幕間:まだライクかー
「でも、雨全然止まないね」
「そうだねー。……あれ? 何かー、天気予報が一気に雨続きになってるんだけど」
「え!?」
あたしが見ていたスマホのお天気アプリを見て、久良君が目を丸くしたけど、そんな顔しても予報は変わんないよね……。
「うわー。参ったなぁ……」
袖から出た腕を軽く擦ると、困った顔で降り続いてる雨を眺める久良君。
ほんと、こうやって二人きりになれてるのは嬉しいけど、この肌寒さじゃムードもへったくれもないじゃん。
でも……。
隣に立っている久良君を見て、あたしは内心すっごい喜んでた。
ほんと、雷はめっちゃ怖かったけどー、久良君のお陰ですっごく安心できたんだよねー。
雷の音を気にならないようにしてくれたのもあるけど……そ、その……だ、抱きしめてもらった時、ちょっと久良君の汗の匂いがして、ちょっとドキドキしたしさー。温もり感じて、すっごく安心できたし、やっぱ幸せ感じたし。
それに……あたしのトラウマに向かい合ってくれた上で、ああ言ってくれたじゃん。
──「だけど……俺は、眼鏡ギャルの近間さんのほうが、やっぱり好きだな」
真剣過ぎて、前みたいな呼び方されちゃったけどさー。それでもあの瞬間、マジで!? って本気で夢心地になったっしょ。
でも、ライク……まだライクかー。
あたしは、とっくにラブなんだけどなー。
きっと必死に否定してたから、あれも本気で言ってるんだよねー。ほんとそこ。そこだけなんだけどなー。
あの時ぬか喜びだったのだけが、ほんっと残念。
……でも、良かった。
あたしが一番不安だった、素顔を見られた時の事がクリアできたから。
後は久良君の気持ち次第。でも、この壁がめっちゃ厚そうなんだよねー……。
あたしの持論そっちのけで、かなりラブなの匂わせちゃってるけどさー。
それでもあれだけ真面目に返されちゃってるし、あたしの気持ちに気づいてないよねー。
じゃなかったら、ワンダーランドの話でも、あんな提案しないっしょ。
はぁ……。
どうにか一緒に、ワンダーランド行けないかなー。
きっと想い出にもなるしー、夜の遊園地のイルミネーションとか見ながらだったら、ムードもバッチリじゃん。
そうしたら、あたしももっと勇気を持って、その、こ、告白とかできると思うし……。
うまくいくって決まったわけじゃないのに、その時二人っきりのシーンを思い浮かべて、勝手に顔がにやけそうになる。
でもそんな熱は、肌を撫でた冷たい風で一気に吹き飛んだ。
「うう……」
「やっぱり寒い?」
「流石に、ちょっと」
あたしだってギャルだし、冬でも生足披露したりする。
ファッションのためなら寒さだって我慢するし、それこそギャルっしょ。
でも、こうやって動かないのは流石にちょっとキツいんだよねー。体が温まりようないしさー。
両腕で自分を抱きしめ、寒さをごまかそうとしたあたしを見て、久良君が少し心配そうな顔をする。
「こうなったら、一旦俺一人で家に戻って傘取ってこようか?」
「ダ、ダメに決まってるじゃん!」
彼の予想外の提案に、あたしは思わず首を横に振った。
「そんな事してまた風邪とか引いたら大変っしょ!」
「でも、雨って止まなそうなんだよね?」
「それはそうかもしんないけど。ダメなものはダメ!」
一瞬、久良君の看病ができるかもなんて、やましい気持ちが芽生えたけど、流石にそれは必死に止めた。
だって、風邪引いて寝込むのとか絶対辛いし、余計に心配になっちゃうじゃん……。
でも、じゃあどうすればいいんだろ?
今日はお母さん急な仕事で家にいないし、羽流も友達の家泊まりに行ってるっしょ?
後は……あ。敦美先輩に連絡して、傘を借りるって手が──。
色々な方法を考えていると、遠くからヘッドライトを点けた車が走って来たんだけど、その車があたし達の目の前で止まった。
って、あれ? あの車って……。
思わず久良君と一緒に車をじっと見つめてると。
「海笑瑠じゃない。こんな所で何してるの?」
運転席の窓が開いて見えた運転手は、やっぱりあたしのお母さんだった。




