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【完結】眼鏡ギャルの近間さん 〜陰キャの俺がギャルと友達になれたのは、眼鏡女子が好きだったお陰です〜  作者: しょぼん(´・ω・`)
第四章:波乱の夜

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幕間:やらかし

 遠見君と別れて居間に敷かれた布団に潜ったあたしは、眼鏡を外して枕元に置くと、そのままぼやけた天井を見つめる。


 予想以上に静かな部屋。

 そのせいで妙に落ち着いちゃったからか。今まで彼との会話とかでごまかせてた感情がふつふつと……ああああっ!

 あたし、絶対やらかした!


 くるりと身を捻ったあたしは、うつぶせになると枕に顔を突っ込んで、叫びたくなるのを必死に堪えてた。


 だって仕方ないじゃん!

 遠見君に裸見られたんだよ!?

 バスタオル巻いてたけど、それでも見られちゃったんだよ!?

 しかも、その前には遠見君の裸も見ちゃったけどさ。あれだって、あたしが色々せかしちゃった結果じゃん!

 今考えたら、ベッドで待っててとか、完全にエッチするフラグじゃん!

 あんなの聞いたら、そりゃ遠見君だって勘違いするかもしんないじゃん!

 これじゃあたし、ただのエッチで軽いギャルって思われても仕方ないっしょ!


 めっちゃ叫びたいけど、ここで変な声出したら、隣の部屋の遠見君に変に思われちゃう。

 それだけは絶対に嫌だったから、とにかく必死に堪えた。


 ……あたし、本気で油断し過ぎ。

 ここは遠見君の家なんだよ? 彼がトイレとか行く可能性とかだって普通にあるわけじゃん。

 それなのにあたし、慌ててたとはいえ何で考えなしに、バスタオルだけで洗面所から普通に出ちゃってるわけ!?


 最近は羽流はねるも大きくなってきたから、家でもそこそこ気をつけてるのに。今日に限って全然警戒しないとか、正直あり得な過ぎっしょ。

 しかも、信頼してるって言いながら遠見君を疑うとか。

 やっぱあたし、最低じゃん……。


 遠見君が優しかったから、助かっただけ。

 遠見君が誠実だったから、何もなかっただけ。


 あたし、遠見君の看病とか言っときながら、余計な事ばっかして、気を遣わせてばっかしじゃん……。


 後悔のせいで一気に心が落ち着いたけど、次に出たのは大きなため息。

 枕から顔を離すと、仰向けになって枕をぎゅっと抱きしめた。

 眼鏡をしてないから、ぼんやりとした薄暗い部屋。

 でも、普段の自分の部屋じゃないのははっきりとわかるし、それが遠見君の家に泊まってるんだって改めて感じさせられて、心が少し緊張する。


 ……確かに眼鏡女子好きな遠見君に、眼鏡ギャルだって可愛いって所を見せたかったし、意識だってして欲しかったよ?

 でも、あたしだって別に、エッチで軽いギャルって思われたいわけじゃないわけ。ちゃんと眼鏡をした素のあたしを見てもらって、眼鏡女子としてイケてるのかを遠見君で判断しようって思っただけじゃん。

 それなのに、あたし……。


「……あ」


 反省している最中、思わず漏れた声の理由。

 それは、今のあたしのもうひとつのやらかしに気づいたから。


「うわ……あたし、すっぴんじゃん……」


 独りごちたあたしは、思わず真っ赤になった顔を手で覆い隠す。


 うそっ!?

 裸を見られて完全に頭から飛んでたけど、お風呂上がってからあたし、化粧も何もしてないよね!?


 素のあたしって、別にすっぴんを見て欲しかったわけじゃないんですけど!

 しかもあたし、ずっと気づかないで遠見君と話してたの!? ずっとすっぴん見せてたの!?

 もー! 絶対無理! 恥ずすぎ!

 しかも化粧してないあたしなんて、遠見君が意識するはず──。


  ──「その……近間さんは、男子の人気者になるくらいには、魅力があるんだからさ」


 意識、なんて……。


  ──「その……あたしのバスタオル姿、そんなに刺激的だった?」

  ──「そ、そりゃ……スタイルもよかったし、その……近間さんってやっぱり、魅力的だし……」


 ……意識、してくれてる?

 ふと、思い返した恥ずかしそうな遠見君の姿と言葉に、あたしの心臓がドキドキしだす。


 遠見君、ギャルなあたしでも、魅力的って言ってくれてるじゃん……。

 すっぴんだった時だって、ちゃんと言葉にしてくれてるじゃん……。


 あたしには確信がある。

 遠見君って分かりやすいから、絶対に嘘はいてないって。

 つまり……つまりよ。それってやっぱ、あたしの事を意識して……。


 さっきまできっと、めっちゃ酷い顔をしてたと思う。

 なのに、あたしは遠見君の言葉を思い返して、頬が緩むのを抑えられなかった。


 ……あたし、やっぱチョロいだけ?

 ……そんな事ない、って言いたいけど、

 思い返すとあたし、すっごくチョロいのかもしれない。


 「ありがとう」って微笑んでくれた遠見君見て、すぐニヤケそうになってたし。

 さっき冷えピッタン貼った時だって、髪の毛を上げた遠見君がまた、普段と印象が違って見えて、めっちゃドキっとしちゃったんだよね……。


 今まで友達がいなかったって言ってる彼相手だから、気持ちはどこか先輩ぶってるけど。互いに眼鏡の異性が好きなのは変わんないじゃん?

 多分、ここに関しては負けてない。

 あ、ううん。負けてる。遠見君の魅力に。

 そりゃ、今日一日でさんざん分からされたもん。


 あたし好みの眼鏡男子だと思ったら、性格までめっちゃ良いわけじゃん?

 勝てるわけないっしょ。

 だからあたし、あれだけの事があったのに、今日すっごくいい日だったって言えたんだしさ。


 あたしの情けない初恋の話を聞いても幻滅しないし。

 あたしの大事な帽子を守ってくれたし。

 あたしのわがまま押し付けられても、ご飯食べても美味しいって言ってくれて。

 大した事をしてなくってもありがとうって言ってくれる。

 彼の、は、裸の件は、まあ、ラッキーだったかなー。あははは……。


 でもでも。

 それだけいい日だって思うからこそ、やらかしたとも思ってるし、反省だってするわけ。


 ……よく考えたらさー。

 遠見君、あたしが額付けて熱計っちゃったり、あたしのバスタオル姿見ちゃったりしたじゃん。

 彼が言ってた距離感にほだされちゃって、魅力的って勘違いしてるだけかもしれないよね。


 そうだよそう。

 だから、まだまだ油断しちゃダメだって。


 あたし、グラ友としてもっとよく見てほしいし、ちゃんと友達として、互いをリスペクトしたいしさー。

 だから、あたしだけ浮かれちゃダメだし、もっと色々気をつけなきゃ。


 ……でも、今日の遠見君、やっぱ良かったよね。

 特に笑顔。そう! あの笑顔はマジヤバ。

 あたし、あの笑顔を見るだけの為に、遠見君とずっと一緒にいたいって思っちゃってるもん。何か、恋する乙女みたいじゃんねー。


 ……ん? 恋する、乙女?

 ……いやいやいやいやいや。

 それはない。それはないっしょ。


 い、いや。遠見君めっちゃいいよ? 間違いないよ?

 男子の家にお泊りとか、あたしの初めてもいっぱい奪われてるよ?


 だけど。だけどよ。

 あたし達まだ、全然話もできてないわけ。


 あたしは美香と違うの。

 ちゃんと相手を知ってー。相手を理解してー。眼鏡なあたしでも大好きって言ってくれる人をじっくり選ぶの!

 すぐに好き好きーって付き合うとか、絶対考えらんない。


 ま、まあ一応、遠見君優しいしー。あたしを大事にしてくれるしー。あたしを魅力的って言ってくれるしー……って、これ……結構条件満たしてない?


 ……違う違う!

 だーかーらー! あたしはまだ遠見君とまだ大して話せてないから!

 好きな食べ物とか、そういうのも全然知らないんだよ!?  

 それに遠見君だって、眼鏡ギャルよりきっと大人しい眼鏡女子の方が好きじゃん!


 そう! そうだよね!

 だからあたしなんかの事好きになるとか……ない……かなぁ……。


 ふっと、心が少し切なくなったあたしは、枕を頭の下に戻して横を向く。


 あたし、眼鏡だけどギャルじゃん。

 絶対遠見君の好みと違うもんねー……。

 

 遠見君が、誰かと仲良くなる、か……。

 今の彼の性格じゃ、すぐにそんな事になる事なさそうだけどさー。

 あたしですら、こんな短時間で彼の良さがわかっちゃう訳じゃん。

 誰かが魅力に気づくのも、時間の問題かなー。

 遠見君だって、やっぱ敦美先輩みたいな、落ち着いた女子がいいんだろうし……。


 ……って。

 何でそんな事ばっかり考えてるわけ!?

 あたしと遠見君はグラ友。グラ友なだけなんだかんね!


 もう! 今日はちゃちゃっと寝よ!

 まずはグラ友として、もっと遠見君を知って! 遠見君にもあたしを知ってもらうの!

 そうしないと、また変なことやらかして嫌われちゃうかんね!


 頭からがばさっと布団を被って目を閉じたあたし。

 だけど、さっきまでの事を考えすぎて、全然眠気が襲ってこない。


 こ、こうなったら……遠見君、ごめん!

 あたしはさっきまでの自制心をその辺に放り投げ、ただひたすら遠見君が今日見せてくれた笑顔を思い返し始めた。


 ……うふっ。やっぱあの笑顔、たまらないっしょ。

 眼福どころじゃないよねー。もう神? 神なんじゃないの?

 ほんと、あたしこの学校入学して良かったー。

 遠見君の笑顔だけでご飯三杯はいけちゃうしー。

 正直、めっちゃ推せちゃうよね。ほんと。


 またも自然とニヤける顔。

 でも、それが何故かすごい幸せで。

 顔が火照っちゃうけど、その感覚も心地よくって。


 あたしはそんな幸せなひと時を感じて浮ついた気持ちになると、さっきまでのは何だったのってくらい、あっさりと眠りに落ちていった。

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