33話、ドワーフの酒
よろしくおねがいします。
27日目。
朝の見回りの際、ドワーフからの報告があった。
どうやら、マジックトレントから採れた実で、ようやく酒がつくれる目処がたったらしい。特殊な果実なため、普通の作り方では上手くいかなかったそうだ。
まだまだこれから色々と工程を踏む必要があるそうだが、ひとまずはその目処がたったということで、ものすごく上機嫌な報告だった。
うん、娯楽が増えるのはいい事だ。今はゴールドからの輸入で酒を飲んでいるドワーフだが、そのうちこの街に酒蔵をつくりたいと息巻いている。エルフたちも乗り気だ。どんどんやってくれたらいい。
ドワーフといえば酒だろう。
私はあまり飲めないが、美味しいお酒は好きだ。
ゴールドが持ってきてくれた飲食料品の中には、大量の酒があった。ドワーフ用だが、私も少し分けてもらった。……まあ、高いものは美味しかった。
というのも、ドワーフたち、というか多分この世界の人たち、お酒を冷やして飲まない。いや、たしかに温めた方が美味しいものもあるのだが、麦酒は冷やしてなんぼだろう。……本場ドイツでは冷やさないとも聞くが私は冷やすべきだと思う。
で、ドワーフにそれを伝えたところ、そもそも冷やすための魔法やらが使えんし、そんな魔道具はクソ高い、との事だった。まあそうか。
で、じゃあ冷やすしくみ変えて安く魔道具つくったらどうなのという話をしたところ、当然食いついてきた。
冷房の仕組みをあやふやに伝えて……たしか、温かい空気を冷媒に集めて圧縮してから冷やして、減圧して戻してくる……とかだったか?おぼえてないけど。
なんとなくニュアンスで伝えたところ、およそ理解はできたらしく、今日から早速開発研究してみると言ってくれた。上手く行けば、冷蔵庫と冷房が出来るかもしれない。楽しみだな。
とまあ午前はそんな感じで適当に過ごしていたところ、ドーグから、依頼があると話がきた。
「『ドワーフの酒』という魔道具をつくりたいのじゃが。素材が足りなくてのう。たしか、オアシスの迷宮とやらの一層が火山エリアじゃろ?溶岩の中に『溶鉱石』という光る石があるはずじゃから、それを持ち帰ってほしいのじゃ。熱いから、大丈夫そうな魔物を連れての。……報酬は、溶鉱石をつかった別の魔道具、『プレートウォーマー』の現品じゃ。タキナ、最近よく茶を飲むじゃろ?飯もゆっくり食うとるし。プレートウォーマーがあれば、飯も飲み物も冷めずに済むのじゃ」
おお、マグウォーマーみたいなものか。ほしい、気がする。
ドワーフの酒、というのがどういう魔道具かはわからないが、まあいいだろう、折角だし今日もオアシスの迷宮に行こう。
連れていくのは……メタスラちゃんとだけでいいかな。馬ちゃんに乗っていきたいし、戦いは馬ちゃんの速度で回避すればいいや。と思っていたのだが、
「私も着いていきたいっす!馬ちゃん、乗りたいっす!」
との事なので、ヒナさんも連れていく。まあ、馬ちゃんの速度も、オアシス迷宮の暑さも、特級冒険者なら大丈夫だろう。……猫だけど暑いの大丈夫かな?
「し、死ぬかと思ったっす……速……おもしろ……」
馬ちゃんは、頑丈な人達にはアトラクションのような感じらしい。たしかに面白い。ジェットコースターの気分。速さは比じゃないけど。
そしてそのままオアシス迷宮へ侵入。
ヒナさんはどうやら、暑さを軽減する魔道具を持っているらしい。高かったと。それでもここはちょっと暑いそうで。
溶岩の川を目指して少し進む。道中、ワームやらなんやらに襲われるが、ヒナさんがなんとかしてくれた。やっぱり強いな。
「溶岩の中……どうやって探すの?」
「ああ、流れてる時に表に出てきた光ってる物を取るんすよ。たとえば……アレとか。ただ熱いんで、メタスラちゃんに頼んだ方がいいかもしれないすね」
光ってる石……さっきのは沈んじゃったから次を探す。
あった。メタスラちゃんに取ってきてもらう。うん、たしかに光ってる。そして熱を感じる。熱い。
同じ要領で、幾つか集める。メタスラちゃんが風呂敷のように包んでくれた。かわいい。
「これで依頼完了すね?あとは……適当にテイムします?なんかほしいのいるんすか?」
「ああ、どうしよう……見る限り特にいない?オススメあります?」
見渡す限り、世紀末な魔物しかいない。馬ちゃんが一番の目玉だったのかもなあ。
「そうすねぇ……うーん、この中だと……ワイバーンくらいすかね、街で使えそうなのは」
「じゃ、それでいいかな。えっと……あの子にしよう。テイム!」
というわけで、ワイバーンゲットだぜ。
大きな子を選んだ。名前はバンちゃんだ。
ヘルズワイバーン。
地獄迷宮火山地帯に生息するワイバーン。熱無効のパッシブスキルをもつ。
全身の鱗が鋼より硬質で、物理耐性も高い。
肉がものすごく美味しい。生がオススメ。
よし、この迷宮にも食料調達班を派遣しよう。そのうち絶対に。
帰りは私がバンちゃんに乗って帰った。馬ちゃんの速度には絶対着いて来れないからね。
ヒナさんはめちゃくちゃ楽しそうにぶっ飛んで帰った。アトラクションとしてお金取れるんじゃないかな。
そして帰宅。
なにやら騒がしい。近くに居たゼストに話を聞いてみる。
「どうしたんです?」
「ああ、タキナか……この街に魔王軍が攻めて来やがるぞ」
「はい?」
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