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【完結】眼鏡ギャルの近間さん 〜陰キャの俺がギャルと友達になれたのは、眼鏡女子が好きだったお陰です〜  作者: しょぼん(´・ω・`)
第五章:色々あった日

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第二話:気になる事

 寝癖は料理中にどうこうするもんじゃない。

 今更恥ずかしい目に遭ってもそんな変わらないだろ。

 そう割り切って料理を進めていると、しばらくしてまたドアが開く音がした。


「良かったー。まだ終わってなくって」


 少し嬉しそうな声と共に、足音が聞こえたかと思うと、


「おっはよー。遠見君!」


 俺の脇に立った近間さんが普段通りの元気そうな挨拶をしてきた。


「おはよう。よく眠れた?」

「うん。ばっちしだよ。遠見君、体調は?」

「あ、うん。熱もなかったし怠けとかもないから、もう大丈夫だと思う」

「そっか。良かったー」


 横を見た瞬間に見えたのは、バスタオルを頭に巻いた湯上がりのようなパジャマ姿の近間さん。


 眼鏡をした可愛い笑顔。

 髪の毛は普段通り後頭部の上の方で、シュシュで束ねポニーテールになっているから、うなじがはっきりと見てとれる。

 パジャマの胸元は昨日同様、ボタンを止めてなくって胸の谷間が見えちゃってるし、ふわっと周囲に香るのは、シャンプーらしき残り香……。


 そんな魅力的かつ刺激的な光景に、笑みを返すのも忘れ、俺は咄嗟にまな板で切っている野菜に目を向ける。


 ……正直、朝から近間さんの破壊力がやばい。

 こんな眼鏡女子を堪能できる、なんて余裕はさっぱりなくって、内心ドキドキするのをごまかすのに必死。

 近間さんが恥ずかしがってない所を見ると。こういう距離も普通なんだろうけど。

 ま、まあ、俺が慣れてなさすぎなだけ。

 落ち着け、落ち着け……。


「何これー。めっちゃオシャレじゃーん!」


 と、近間さんが食いついたのは、まな板の側に並べた二つの皿。

 そこにはポーチドエッグの上にスライスチーズとベーコンを載せた物が置いてある。


「ね? ね? これ卵焼きじゃないよね?」

「うん。ポーチドエッグ」

「へー。遠見君ってこんなえるご飯作れちゃうんだ。めっちゃ凄いじゃん!」

「そ、そんな事ないよ」


 めちゃめちゃ褒めてくれるのは嬉しいけど、めちゃめちゃ距離が近いから色々と恥ずかしい。

 しかも、時折良い香りがするのがまた──。


 そこまで考えた瞬間、俺は動きが固まる。

 ……俺、昨日調子悪くって夜も朝も風呂入れてないじゃないか。汗臭かったりしないのか!?

 近間さんは今の所、気にしてはいなさそうだけど……。


 何も言われてないとはいえ、こういうのって気になりだすとどうしようもなくって、俺は少しだけ彼女との距離を開けようと横にズレた。


「ちなみに、あっちはスープ?」

「うん。茄子と鶏肉のコンソメスープ」

「今切ってる野菜は?」

「こっちは洋風の野菜炒めにしようかなって」

「へー。遠見君自炊するって聞いてたけど、こんなに器用なんだ」

「べ、別に。いつもはもっと雑に作るよ」


 俺が開けた距離をあっさり詰め、こっちの気遣いを無に帰す近間さん。

 笑顔は崩れてないし、嫌な顔なんかも見せてはいないけど……下手に聞いたらいけないのかな?

 だけど、近間さんなら気を遣って、我慢して言わないでくれてるとかあったりしないか?


 何とか返事しながら、必死に頭をフル回転させるけど、妙案があるわけじゃない。

 話すか。話さないか。

 結局その二択なら……やっぱ、聞いといたほうがいいよな。


「あの……近間さん」

「ん? どうしたの?」


 俺が名前を呼ぶと、きょとんとする近間さん。


「あ、あの、さ。ちょっと言い難いんだけど……」


 おずおずとそう話し始めると、はっとした彼女は思わず口に手を当て驚いて見せる。


「え? あたしまた何かやらかしちゃってる!?」

「あ、いや。どっちかというと、俺が、かも……」

「え? 遠見君が? 何を?」

「あの、えっと──」

「あ! もしかしてあたしの好き嫌い聞かずに料理作っちゃったとか? そんなの気にしなくてもいいよ! 見た限りあたしの嫌いな物入ってないしー、もう味がどんなのか楽しみで仕方ないしー」


 にししっと笑う近間さんだけど……俺が語りたいのはそれじゃない。

 うーん……どうしようか……。

 タイミングを逸して俺が困った顔をすると、また彼女の顔がしまったっという顔になる。


「あ! もしかしてあたし、汗臭かった!?」


 ……あ、そっか。

 シャワー浴びたとはいえ、体が熱かったら少しは汗も掻くかもしれないもんな。

 って、そっちじゃなーい!


「あ、いや、全然。むしろさっきから、その……いい香り、してるし」

「えっ? あ……そ、そっか。それなら良かった、かな。えへへっ」


 やっと距離の近さに気づいた近間さんが、恥じらいながら少しだけ俺から離れる。

 ……ほんと、近間さんって普段は眼鏡をしたギャルなのに、こういう時は乙女っぽいギャップがヤバすぎる。

 まあ、これだけスタイルも顔も良かったら、人気だって出るわけだ……。


「じゃ、じゃああたしー、向こうで待ってるから。料理、楽しみにしてんね!」


 くいっと眼鏡を直した彼女はそう言い残すと、いそいそとした感じで居間に去って行った。


 ……結局俺の汗の匂いのこと、言いそびれたな。

 まあ、気にしてなさそうだし、良しとするか……。

 内心ほっとした俺は、あまり待たせないよう手早く野菜炒めを作る作業に戻ったんだ。


      ◆   ◇   ◆


「ご馳走様ー! あー、美味しかったー」


 あれから少しして。

 居間の隅に畳んだ布団を退かしてスペースを作った後、俺達は朝食を食べる事にしたんだけど。近間さんはぺろりとそれらを平らげると、満足げな顔でこっちに笑いかけてくれた。

 

「味とか大丈夫だった?」

「もーバッチシ! この野菜炒めって、塩コショウだけ?」

「うん。案外野菜の甘みも出るから、あまり濃すぎないようにしたんだけど」

「そっかー。うちって野菜炒めって中華風に味付けしちゃうから、こういう味もあるんだーって感心しちゃった」

「物足りなくなかった?」

「ぜーんぜん! その分ポーチドエッグが結構チーズとかベーコンもあって濃厚だったじゃん? だから丁度良かったよ。スープも思ったよりあっさりめだったし。これさー、めっちゃ考えてバランス取ってたでしょ?」

「まあ、一応。でも、ほとんど普段通りの味付けだけどね」

「へー。でもほんと美味しかったー。今度またご馳走になっちゃおうっかなー」

「あ、うん。こんな料理で良ければ」


 ここまでべた褒めしてくれたって事は、よっぽど気に入ってくれたってことか。

 笑顔でこんな感想言ってくれてるし、作った甲斐もあったな。


 ……って、あれ?

 今の流れって、またうちに来るって話なのか?

 ま、まあ、泊まりじゃなきゃいいっていうか。一度上げたら二度も三度も一緒だろうし。

 ご飯くらいなら別にいいか……。 


 近間さんの発言の細かな所が色々気になったけど。結局彼女の笑顔を見るにつけ、考え過ぎてもなって妥協しちゃってる辺り、やっぱり俺って甘いのかもしれないな……。

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