クエスト! 勇者は愛を探してます。
俺は勇者ミキト。いつの間にか薄暗い城の裏にいた。辺りを見回すと、なんと目の前にいたのは魔王マホ。さらに、後ろには腕組みをした魔人のナオ、さらに退屈そうな淫魔のミサトがいた。三人とも女性型の魔物だ。
そして何やらマホはもじもじしていた。
「ん? ここは──」
「あの! 実はミキトくんと話したくてミサトの魔法で眠ってもらって来て貰ったっていうか……」
「ま、魔法?」
見るとミサトはアクビをしながら手を上げていた。マホは話を続ける。
「で、話っていうのは」
「え? うん……」
「あの、今日はいい天気だね」
「そう? 魔界だからどんよりしてるけど」
「あの、だから、その……、勇気を出すのよ、マホ」
「一体どうした? この前の塔での続きか? あんなとこに現れるとは思ってなかったけど」
マホはきゅっと目を閉じると、目を見開いて上目遣いに俺を見てきた。
「ミキトくん、ずっと好きだったの!」
え? いやいや嬉しいけど、キミは俺の討伐対象なんだけど?
マホも俺も、顔を赤くしている。すると後ろにいた二人が俺を煽り始めた。
「はーい、返事は?」
「サクサク言っちゃえー」
なんなの、この女子の圧! でもそうだな。マホは角がはえてさえなきゃ可愛らしい女の子だし……。
「うん、ありがとう」
「それって、付き合うってこと?」
「うん、まあ」
そう言った途端にマホの顔はパアッと華やいだが、後ろの二人はゲラゲラ笑って、俺たちの間に入ってきた。
「はいはい、お疲れさーん! これ嘘告ねー」
「残念でしたー。陛下がお前みたいなの好きになるわきゃねーだろ!」
ガーン!! う、嘘告白!?
いわゆる、罰ゲームとかのアレ? マホは俺のこと好きじゃなかったの?
洞窟とか塔で『やん。ミキトくん偶然だね』とかしょっちゅうあった。俺はすぐさま戦闘に切り替えたが、マホの力に勝てるわけもなく軽くあしらわれるばかりだった。
それにマホはバレンタインの時に突然現れて……。
「ミキトくん、これ」
「なにこれ?」
「なにってチョコレートだよ」
「ふーん、敵に塩を送るってヤツ?」
「ほら、部下の手前もあるから、ここで食べちゃって」
「へー旨いじゃん。毒でも入ってると思った」
「う~、バカにしないでよね!」
ってこととかあったのに?
マホはナオとミサトに『では陛下行きましょ』とか言われて背中を押されて城の中に入っていく。その時、少しだけ振り返って申し訳なさそうに俺を見た……。
その五年後、俺はマホに勝って告白し、結婚することになる。