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好きなのは。  作者: れーよ
4/4

文化祭です。

《主な登場人物》


鮎川岳‥‥素はイケメンなのに、メガネをかけていて髪もボサボサのイケメン陰キャくんと言われている生徒会副会長の主人公の岳。そんな岳には生徒会長の田中有紗という好きな人がいた。岳は友達の刃に手伝ってもらって田中有紗を振り向かせるため垢抜けに挑戦する。主人公1。

松田刃‥‥みんなからモテている、岳の垢抜けをお手伝いする生徒会会計の主人公。でも、刃にも悲しい恋事情があるとか。主人公2。

田中有紗‥‥学校のマドンナ生徒会長の主人公。有紗は地味なイケメン陰キャくんと言われている生徒会副会長の鮎川岳に恋をする。主人公3。

結城和哉‥‥有紗の友達で、よく恋の相談を受けている和哉。でも、和哉にも好きな人がいて…。


第三者‥‥作者。最後に感想を言う謎の人物。

(岳編)

ついに文化祭が始まる。

俺たちは文化祭前日に俺の家で集まった。

「明後日だよね。劇は。」

「うん。」

文化祭の劇は全クラスやるので、文化祭一日目は出し物、二日目は劇。と、別々にやることになった

「いやー刃くんの女の子のコスプレめっちゃ可愛いよ。ついにみんなにお披露目かー!」

「女の子のコスプレはいいんだけどさ、最初の方のキスするシーンと最後のキスするシーン本当に練習しなくてよかったの?」

「うん!何度も練習でそのシーンやるのは、流石に気が引けるでしょ?一度だけでいいのよ!」

「なるほどね。ていうか…岳、無言すぎない?」

俺はずっと煎餅を食べながらセリフを頭の中で唱えていた。

「いざとなったらセリフが吹っ飛びそうだから今頑張って覚えてたんだ。」

「俺はセリフの練習しすぎて覚えた。岳のおかげで棒読みもなくなったし!」

「よかったよ。あの時の刃は本当にやばかったから。」

「本当にそれ!岳くんに感謝。二人とも、劇通して見せて!」と有紗がいうので、「じゃあトイレ借りるね。着替えてくる!」といい、衣装を入れていた紙袋をもってトイレに行った。

「ていうか岳くんの部屋広くない?」

「兄ちゃんが大学で一人暮らしになって、俺が兄ちゃんの部屋使ってるんだ。俺の部屋が狭くて。」

「へぇー。仲良いのね!」

「うん。」

「着替えたよー!」と紙袋をもって刃が部屋に入ってきた。

カツラはふたつ結びをしたまま脱いでいたので、縛る手間が省かれた。

「やっぱり可愛いわ!」

「へへへ。ありがとう!じゃあ通そう!」

「わかった。」

俺は台本を置き、三十分ほどかけて通した。

「うん、完璧だね!岳くんも刃くんもセリフ完璧じゃん!じゃあ明日と明後日に向けて乾杯しよう!」

と水の入ったグラスを手にしたので俺たちも座り、乾杯をした。

「乾杯!」


翌日。文化祭一日目。

俺はてっきり忘れてた。

男子はメイド服を、女子はタキシードを着ることを。

刃は女装が似合う。

でも俺は絶対似合わない。

とりあえず着た。

やっぱり似合わない。

廊下にはメイド服のごつい男子たち、タキシード姿の女子たちが溢れていた。

「刃、やっぱり似合うな。」

「ふふーん。でしょ?岳も可愛い。笑。」

「まじ。どこが。…まあありがとう。」

「いえいえ。じゃあ早速俺たちのクラスの出し物、「お化け屋敷」に行こう!」

刃は俺の腕を引っ張りお化け屋敷の中に入って行った。

「わっ!!!び、びっくりした…怖っ」

「早速お化け屋敷にって言った刃がビビってどうするんだよ。」

「わっ!!…だって怖いんだもん…」

「腕痛いって、刃がびっくりするたびに腕折れそうになる」

刃は俺の腕をしっかりがっちり掴んでいた。

「これどこまで続くの…?岳は怖くないの?」

「うん。ホラー映画とか得意で。」

「へぇ。意外。」

「なんだよそれ。笑。ていうか近い。顔。」

すると刃はニヤついて唇にキスをしようとしてきた。

「な、なんだよ。どうした。」

「触れてないし。いいでしょ?イタズラ。」

「バカだな。油断してたらまたお化けが来るぞ。」

「まってまってまってそういう怖いこと言わないで!」

「ビビリだな。笑。じゃあ俺が後ろからガードする。」

そう言い俺は刃を前に歩いた。

すると上から頭が落ちてきた。

「ぎゃー!!!!」刃がびっくりして後ろを向いて逃げようとした時、後ろにいた俺とぶつかり倒れた。

「うおっ。床ドン…ってやつ?」

「だから、顔近いんだって。」

「ごめんごめん。」刃は俺から離れ、手を差し伸べてきた。

「ったく。ビビリすぎ。」と立ち上がると、「やっぱり前も怖い。横がいい。」と腕を組んできた。

「わかったよ。」

数分後。

「や、やっとゴール…した…」

と刃が息切れをしていた。

「俺まで疲れた。笑。」

お化け屋敷を出ると「ありがとうございました。」と貞子姿の有紗がいた。

「お、有紗。お疲れ様。刃、すごいビビってたよ。」

「うん聞こえてた。笑。」

「え、まじ!?そんな大きかった?声。」

「うん。めちゃくちゃね。確か二人とも午後の担当だよね。刃くんのその声量だったら、その声だけで驚かせそうだけど。」

「確かに。笑。」

「ちょっと二人とも!笑。」

その後刃は本当に声だけで驚かしに行き、みんな怖がっていた。

下校時。

有紗は用事があるというので先に刃と帰った。

「今日、俺と帰る日じゃないよね。いいの?」

「うん。元々は毎日刃と帰ってたし。」

「確かにね。」

「今日歩く?電車?」

「電車!」

俺たちは電車に乗り、イヤホンで二人で動画を見ていた。

「ははっ笑。これなに笑。」

「ね。笑。これ岳みたい。笑。」

「なんだよそれ笑。」

「笑。」刃はそう笑うと大きな欠伸をした。

「眠いのか?」というと「うん…。」と言い、すぐ寝た。

俺は刃の耳からイヤホンを取り、自分の耳につけ動画を見ていたが、刃が肩にもたれかかってきたので動画を止めてそのままにしておいた。

「…好き…だ…」となんのことを言っているのかわからないが寝言を言っていたので、刃を見て微笑んだ。

俺も眠く、肩にもたれかかっている刃の頭に頭を置き、寝てしまった。

「起きて!」と刃に言われ起きると俺たちの降りる駅を過ぎてしまっていた。

「やべっ!」

「次で降りよう。」俺たちは次で降りて、戻った後、家まで歩いていた。

「ていうかさ、セリフ大丈夫なの?岳」

「ううん。やばい。昨日はできたけど、改めて朝練習したけどさ、忘れちゃう。」

「じゃあもうちょいで俺の家だし、しかも俺一人暮らしだし、最後のセリフ読み合いしよ!」

「いいの?」

「うん!…あ、ここ俺ん家。」

と言い刃はドアの鍵を開け俺を招き入れた。

刃の家は一人暮らしなのにとても広く、それはまるでお城みたいだった。

俺は刃に着いて行き、刃の部屋らしきところに行くと「はい、セリフ読み合いするよ!」と台本を持ち座った。

セリフの読み合いは一時間ほどかかった。

「結構練習したね。疲れたー!」

「刃、ありがとう。もう二十三時!?」

「え!」

スマホを確認すると「なにしてるの?」「遅いけどどうしたの?」とお母さんからメールと電話が来ていた。

「やべぇ…。」

「どうしたの?」

「母さんからすごい電話来てて。」

「えー。出な出な!」

「ごめん、」

俺は恐る恐る電話をかけた。

「あんた何時に帰ってくるの!!」

「ごめん母さん、明日文化祭の劇だから練習してたんだ。」

「そう、あと何時くらいに帰ってくるの?」

「それは…まだわからない。」

「わかったら絶対連絡するのよ!!わかった?」

「はい…すみません。」

俺は電話を切り、ふぅ。とため息をついた。

「刃、ありがとね。」

「うん。少し休もう。」

俺は刃のベッドを背もたれにし、目を閉じた。

寝ない寝ない。と心の中で唱えていたのにまた寝てしまった。

「岳、岳。」と刃にまた起こされ、起きると一時近くになっていた。そして刃は上裸で濡れ髪だった。

「やべぇ…。ていうかなんで上裸?」

「風呂入ってきた。」

「あ、ごめん…こんな時間まで。」

「いいの。あ、岳のお母さんから電話かかってきたから「今日は遅いので泊まらせます。」って言った。だからこんな時間だから泊まっていって。」

「悪い…。」

「とりあえずお風呂入って。あとパジャマは貸す。」

「本当ごめん、ありがとう。」

「ううん。」

「…にしてもムキムキだな」

そういうと刃はニヤニヤして「まあねー!」と立ち上がった。

「はい、お風呂入ってきて!」

とお風呂に案内してもらい、入った。

浴槽は三人入れるんじゃないかというくらいびっくりするほど広かった。

ドア越しに「パジャマここに置いておくねー!」と聞こえたので「ありがとう!」と返事をした後、お風呂からあがった。パジャマを着て、ドライヤーをしてから俺は部屋に行った。

「ありがとう。ぴったり。」

「うん!あ、ご飯食べてないよね。少しだけだけど食べよう。」

「ごめん、ありがとう。…ねぇ、なんでまだ上裸?」

「基本、お風呂上がりはそう。着る時もある。ご飯食べる時は着る。」

「なる…ほど。」

刃は上の服を着て、「はい、とりあえずご飯作るのでリビング行きましょうか。」と言ったので俺は刃について行き、リビングに向かった。

数分後、オムライスが出てきた。

「わお。」

「どうした?…もしかして嫌い…?」

「いや、そうじゃなくてめっちゃ美味しそう。」

「よかった!じゃあいただきます!」

「いただきます。」

刃が作るオムライスは、とても美味しくて飛びそうなほどだった。

「うんまぁー!!!!」

「そんなに!?よかった!作り甲斐があるね」

俺はすぐに食べ終わった。

「美味しかった?」

「うん。ありがとう!あ、明日の朝有紗どうし…」

有紗の話をしようとすると刃が人差し指を俺の唇にくっつけ、「しっ。」とやってきた。

俺が首を傾げると刃は「ほ、ほら。今はリア充の話はしないで、羨ましいから!」と微笑んで言った。

「ごちそうさまでした。ほら、歯ブラシは新しいのあるから、歯磨きしよう!」

歯磨きをした後、刃は「暑い。」と言って服を脱ぎ丁寧に畳んだ。

「岳、ベッドで寝な。俺、床で寝る。」

「いや俺が床で寝るよ…。」

「んあー!もう、譲り合い面倒くさい。どうせなら二人でベッドで寝よう!ベッド広いし、大丈夫っしょ!」

確かに、これだったら一生続いてしまう。そして否定もできない。泊めてもらってる側だから。

「わかっ…た。」

そう言い俺はベッドの中に入った。

俺はスマホを開き、『ごめん、明日刃とセリフの読み合わせしてから行くから遅く行くんだ。明日学校で会おう!おやすみ。』と送り、スマホの画面を閉じた。

「岳、」と後ろから声がしたので振り返るとすぐ近くに刃がいた。

「だから、近いって。どうしたの?」と聞くと、「ううん。おやすみ。」と言って離れなかった。俺の袖を掴み、眠った。

「…おやすみ。」

本当、弟みたいだ。

朝、起きるとお互いをハグし合い、今にもキスするんじゃないかという距離で寝ていた。

目を開けると刃も目を開けて「おはよ。」と微笑んできた。

破壊力えげつないー!と心の中で思いながらも、「おはよう。」と言った。「目覚まし前に起きちゃったね。」とまた微笑んできて、こんな近くでそんなこと言われるのはやばいと思い、離れた。

「う、うん。そうだねー!」と起き上がると刃も起き上がり、「岳。」と俺の膝の上に乗っかり、向かい合わせになった後俺の両肩に刃が刃の両腕を乗せ、「ダメだね。」といい押し倒してきた。

「ちょっとまって、これなに?」と聞いても無言で、俺の首元に唇をくっつけた。

「ちょっと、え?まって。寝ぼけてる?」これは、結構やばいぞ。と思い、焦っているとぐがーっといびきの声が聞こえた。

「刃?刃ー!」刃は俺に被さったまま寝てしまった。

俺は刃を抱えたまま起き上がり、刃を揺らし「起きて刃。ここで寝ないで。」と言った。

刃はその後すぐに起き、リビングで朝ごはんを一緒に食べた。その時に今朝のことを話すと「嘘!!ごめん、そんなことを!ごめんね…!なんか、すごい夢見てて…ハレンチな…。」と必死に謝っていた。

「いや、いい。大丈夫。ていうか、どうやったらそんな夢を?笑。」

「確かに…笑。」

俺は食べ終わった後、鏡の前で歯磨きをして、制服を着て軽くセリフの読み合いをした。

「よし!完璧だ!本番頑張ろう岳!」

「おう!」

俺たちは遅刻ギリギリで学校に向かった。

「おはよう!岳くん!刃くん!」

「おはよう!岳、セリフ完璧だよ!」

「まじ!」

「うん!バッチリ!」

「でも私たちが発表するのが最後だから、それまでセリフ読んだりしてて!」

俺はセリフを唱えるように読んでいた。

みんなの劇はとても素晴らしい劇ばかりで、その中には泣きそうになるものもあった。GL、BLとバラバラで、その中でも半数を占めていたのがBLだった。

「いよいよよ。用意できてる?」

「大丈夫。セリフは覚えた。」

「俺も。しっかりカツラ被れた。」

「よし。頑張ろう!」

俺たちは円陣を組んだ。「行くぞー!!おー!!!」

「「「おー!!!」」」

体育館が暗くなり、クラスのみんながステージに上がった。

そして俺もステージに上がり、セリフを言い始めた。

《ここからはこの劇をお楽しみください》

「僕は、この教室の中でもひとりぼっち。誰も僕の病気のことだって知らない。」

有紗は、「下校時。」と言った。

僕は歩いていた。すると、女子高生が走って前からやってきた。」

「わっ!」

「痛たたた…君、大丈夫?怪我とかない?」

「だ、大丈夫です!!」

翌日。

「昨日の女の子、大丈夫かな。かなり焦っていたようだけど。」

登校していると、また女の子が走ってきた。

「あ!昨日の!」と声をかけると、女の子は目の前で止まり、「すみません!」と頭を下げた。

「いいのいいの。」

「…あなたがご無事で、よかったです!」女の子は微笑み、そのまま走って行ってしまった。これが僕の女の子への初恋だった。いつも男の子に恋をしていたのに。

帰り道、僕はいつもと違う道で帰っていた。

すると、また女の子とぶつかった。今度は女の子が転んでしまった。

「痛っ!」

「あ!今朝の…ごめん、手当する。こっちきて。」

といい、僕は家に連れて行った。

「何度も何度も…ごめんね。君、なんて言う名前?」

「刃。松田刃。」

「まって、もしかして彼氏とかいる?それならごめん!早く家から出ないと彼氏さんとかに勘違いされちゃうよね!」

と僕が言うと「いないです。特に。」といい、髪の毛を掴んだ。「いないんだ。でも…」「男なんです!」とその子は顔を真っ赤にして言い、髪の毛、いやカツラを取った。

「ごめんなさい。私、いや、俺は、女の子になってみたいなって。だからコスプレを。」と謝ってきた。

「刃ちゃん…刃くんが謝ることじゃないよ!」

「俺、あともう一つカミングアウトしちゃいます。」

「なに?」

「俺、「不老不死」なんです。」と悲しそうに言ってきた。

「え?不老不死?」

「はい。…なので、今まで愛した人全てに先立たれてしまいました。だから俺は、愛を捨てて生きるって決めたんです。」

「そ、うなんだ…。でもなんでそれを僕に?」

「それは…。」刃くんは僕の右手を両手で握りしめ、

「あなたを好きになってしまったからです。」と言った。

「す、好き!?」

「はい。でも、また先立たれるのが怖い。」僕はこんなに怖がっている刃くんに病気のことは言わないでおこう、そう思った。

「…連絡先交換しよう!連絡先交換したらこういう相談事もできるし。」

「はい。」

僕たちは連絡先を交換したあと家を出た。

「今日はごめんね。気をつけて!」

「はい。また。」

刃くんの後ろ姿を見て、もし明日会えなくなったらということを考えてしまった。だから僕は、「刃!」と叫び、刃の腕を引っ張りキスをした。(もちろんキスのフリ)

《下記の鉤括弧は演技ではなく普通の小声の会話です。》

「ち、近くない?勢い良すぎた?」と刃は戸惑っていた。

「触れてないし、いいでしょ?イタズラ返し。」俺はそう言いニヤついた。

「あ…。」刃は顔を赤くしていた。

そして俺は刃の頬に軽くキスをした。

「え。」

《ここからは劇です》

「…え?」

「ご、、ごめん。気をつけて。」僕は走って家に入った。

翌日。

家の前に男の子がいた。

「…誰ですか?」その顔を見ると、超絶美少年でびっくりした。

「刃です。」と男の子が言ったので、嘘だ。と思い、「き、昨日のき、」というと「キスですか。嫌じゃ…なかったです。」と顔を赤らめて言った。

「一緒に登校しましょう。道は一緒です。」

僕たちは横に並び歩いていた。

「そういえば、あなたの名前は?」と聞いてきたので「岳。鮎川岳。」と答えた。

「岳。ですね。」

「刃。」僕は刃の手を握り、「僕、刃が好きだ。」と言った。刃は少し悲しそうな顔をしていた。でも、「俺も好きです。」と言った。

そこから俺らは付き合うことない特別な関係だった。

一緒にトランプをしたり、音楽を聴いたりカラオケに行ったり。時にはキスをした。それは一回だけだが。

楽しかった。でも楽しかった時間はあっという間で、死はすぐ近くにいた。

僕は癌で倒れ、入院することになった。

「なんで言ってくれなかったんですか!」

「刃が好きだったから。」

「だとしても!もっと色んなことしたかったです…!」

刃はそう言い泣いた。

僕の体の力は尽きた。でも、最後にどうしても行きたかった場所があった。僕は尽きたはずの力を出し、泣いている刃を連れて「行こう。」と言ってそこに向かった。

看護師さんに追われながらも頑張って走った。

そして着いた。夕日の一番見える場所に。

「綺麗だな。」

「…ダメですよ…こんなに走っちゃ!」

「もう死ぬんだ。」

「そんなこと言わないでください!」

「…君を愛せてよかったよ。好きになれてよかった。刃。」

僕はそう言い、息を引き取った。

「岳?岳!…なんで、なんで俺はいつもこうなんだ…。」

刃は「これは毒です…。一度飲んで死のうとしたけど、無理だった。不老不死だから。でも。人生で一生愛した人だ。男の人を愛したのは初めてなのに。神様、どうか私を死なせてください。」刃はそういい、毒を飲み俺にキスをした。

〈本当のキス〉を。そして自分の腹にナイフを刺し、死んでしまった。


ここで幕は閉じた。

暗転したステージで俺は刃に囁いた。

「刃、キスした?」

「…リアリティ。…ごめん!当たったの!」

「当たっちゃっただけ?」

「そう。ごめん!」刃は必死に謝っていた。

ステージを降り、みんなを見るとみんな泣いていた。

有紗は「大成功ね!」とニコニコしていた。

下校時、有紗は文化祭のことでやらないといけないことがあるそうで、今日も帰れないと泣きそうになっていた。

俺は刃と二人で帰った。

今日は歩きで。

「ごめんね。今日はキスしちゃって。」

「ううん。わざとじゃないんだね。」

「うん!」

この後もずっと刃は謝っていた。



(刃編)

文化祭一日目。

俺はメイド服を着た。

岳は予想通り可愛くて、絶世の美女という感じだった。

「刃、やっぱり似合うな。」と自信なさげに岳が褒めてくれた。まあ自覚はしている。

「ふふーん。でしょ?岳も可愛い。笑。」

「まじ。どこが。…まあありがとう。」

「いえいえ。じゃあ早速俺たちのクラスの出し物、「お化け屋敷」に行こう!」

俺はは岳の腕を引っ張りお化け屋敷の中に入って行った。

「わっ!!!び、びっくりした…怖っ」

「早速お化け屋敷にって言った刃がビビってどうするんだよ。」

「わっ!!…だって怖いんだもん…」

「腕痛いって、刃がびっくりするたびに腕折れそうになる」

俺は岳の腕をしっかりがっちり掴んでいた。

「これどこまで続くの…?岳は怖くないの?」

「うん。ホラー映画とか得意で。」

「へぇ。意外。」

「なんだよそれ。笑。ていうか近い。顔。」

俺はニヤついて唇にキスをしようとした。

「な、なんだよ。どうした。」

「触れてないし。いいでしょ?イタズラ。」

「バカだな。油断してたらまたお化けが来るぞ。」

「まってまってまってそういう怖いこと言わないで!」

「ビビリだな。笑。じゃあ俺が後ろからガードする。」

そう言い俺は岳を後ろに歩いた。怖くて震えている中、上から頭が落ちてきた。

「ぎゃー!!!!」とびっくりして後ろを向いて逃げようとした時、後ろにいた岳とぶつかり倒れ、床ドン状態になった。

「うおっ。床ドン…ってやつ?」

「だから、顔近いんだって。」

「ごめんごめん。」俺は岳から離れ、手を差し伸べた。

「ったく。ビビリすぎ。」

「やっぱり前も怖い。横がいい。」と再び腕を組んだ。

「わかったよ。」

数分後。

「や、やっとゴール…した…」疲れて息切れが止まらなかった。

「俺まで疲れた。笑。」

お化け屋敷を出ると「ありがとうございました。」と貞子姿の有紗がいた。

「お、有紗。お疲れ様。刃、すごいビビってたよ。」

「うん聞こえてた。笑。」

「え、まじ!?そんな大きかった?声。」

「うん。めちゃくちゃね。確か二人とも午後の担当だよね。刃くんのその声量だったら、その声だけで驚かせそうだけど。」

「確かに。笑。」

「ちょっと二人とも!笑。」

その後俺は本当に声だけで驚かしに行き、みんな怖がっていた。岳は仕事がなく、暇そうにしていた。

下校時。

有紗は用事があるというので先に帰った。

「今日、俺と帰る日じゃないよね。いいの?」

「うん。元々は毎日刃と帰ってたし。」

「確かにね。」

「今日歩く?電車?」

「電車!」

俺たちは電車に乗り、イヤホンで二人で動画を見ていた。

「ははっ笑。これなに笑。」

「ね。笑。これ岳みたい。笑。」

「なんだよそれ笑。」

「笑。」笑っていると眠すぎて大きな欠伸が出た。

「眠いのか?」と聞かれたので「うん…。」と答えた。

そして目を瞑った。

俺は、岳の肩にもたれかかり、寝るふりをした。でも、本当に寝てしまった。

夢で、俺が岳にキスをし、告白をして走って逃げる夢を見た。そこで夢は途切れたが、妙にリアルだった。

起きると、岳が俺の頭に頭を乗せて寝ていたので、俺の肩に乗せた。欠伸をしながら今の駅の場所を見ると四駅通り過ぎていた。俺は焦って「起きて!」と岳を起こした。

「やべっ!」

「次で降りよう。」俺たちは次で降りて、戻った後、家まで歩いていた。

「ていうかさ、セリフ大丈夫なの?岳」

「ううん。やばい。昨日はできたけど、改めて朝練習したけどさ、忘れちゃう。」

「じゃあもうちょいで俺の家だし、しかも俺一人暮らしだし、最後のセリフ読み合いしよ!」

「いいの?」

「うん!…あ、ここ俺ん家。」

と言いドアの鍵を開け招き入れた。

部屋に行き、「はい、セリフ読み合いするよ!」と台本を持ち座った。

セリフの読み合いは一時間ほどかかった。

「結構練習したね。疲れたー!」

「刃、ありがとう。もう二十三時!?」

「え!」

岳はスマホを確認し、困った顔をしていた。

「やべぇ…。」

「どうしたの?」

「母さんからすごい電話来てて。」

「えー。出な出な!」

「ごめん、」

電話をかけ、お母さんと話している岳はすごい気まずそうな顔をしていた。

岳は電話を切り、ふぅ。とため息をついた。

「刃、ありがとね。」

「うん。少し休もう。」

岳は俺のベッドを背もたれにし、寝てしまった。

「岳?寝た?」と確認しても反応がなく、俺は岳を寝かせたままお風呂に入った。

お風呂から上がり、まだ寝ている岳を見て俺は岳にそっと近づき、寝ている岳の唇に唇を近づけキスをしようとした。

でも途中で何をしているんだ。と思い、やめた。

その代わり、頬にキスをした。

もうそろそろ起こさないとな。と思い「岳、岳。」と起こした。時刻は一時過ぎ、俺は濡れ髪上裸。その時間と姿を見て岳は「やべぇ…。ていうかなんで上裸?」と言った。

「風呂入ってきた。」

「あ、ごめん…こんな時間まで。」

「いいの。あ、岳のお母さんから電話かかってきたから「今日は遅いので泊まらせます。」って言った。だからこんな時間だから泊まっていって。」

「悪い…。」

「とりあえずお風呂入って。あとパジャマは貸す。」

「本当ごめん、ありがとう。」

「ううん。」

「…にしてもムキムキだな」

「まあねー!はい、お風呂入ってきて!」

とお風呂に案内した。

俺はドライヤーをしたあと部屋で待機していた。

そして少し考え事をしていた。

岳はかなりというかめちゃくちゃ鈍感なのじゃないかと。

キスをしようとしても赤面する様子もなく、ツッコミをして終わり。

「…やっぱりそうだよな。鈍感だよな。」考え事が一瞬にして終わり、俺は「パジャマここに置いておくねー!」と浴室の隣の棚に置いた。「ありがとう!」と返事が返ってきたので、俺は部屋に行った。

しばらくして岳は俺の部屋に来た。

「ありがとう。ぴったり。」

「うん!あ、ご飯食べてないよね。少しだけだけど食べよう。」

「ごめん、ありがとう。…ねぇ、なんでまだ上裸?」

「基本、お風呂上がりはそう。着る時もある。ご飯食べる時は着る。」

「なる…ほど。」

俺は上の服を着て、「はい、とりあえずご飯作るのでリビング行きましょうか。」と言いリビングに向かった。

数分後。

俺はオムライスを作り、岳の前に出した。

「わお。」

「どうした?…もしかして嫌い…?」

「いや、そうじゃなくてめっちゃ美味しそう。」

「よかった!じゃあいただきます!」

「いただきます。」

岳は一口食べると「うんまぁー!!!!」と目を輝かせていた。「そんなに!?よかった!作り甲斐があるね」

岳はすぐに食べ終わった。

「美味しかった?」

「うん。ありがとう!あ、明日の朝有紗どうし…」

有紗の話をしようとしたので俺は岳の唇に人差し指をくっつけ、「しっ。」とやった。

岳が首を傾げたので、やってしまった!と思い「ほ、ほら。今はリア充の話はしないで、羨ましいから!」と微笑んで紛らわした。本当は今二人の時間だから彼女の話はしないでほしいだけ。嫉妬しちゃうから。それだけの理由。

「ごちそうさまでした。ほら、歯ブラシは新しいのあるから、歯磨きしよう!」

歯磨きをした後、俺は「暑い。」と言って服を脱ぎ丁寧に畳み、置いた。

「岳、ベッドで寝な。俺、床で寝る。」

「いや俺が床で寝るよ…。」

「んあー!もう、譲り合い面倒くさい。どうせなら二人でベッドで寝よう!ベッド広いし、大丈夫っしょ!」

譲り合いが嫌というより一緒に寝たいからである。

断られても俺の家だから俺が決める。ということもできると思ったが岳は「わかっ…た。」といいベッドの中に入った。

久しぶりに人と寝る。母さんが失踪して父さんがそれでショックを受け自殺。一つ下の弟は一人暮らしで三、四年ほど一人で寝て一人でご飯を食べて。全部一人だった。親の遺産とばあちゃんがくれる大量のお小遣いでなんとかやっていけてるが、お金は満たされても一人じゃ心が満たされない。

だから一人じゃなくなるのは久しぶりだ。泣きそうになりながらも「岳、」と岳を呼んだ。

「だから、近いって。どうしたの?」と聞いてきたので、

「ううん。おやすみ。」と言って岳の袖を掴み、眠った。

「…おやすみ。」

朝、起きるとお互いをハグし合い、今にもキスするんじゃないかという距離で寝ていた。

離れたくない。

「おはよ。」と微笑むと

「おはよう。」と微笑んできたので心の中で破壊力!!と叫びながらも顔には出さず「目覚まし前に起きちゃったね。」とまた微笑んだ。すると「う、うん。そうだねー!」と起き上がったので俺も起き上がった。そこからなにもおぼえていない。岳は俺を揺らし「起きて刃。ここで寝ないで。」と言った。

俺はその後すぐに起き、リビングで朝ごはんを一緒に食べた。その時に今朝のことを話され、びびった。「嘘!!ごめん、そんなことを!ごめんね…!なんか、すごい夢見てて…ハレンチな…。」と必死に謝った。

《夢の内容は、岳編でお話しした通りでございます。岳に、ああいうことをしてしまったという夢を見たそうです。》

「いや、いい。大丈夫。ていうか、どうやったらそんな夢を?笑。」

「確かに…笑。」

俺は食べ終わった後、鏡の前で歯磨きをして、制服を着て軽くセリフの読み合いをした。

「よし!完璧だ!本番頑張ろう岳!」

「おう!」

俺たちは遅刻ギリギリで学校に向かった。

「おはよう!岳くん!刃くん!」

「おはよう!岳、セリフ完璧だよ!」

「まじ!」

「うん!バッチリ!」

「でも私たちが発表するのが最後だから、それまでセリフ読んだりしてて!」

岳はセリフを唱えるように読んでいた。

みんなの劇はとても素晴らしい劇ばかりで、その中には泣きそうになるものもあった。GL、BLとバラバラで、その中でも半数を占めていたのがBLだった。

「いよいよよ。用意できてる?」

「大丈夫。セリフは覚えた。」

「俺も。しっかりカツラ被れた。」

「よし。頑張ろう!」

俺たちは円陣を組んだ。「行くぞー!!おー!!!」

「「「おー!!!」」」

体育館が暗くなり、クラスのみんながステージに上がった。

そして俺もステージに上がり、セリフを言い始めた。

《ここからはこの劇をお楽しみください。そして刃編でも岳目線ですが、《下記の鉤括弧は演技ではなく普通の小声の会話です。》の部分は刃目線でお話しいたします。》

「僕は、この教室の中でもひとりぼっち。誰も僕の病気のことだって知らない。」

有紗は、「下校時。」と言った。

僕は歩いていた。すると、女子高生が走って前からやってきた。」

「わっ!」

「痛たたた…君、大丈夫?怪我とかない?」

「だ、大丈夫です!!」

翌日。

「昨日の女の子、大丈夫かな。かなり焦っていたようだけど。」

登校していると、また女の子が走ってきた。

「あ!昨日の!」と声をかけると、女の子は目の前で止まり、「すみません!」と頭を下げた。

「いいのいいの。」

「…あなたがご無事で、よかったです!」女の子は微笑み、そのまま走って行ってしまった。これが僕の女の子への初恋だった。いつも男の子に恋をしていたのに。

帰り道、僕はいつもと違う道で帰っていた。

すると、また女の子とぶつかった。今度は女の子が転んでしまった。

「痛っ!」

「あ!今朝の…ごめん、手当する。こっちきて。」

といい、僕は家に連れて行った。

「何度も何度も…ごめんね。君、なんて言う名前?」

「刃。松田刃。」

「まって、もしかして彼氏とかいる?それならごめん!早く家から出ないと彼氏さんとかに勘違いされちゃうよね!」

と僕が言うと「いないです。特に。」といい、髪の毛を掴んだ。「いないんだ。でも…」「男なんです!」とその子は顔を真っ赤にして言い、髪の毛、いやカツラを取った。

「ごめんなさい。私、いや、俺は、女の子になってみたいなって。だからコスプレを。」と謝ってきた。

「刃ちゃん…刃くんが謝ることじゃないよ!」

「俺、あともう一つカミングアウトしちゃいます。」

「なに?」

「俺、「不老不死」なんです。」と悲しそうに言ってきた。

「え?不老不死?」

「はい。…なので、今まで愛した人全てに先立たれてしまいました。だから俺は、愛を捨てて生きるって決めたんです。」

「そ、うなんだ…。でもなんでそれを僕に?」

「それは…。」刃くんは僕の右手を両手で握りしめ、

「あなたを好きになってしまったからです。」と言った。

「す、好き!?」

「はい。でも、また先立たれるのが怖い。」僕はこんなに怖がっている刃くんに病気のことは言わないでおこう、そう思った。

「…連絡先交換しよう!連絡先交換したらこういう相談事もできるし。」

「はい。」

僕たちは連絡先を交換したあと家を出た。

「今日はごめんね。気をつけて!」

「はい。また。」

刃くんの後ろ姿を見て、もし明日会えなくなったらということを考えてしまった。だから僕は、「刃!」と叫び、刃の腕を引っ張りキスをした。(もちろんキスのフリ)

《下記の鉤括弧は演技ではなく普通の小声の会話です。》

「ち、近くない?勢い良すぎた?」と俺は戸惑ってしまった。

「触れてないし、いいでしょ?イタズラ返し。」岳はそう言いニヤついた。「あ…。」俺はすっかり女子になってしまっていた。顔を赤くし、手をグーにして顎の下に手を添え、ぶりっこのようになってしまっていた。

そして岳は俺の頬に軽くキスをした。

え?昨日の見てた?という焦りと共に、ドキドキが止まらなかった。

「え。」俺は小声でそう言ってしまった。

《ここからは劇です》

「…え?」

「ご、、ごめん。気をつけて。」僕は走って家に入った。

翌日。

家の前に男の子がいた。

「…誰ですか?」その顔を見ると、超絶美少年でびっくりした。

「刃です。」と男の子が言ったので、嘘だ。と思い、「き、昨日のき、」というと「キスですか。嫌じゃ…なかったです。」と顔を赤らめて言った。

「一緒に登校しましょう。道は一緒です。」

僕たちは横に並び歩いていた。

「そういえば、あなたの名前は?」と聞いてきたので「岳。鮎川岳。」と答えた。

「岳。ですね。」

「刃。」僕は刃の手を握り、「僕、刃が好きだ。」と言った。刃は少し悲しそうな顔をしていた。でも、「俺も好きです。」と言った。

そこから俺らは付き合うことない特別な関係だった。

一緒にトランプをしたり、音楽を聴いたりカラオケに行ったり。時にはキスをした。それは一回だけだが。

楽しかった。でも楽しかった時間はあっという間で、死はすぐ近くにいた。

僕は癌で倒れ、入院することになった。

「なんで言ってくれなかったんですか!」

「刃が好きだったから。」

「だとしても!もっと色んなことしたかったです…!」

刃はそう言い泣いた。

僕の体の力は尽きた。でも、最後にどうしても行きたかった場所があった。僕は尽きたはずの力を出し、泣いている刃を連れて「行こう。」と言ってそこに向かった。

看護師さんに追われながらも頑張って走った。

そして着いた。夕日の一番見える場所に。

「綺麗だな。」

「…ダメですよ…こんなに走っちゃ!」

「もう死ぬんだ。」

「そんなこと言わないでください!」

「…君を愛せてよかったよ。好きになれてよかった。刃。」

僕はそう言い、息を引き取った。

「岳?岳!…なんで、なんで俺はいつもこうなんだ…。」

刃は「これは毒です…。一度飲んで死のうとしたけど、無理だった。不老不死だから。でも。人生で一生愛した人だ。男の人を愛したのは初めてなのに。神様、どうか私を死なせてください。」刃はそういい、毒を飲み俺にキスをした。

〈本当のキス〉を。そして自分の腹にナイフを刺し、死んでしまった。


ここで幕は閉じた。

暗転したステージで俺は刃に囁いた。

「刃、キスした?」

「…リアリティ。…ごめん!当たったの!」

「当たっちゃっただけ?」

「そう。ごめん!」俺は必死に謝ったが、本当はただキスをしただけだった。当たったのではなく意図的に。

ステージを降り、みんなを見るとみんな泣いていた。

有紗は「大成功ね!」とニコニコしていた。

下校時、有紗は文化祭のことでやらないといけないことがあるそうで、今日も帰れないと泣きそうになっていた。

俺は岳と二人で帰った。

今日は歩きで。

「ごめんね。今日はキスしちゃって。」

「ううん。わざとじゃないんだね。」

「うん!」

この後もずっと俺は謝っていた。



(有紗編)

文化祭一日目。

私はお化け屋敷の最後のありがとうございましたを言う担当だった。

みんなギャーギャー騒いでいるなか、一人だけギャーギャー言わない人がいた。

誰だろうと思いながらのありがとうございましたをいう準備をしていたら和哉が出てきた。

「和哉じゃん!」

「有紗か。それ貞子?」

「うん、ていうか驚かなさすぎじゃない?びっくりしたんだけど。」

「怖いの得意だから。」

「なんで来たの?」

「有紗のクラスがやってるって聞いて。まあ、ファイトな。」

と言って去っていった。

数分後、岳くんと刃くんが出てきた。

これは出てくる前に気づいた。

刃くんの叫び声が響いていたからだ。

「ありがとうございました。」

「お、有紗。お疲れ様。刃、すごいビビってたよ。」

「うん聞こえてた。笑。」

「え、まじ!?そんな大きかった?声。」

「うん。めちゃくちゃね。確か二人とも午後の担当だよね。刃くんのその声量だったら、その声だけで驚かせそうだけど。」

「確かに。笑。」

「ちょっと二人とも!笑。」

その後、私はお化け屋敷に行ったが、刃くんの「わ!!」で驚いてしまいすぐにゴールした。

メイドカフェに行ったりして堪能していたら和哉が友達とめちゃくちゃ楽しそうにしているのを見た。

あんな和哉を初めて見た私は友達といるのについ笑ってしまった。

「どうした?有紗。」

「いや、ちょっとね。笑。」

「えー?笑。」

放課後。

私は文化祭のことで残らなきゃいけなかった。

今日は岳くんと帰れないと泣きそうになっていると、和哉が「よ。」といい生徒会室に入ってきた。

「何勝手に入ってるの?っていうかどうしてこんな時間まで?」

「なんか帰ってもすることねぇしって思って体育館の床に寝っ転がってた。広いなって。そして帰ろうとしたら生徒会室電気ついてて。」

「なるほどね。」

「何してんの?」と和哉が私の席に来て覗いてきた。

「ほら、あと十ヶ月で卒業じゃん。だから早めに学校の冊子作んなきゃでさ。今日は文化祭一日目のことをまとめてる。」

「生徒会長は忙しいですねー。」和哉は岳くんの席に座り寝ていた。

一時間後。

「和哉、和哉!!」私はいつまで経っても起きない和哉の頭を叩いた。

「暴力ゴリラ。」

「はぁ!?和哉が起きないのが悪いんでしょ!終わったから、もう帰るよ!」

「お前母ちゃんかよ。」

「いいから。立って!」私は無理矢理和哉を立たせた。

「面倒くさい帰ってもすることない!」

「駄々こねないの!三歳児か。」

「はぁ?お前に言われたくはないねー。」

「なんなのよそれ!ほら帰るよ!」

数十分この会話を続けていたが、無理矢理引き摺り出した。

「はぁ。歩きたくねぇ。」

「じゃあ電車にする?」

「…そうするわ。夜だし暗いし。危ないし。お前の身の危険を考えたら電車のほうがいいだろ。」

「和哉、そんなこと言うんだ。」

「妹みてぇな存在だからな。お前は。」と頭をポンポンしてきた。

「お姉ちゃんじゃないの?」

「それはない。」

「えぇー。」

「今日からお兄ちゃんって呼べよな。」

「やだよ。」

久しぶりに和哉と帰った。

私は彼氏ができて、和哉には友達がいて。

中学以来だ。一緒に帰るのは。


翌日。

いよいよ劇が始まる。

遅刻ギリギリで来た岳くんと刃くんは走って登校してきた。

「おはよう!岳くん!刃くん!」

「おはよう!岳、セリフ完璧だよ!」

「まじ!」

「うん!バッチリ!」

「でも私たちが発表するのが最後だから、それまでセリフ読んだりしてて!」

岳くんはセリフを唱えるように読んでいた。

みんなの劇はとても素晴らしい劇ばかりだった。

でも、きっと私たちの劇が一番だ。

「いよいよよ。用意できてる?」

「大丈夫。セリフは覚えた。」

「俺も。しっかりカツラ被れた。」

「よし。頑張ろう!」

私たちは円陣を組んだ。「行くぞー!!おー!!!」

「「「おー!!!」」」


劇は素晴らしいものになった。

私は思わず泣いてしまった。

想像通りの劇になり、私は満足だった。


今日も残って書かなければいけなかったので、一緒に帰れなかった。

「また残るの?」と和哉が聞いてきたので、「そう。今日で終わり。」と答えたら「今日も一緒に帰る。」と岳くんの席に座った。

今日は少し早く終わって、三十分ほどで終わった。

「お、今日は早えんだな。」

「うん、少し書いて終わり。じゃあ行こう。」

「おう。」

帰り道、少し日が暮れて空にはたくさんの色が広がっていた。それが綺麗でずっと上を見ながら歩いていた。

「綺麗だな。」

「…ね。確か中学の頃、最後に一緒に帰った日もこんな感じだったよね。綺麗だった。」

「俺も覚えてる。…有紗。」と和哉が立ち止まった。私も立ち止まり、振り返った時、和哉がハグをしてきた。

「ちょっと…どうしたの?」

「…俺気づいたんだ。俺はお前が…」

「…ん?」

「お前が好きなんだよ。」

「…え?」和哉は私を突き放して、「悪い。今日はお先。」と言って走って行った。

私は「えぇー!!!!!!!」と叫んでしまった。

和哉が、私のことを!?!?



第三者)

岳、鈍感すぎるー!!!

刃のアプローチに気づかないの逆に凄い。

でも刃の家族の話は、悲しかった。

この二人もどうなるの?って感じだけど、最後。あれなに!?

和哉、告っちゃったよ!有紗に!!

どうなるんだこれからー!!


次回!

夏休み!

岳と有紗お泊まりデート!

刃と和哉、意気投合!?

刃の猛アプローチ

和哉と有紗はどうなる!


ぜひ見てください!

あと二、三話…(泣)

ここから物語がどう進むのか!

お楽しみに!

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