は最悪と呼べる、農奴の娘である。


 そう。記憶の中に辛うじてあったお父さんの仕事は狩りと農業で生計を立てる農民よりも地位の低い農奴。よくある定番のライトノベルとかで見る領主だったりの貴族ではなく農奴である。


 あぁ、私の異世界ライフ……終わった。まず美容。シャンプーは動物性石鹸でまじ臭いし、ボディソープも無い。それに香水なんかも作られてないみたいだし。食文化なんかも余り進んで無いように見える。あぁ、神様なんて場所に転生してくれたんだ。そして一番は!!


 なんで、なんで!推し活出来ないじゃない!!!本が、缶バッチが、アクリルキーホルダーとかのグッズが!ないのよ?!ふざけないで頂戴!!あれ?でも、ないなら作ればいいんじゃない?うふふ。そうね、そうよね、作ればいいのよね。うふふふふふ。


「あぅ、お姉ちゃんがなんだか怖いよ。本当に今日はどうしちゃったのお姉ちゃん」


 あら、心配かけちゃった。ごめんなさいニナ。お姉ちゃん今日は体調が良くないみたい。


「これからは、私、ルナとして生きていかなきゃいけないんだ……はは、キラくんが聞いたらどう思うかな。ざまぁとか思ってそう。うぅ、碌な言葉が浮かんでこない。てかなんであんな男にホスト狂いになってたんだろう、馬鹿じゃないの、バカバーカ」


 全部が全部自分に向けた言葉だった。自殺なんてして望んでもいなかった転生までしてしまったのだ。これはもしかして神様が与えた罰なのかな。うぅ……そう考えると納得もいく。


 カーン、カラン、カラン、カラン、カーン……


と、荘厳なかつ強大で雅な鐘の音が響いた。正直耳が痛くなるほどの爆音なので五月蝿い。でも、なんだか外国に来たような気分になれてちょっと時分違いのワクワクさみたいなものが浮かんでくる。浮かれ過ぎかな?いや、浮かれてる場合じゃないでしょ!転生なんだよ?死んじゃって生まれ変わった先が大昔の外国みたいな場所なんだよ?!あーーーー叫びたい!なんで死んだの私ぃぃぃ!!







「お姉ちゃん。6の鐘が鳴ったよ。お姉ちゃん起きて。お姉ちゃん」


「うぅ、あれ?私……寝てたの?」


「うん。1の鐘が鳴った頃には寝てたからそっとして置いてたんだよ。はいこれご飯。しっかり食べるんだよ」


そう言って差し出すご飯に視線を落とすと、細々と切られた野菜と薄塩のスープとそれにつけて食べる用の黒パンとベーコンが二切れあった。


 うん。ここは、絶対異世界だね間違いない。紛争地帯でもなければここまで貧しい料理が出てくることはないだろう。うん。これからどうしよう………









==============================


 ふふふ、始めてしまったか……後悔はしてない。…………ごめんなさい嘘です。バリ後悔してます。今回はちゃんと設定を固めて固めて詰めて詰めて書いているので見れないほどではないんじゃないかなというレベルで書いてます。最後に言いますけど、ニナちゃんとのキスは百合がどうとか関係ないです。外国である事を強く印象付けるためにキスにしました。主人公の適応力には驚きですね。


そして、妹ちゃん可愛すぎません?百合百合しいですね。


あと、スピンオフで『異世界協奏曲〜爆食令嬢は異世界を堪能する〜』もあります。そっちも良かったら見てってください。出来たら多分投稿するのでよろです。

そしてそして、実はこの作品はアルファポリスの方でも投稿してるのですが、そちらの方が早くに投稿すると思うのであっちでもよろです。


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