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アスカ・ヴィヴィディアの短編集: 科学の縁を歩く夢見る心  作者: アスカ・ヴィヴィディア
雲を掴む科学者編
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 3.雲の中の秘密

天野悠博士は、前回の飛行で得たデータを手に、再び「クラウドキャッチャー」を雲の深奥へと導いた。船内は前回の飛行から数週間で更新された機器で満ちており、今回はさらに詳細なデータの収集を目指していた。チームは一致団結し、雲の中に隠された謎を解き明かそうと意気込んでいた。


「全てのシステムはグリーンです。サンプル採取に進んでください。」と、船のメインコンソールからの天野の声が響く。


今回の目標は、異常なエネルギー放射が観測された雲の領域の中心にある、特異な渦の更なる解析だった。前回の飛行で採取したサンプルは、科学界に新たな風を吹き込む発見であり、それが何かの始まりであることを天野博士は確信していた。


飛行船が静かに雲の塊を切り裂きながら進むと、一行は再びその不思議な渦に差し掛かった。ここはまさに雲の核心であり、今まさに彼らが取り囲んでいる雲の渦は、前回とは異なり、さらに激しさを増していた。


「これは…もしかすると、雲が持つ自然のリズムかもしれませんね。」と、副操縦士の木村が言った。彼の眼はデータスクリーンに釘付けになっていた。スクリーンには、雲の粒子が一定のパターンで振動し、まるで古代の楽譜のような複雑なリズムを描いている。


天野博士は、手がかりを得るために前回のサンプルと今回のデータを比較する。そのデータから、彼はある仮説を立てる。この渦は、単なる自然現象ではなく、何らかの自然エネルギーの源か、あるいは遠い過去からのメッセージではないかと。


「データをもう一度チェックしましょう。全てを録画して、後で解析が必要です。」天野博士は冷静に命じる。


チームは応答し、船の高性能カメラで渦を撮影し始めた。その映像には、雲の渦が織り成すパターンと、時折見せる明るい閃光が捉えられていた。


飛行船は渦の上部に到達し、天野博士は命じる。「サンプル採取器を展開。」


チームは装置を稼働させ、雲の核心から直接サンプルを採取する。しかし、その瞬間、予期せぬ乱気流に飛行船は揺れ始め、チームは緊急事態に直面する。


天野博士は操縦を取り戻すために冷静に指示を出し、副操縦士と共に操縦桿を握る。乱気流は激しく、しかし彼の冷静な決断で飛行船は次第に安定を取り戻していく。彼らの結束と、科学への献身が試される瞬間だった。


乱気流を抜けた後、チームは船内でホッと一息つく。そして、採取したサンプルを安全に収納する。天野博士は深い満足感を感じながら、今回のサンプルがもたらす可能性に心を躍らせた。そして、チームはこれからの解析と、新たな発見への旅を続ける準備を始めるのだった。

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