放任主義の過保護なお母さん
~ジャグラード知識~
リリス━本名、リリス·ペチャラード·パイオニラ·イクロス。伝説の吸血鬼。吸血鬼の始祖。二つ名は多数あるが、中央大陸では、「滅国の魔女」、「女死神」が有名。
吸血鬼の弱点の、太陽の光をあびても問題ない。
更に、スキル不死を筆頭に、超再生、魔導の頂きなど様々なスキルを持っている。
いろいろ伝説があるが、五百年前、ある事件をきっかけに中央大陸に大きな被害を出した。
犠牲者者は三億人を超え、三つの国がなくなった。この時のカルマ値は歴代最高で、今も更新している。
滅びた国があったところに、S級ダンジョンを作り、今は西大陸に住んでいる。
中央大陸のダンジョン外魔物の約6割は、このS級ダンジョンから生まれてる。
SS級魔物に認定している国も複数ある。
(リリス視点)
私のダンジョンを、早く誰か攻略してほしいわ…。わざわざ、中央大陸に毎月来ないといけないじゃない。なんで作った本人は攻略出来ないのよ…。
そんな事を考えながら、自分が作ったS級ダンジョンから出てきた、S級魔物ダークデーモンを殺した。
ダンジョン周辺に出て来てたB級魔物以上を討伐したので、今回はザフィード皇国を見てから転移で帰ろうかな。
ザフィード皇国に魔物を殺しながら向かっていると、人の気配がしたので、冒険者のパーティーだろうと思い、今の冒険者のレベルを測ろうと近づいた。
冒険者達も私に気付いたようだ。目視できる位置にきたので、ステータスを鑑定した。
全員、くそ弱っ!…。でもウドって子はいいわ。と考えていると、一人の屑が、近づいて来た。
「おいおい、なんでこんなところで売りをしてるんだ?しょうがないな。俺が買ってやろう。銅貨二枚でな。」
屑が言うと、ウド以外が笑った。ウドはそわそわしていた。
「リーダー、銅貨二枚は高いですよ。胸が小さいじゃないですか。一枚で良いでしょ。」
滓が言い、屑は「そうだな。」と笑いながら、私を触ろうとした。
あぁ、そうだ。ゴミ掃除って良い事よね。誰よこんなところに、屑と滓を捨てたの。
ゴミ掃除と言ったら、風魔法よね。と考えて、屑の首を切った。
すると、滓達はポカーンとしていた。ウドがいない事に気付いた。ウドはこけていた。
少し怒ったからって、五人くらいなら全て把握しなきゃ。と反省した。
それにしても、あの子勘が鋭いのかしら、だったら将来有望ね。それに少しかわいいかも。なんであの子、ゴミの集まりにいるのかしら…。そうだ。あの子を吸血鬼にして、ダンジョンを攻略してもらおう。百年あればいけるかな?あの子なら、なれる気がするし。
そんな事を考えながら、残り三つを掃除した。
掃除が終わるとウドを吸血した。
とても美味しかった。
って吸いすぎた。慌てて、スキルの吸血契約を使った。
あの子見てると、貧血になるわ…。さすがに、変化中は吸血できないし…。仕方ない、滓の血液を使おう。私って頭良い。ゴミだったものを活用するんだから。
資源活用していると、ウドは吸血鬼になった。
かわいい顔で私を見てるわ…。また貧血になっちゃいそう。鑑定しなきゃ。
更に弱くなっちゃった。ちょっと吸いすぎちゃったからな。でも、あの子なら大丈夫よね。まぁ、ダンジョン攻略が少し伸びるくらいになるくらいかな?でも、魔力がないのが心配だわ。と考えてると、フィロスから連絡が来た。
『マム、ミカエル様がいらっしゃって、伝言を承りました。』
『なんて言ってたの?』
『ベンザラード様が、さっさと神界に来い。ペチャ…ここから先は、私の口からはとても言えません。』
カチンときた。
フィロス…。それはほとんど言ってるよ。悪気はないんだろうけど…。
『「チッ」フィロス、ミカエルと繋いで。』
フィロスは返事をして、ミカエルと繋いでもらった。
『ミカエル、用があるならてめえが出向け!お前に指図される「謂われはない。ハズレか」みが!!って、ベンに伝えて。』
いけない。声に出ちゃった。
いきなり神様と話す変人って思われちゃう。多分、大丈夫だ。
『暫くお待ちください。…。ベンザラード様がいらっしゃるようです。ただ、中央大陸は顕現すると大騒ぎになるから、リリス様の別荘で頼む。だそうです。』
『ミカエル、だいぶオブラートに包んだわね。まぁいいわ。直ぐに行ってやるから、玄関で待ってろ。って伝えておいて。』
せっかくいい気分だったのに。ベンのせいで台無しじゃない。
あっ…。契約解除しないといけなかったわ。束縛するのは嫌いだし。されるのは、もっと嫌いだけどね。
契約解除して、ゴミを次元庫にいれて私の別荘に転移した。
転移すると、ベンが待っていた。
『遅いじゃないか。ペチャパイ。お前が言ってた通り、俺は待っていたぞ』
そっちがその気なら…。
暫く、不毛な言い争いをしながら別荘に入った。
別荘に入ってからも言い争いは続いたが、なんか面倒臭くなってきたので、「で、用件は?」と聞いた。
『…。そうだな…。用件は、中央大陸で吸血鬼を増やしただろう?』
「それがなにか?私のダンジョンを誰かが攻略できる気がしないから、それをしてもらおうと思って変えたわ。いけなかった?それにあまりあの子に関わる気はないわ」
『関わる気がないのは、とても良い。変えるのも、まぁ良いだろう。だが場所がいけなかった。お前、中央大陸の事なんか興味ないから知らないだろう?、中央大陸は、お前のせいで吸血鬼は生きにくいんだぞ。五百年前の事でだ』
「なんで?向こうが悪いんじゃない。やられたら億返しが基本でしょ?」
『違うだろ!』
「私はそうなの。それなのに、私のカルマ値が増えるのは納得できないわ」
『お前、カルマ値なんて気にしてたのか?してないだろう』
失礼な。ちょっとくらいは気にしてるわよ。ちょっとくらいは。
『目は口よりものをいうな。髪の毛一本くらいには気にしてるのか?』
「バカじゃない。髪は女の命よ。カルマ値なんかと比べないで。だから、あなたは女神達に…」
続きを言おうとすると、また止められた。
『すまん。俺が脱線させたな。それでだ。五百年前の事で、吸血鬼が危険視されてる。魔物扱いする国もある。それに、人体実験している国もある』
「実験してる国ってどこなの?」
『ペンティアム帝国だが…。まぁ、待て。その吸血鬼は罪を重ねて捕まった。詳細は省くがカルマ値も万超えだった。しっかり裁かれたうえでのその扱いだ。同情する余地はない。俺と友達を本気で戦わせないでくれ。頼む』
ベンが珍しく頭を下げた。
ベンがそう言うなら、そうなんでしょう。罪を犯したら償わないといけないわね。私ですら償ってるんだし。
「ごめんなさい。今度は私が脱線したわ」
『あぁ、分かってくれたなら良い。もし、その子がだ。なんの罪もなく、殺されたり、人体実験されたらどうする?』
「その質問の意味ってあるの?」
なんで当たり前の事をきくんだろう?
『そうだよな…。ヤるよな…。お前は。しかも億倍返しで…』
分かってるなら、聞かないでほしい。
『だから呼んだんだ。中央大陸は、現在アンバランスな状態なんだ。お前がB級以上を倒してくれていてもだ。アンバランスな状態で何億人も殺されたらバランスが崩れて、人が住めなくなる恐れがあるから、ジャグラード様に頼まれてな。その対策で来た』
じじぃ案件か…。面倒臭い。
「それでどんな対策を考えてるの?」
『とりあえず、反論せず最後まで聞いてくれ。その後にお前の考えを聞く』
分かったと、返事を返して対策を最後まで話を聞いた。
聞いた対策は、大きく分けると三つあった。
ざっくり話すと、一つ目は、私がウドを引き取る。
二つ目は、私は引き取らないけど、ウドを中央大陸から出す。
三つ目は、じじぃが考えた。ウドを特典付き、記憶付きで転生させる事だった。
全て論外だった。まず、一つ目と二つ目は、私のダンジョンを攻略させる為に、吸血鬼にした事。なにより、今のウドの能力じゃ、中央大陸以外、生活するのが厳しいと思った。
強くなるまで、私が引き取れば良いじゃないか、と言われたが、必ず面倒臭い事態になるし、束縛するみたいで嫌だ。
三つ目なんて、論外過ぎて言葉にならない。
私は殺された事がないから、わからないが想像はできる。痛いだろう。苦しいだろう。悲しいだろう。辛いだろう。なんでこんな目にと怒りが湧いてくるだろう。あくまでも想像だから、実際はそれ以上かもしれない。それ以下かもしれない。それをこちらの都合で殺されるのだ。
しかも、殺そうと計画した相手が、創世神なのだ。なにを信じれば良いか分からなくなる。また都合が悪くなれば、殺されてしまうんじゃないか。とビクビクしながら生きていく事になる。
私だったら、原因とじじぃに復讐する。
「じじぃ、バカなんじゃないの?百年前の吸血鬼と同じじゃねぇか。ニホンだったか、トウキョウだったか、そんなところに毒されてねぇか?」
百年前の屑は、吸血鬼に変える為に何万人も殺していた。せっかく吸血鬼になったのに、少し能力が低いからといって、契約解除したあとに、半年間監禁していた。した後に、殺したり、殺させたりしていた。
屑は、不死で魔力だけはあったから、今も監禁して私の家の魔導具や魔具の動力源にしている。
私にかかればどんなゴミだって、資源に変える。やっぱり私って天才だ。
なんか、吸血ガチャだろ?リセマラだろ?って意味分からない事を言ってた。詳しく聞いたら、あぁ屑だなと思った。
考え方が似てる。やり直しが出来るゲームじゃないから。人生だから。
だが、屑から有用な事もいろいろ聞けた。アイテムボックスってものを天才は魔法で再現した。次元庫がそうだ。
そういうものをいろいろ作ったり、再現している。
『お前、話し方が汚くなってるぞ。清楚な女になるんじゃないのか?』
「あら、失礼。それでじじぃの事、あなたはどう考えてるの?」
『ジャグラード様の事は今は良いじゃないか。今はウドって子の事だ。お前はどうしたいんだ?これも嫌、あれも嫌じゃ通らないぞ。代案を出せ。』
「逃げたわね。…まぁいいわ。…そうね。色々考えがあるけど、私とあなたとの二人で話している事がナンセンスね。まずはあの子の考え、希望が大切でしょ?」
『っ!!…そうだな…。その子が当事者なんだ。お前と二人だけで決める事じゃないな。…っはぁ…。特権への慣れだな。当事者の意見なんて考えてなかった…。当たり前の事なのに…』
「自らの間違いを恥じて反省する事が出来る。他人の意見を素直に聞ける事が、あなたの数少ない長所よ。まぁ、特権を持ってもいいくらい、あなたは頑張ってるし、能力があるもの。特権だけ振りかざすゴミとは違うわ。いるでしょ?沢山。そんなゴミが」
『…。それじゃあ、ウドに意見を聞いてもらって良いか?』
「…。質問を聞かなかった振りをするのはよくないわ。そういう所も直した方がいいと思うわよ」
『お前が…っ、ふー。お前に言いたい事はいろいろあるが、また、言い争いになるからな』
「なによ。…まぁいいわ。あの子の事は任せておいて。連絡はどうするの?この別荘で待っててもいいわよ?」
『そんな暇はない。やることが多くてな。連絡は天使の誰かにしてくれればいい』
「あなた、いつも働いてるわね。少しくらい休んだらいいのに」
『そういう訳にはいかんさ。特権持ってるからな。それじゃあな。くれぐれも穏便にだぞ』
私が分かったわ。と言うと、本当に穏便にだぞ。と言って、ベンはいなくなった。
だから私は大きな特権なんか持ちたくないわ。あんなに忙しいのは嫌だし、ゴミにはなりたくないもの。
それから、別荘で血液を次元庫に入れてから、ザフィード皇国に転移した。もう、夜が明けていた。
皇都ザフィードに転移して、猫に変化して歩いていると、吸血鬼が捕まった。今、城の牢屋にいる。という話を聞いたので、小鳥に変化して城に向かった。
ウドより美味しそうな人は見なかった。やっぱりあの子は特別ね。
ウドのところに着くと、取り調べをされていた。
「なんでお前だけが、吸血された。おかしいだろう?」
「僕に聞かれても、分かりませんよ。僕は吸血鬼が襲われると思って、助けを呼びに皇都に戻ろうとしただけです。僕じゃ、上弦の狼のメンバーを止められないから…」
「吸血鬼に助けなんていらないだろう?なにを言ってんだ?」
「だから、吸血鬼って知らなかったんです。綺麗なお姉さんだと思ったって言ってるじゃないですか…」
えっ!?ウドって勘が鋭いわけじゃなかったのね。
それにしても、この気持ちはなんだろう?
これが母性愛かしら…?
他人に心配される事や、助けてもらえる事なんて、いつ以来…そもそも、そんな事あったかしら。
助けを呼びに行こうとしてたなんて、その考えはなかったわ。
どうしよう。超かわいい。また貧血に…。あの子を束縛したいわ。
でも、ダメね。まずは、愛し子の希望を聞かないとね。とりあえず、皇王のところに行って、私が話せるようにしないとね。
給血して、玉座の間まで飛んでいった。そこでは、大勢でウドの事を議論していた。
それを窓に止まって聞いていた。
ドルンは、ペンティアム王国に負けないように、人体実験をしよう。と言い、周りの一部(将軍達や辺境領の領主)が賛同して、それに対して、ザフィ侯爵は、人体実験するのに大金が必要だから、実験をしているペンティアム王国に、貸して研究を結果をもらおうと言い、周りの一部(領主の貴族達)が賛同し、それに対しては、宰相が、ザフィ領の隣がペンティアム王国だから、ペンティアム王国を優遇したいのは分かるが、ここは、国庫補填の為、オークションして売ろう。と言い、周りの一部(官僚貴族)が賛同していた。
大きく分ければ、自分達で実験しよう。ペンティアム王国に渡そう。オークション又は、直接国に売ろうの、実験、譲渡、売却この三つの意見だった。
一人の男が、罪がないのに人道的にマズイのでは。という意見があったが、ドルン派が、吸血鬼は人ではない。侯爵派は、吸血鬼の利用価値が分からないのか。宰相派は、あなたがその分の国庫を補填できるのか。と言われて、さっきまで言い争いをしていた派閥が、仲良く一人の意見が踏み潰した。
その後もどうするかを議論していた。
ベンが穏便にだぞ。と言っていたので、私は我慢しながら、暫く議論を聞いていた。
怒りの限界を超えようとした時、「まぁ、待て」と皇王が不快な話を止めた。
そういえば、皇王の意見、聞いてなかったな。皇王の意見を聞いてからにしよう。
「私は吸血鬼が欲しい。あの吸血鬼は私のコレクションにする。それに、吸血鬼に、犯罪奴隷等の罪人を吸血鬼にすれば、全部できるのではないか」
この意見に、大多数が賛同していた。
次は、ウドが罪人を吸血鬼にしたら、どれから優先するかの話をしていた。
ウドは吸血鬼を作ることはできないのに…
すごーい。こいつら私をこんなに怒らせる事ができるんだ。いつ以来だろう。そうだ。百年振りだ。
でも、穏便にしないとね。
「フフフっ、面白い話をしているわね。私も混ぜてくれるかしら」
私は変化を解いて、窓から飛び降り、玉座の間に入り、皇王に近づいていた。
皇王含めて、ポカーンとしていた。
初めに事態を認識したチビメガネが、「お前は誰だ!?衛兵はなにしている。早く不届き者を捕まえよ!!」と言うと、玉座の間に兵士?(弱すぎて兵士か定かではなかった)が入ってきて、私を取り囲んだ。
が、「これは、ドルン大将軍の失態ですぞ」とドルンに言った。ドルンは苦虫を噛み潰した顔をして、兵士らしき人達に指示を出していた。それを見て、近衛だったんだ。と更に、驚いた。
皇王等が、玉座の間を出ようとしていたので、結界魔法を使った。近衛兵が「扉が開きません」といいながら、扉に体当たりをしていた。
「まだ議論は終わってないでしょう?早く席にお着きになって」
「お前の仕業か!早くここから出せ。ドルン、近衛兵早くなんとかしろ!」と皇王が言ったので、「早く席に着けっ!!」と少し殺気を飛ばすと、周りの人、ドルンと、ドルン派閥の人、扉を体当たりしていた近衛兵の三人以外失神した。
「早く全員を起こしてくれないかしら。」
三人にお願いしたが、お前に指図される謂れはない。と断られた。
確かにそうだな。と思った。
「そう…。倒れてるだけならゴミね。私、ゴミ掃除って得意なのよ」と自慢したら急いで起こしてくれた。
皇王は、扉の前でビクビクしていたので、座りたくないのかしら?それなら、私が座りましょう。と言って、転移で移動して玉座に座った。
「とりあえず、自己紹介しましょうか。リリス…これが早いか。」
ステータスを見せると、皆驚き、不快な名前を言ったりしていた。皇王を含む何人かがまた、失神した。
話が進まないと思い、舌打ちすると、今度はお願いしなくても起こしてくれた。
「リリスさんと呼ばせてあげる。次、リリスさん以外で私を呼んだら…分かるよね?」
こいつらに名前を呼ばれるのも嫌だけど、不快な名前を呼ばれるのは、もっと嫌なので許してあげた。
私も譲歩したんだから、そっちもしてほしい。
(宰相)
「リリスさんは、なんの用で来られたんですか?」
「話を聞きに来たのよ。それでね。ステータスに載ってない事なんだけど、ウドって私の…」
言いかけて、そういえばと考えた。
ウドって私のなんだ?契約解除したから、眷族じゃないし、なんだろう。
(宰相)
「リリスさん…。どうしたんですか?…。ウドは、リリスさんの眷族なのでしょうか?」
暫く考えていると、恐る恐る宰相が質問してきた。
私が「眷族ではないわ。」と言うと、宰相を含めてほとんどの奴が安堵していた。
(侯爵派の一人)
「それじゃあ、関係ない奴は出てい…っかぇ…ああっーっ。痛いよ。━━ママーっ、助けてーっ。━━」
言った奴の左腕を風魔法で切り飛ばした。
うるさかったので、掃除しようとしたが、いいことを聞いたので、治癒魔法を飛ばして、血を止めてあげた。
「私の事は、リリスさん以外は呼ばないように言ったでしょう。それでね、関係なくないわ。ウドは私の息子なの。」
そう言った後、静かになった。
「それでね。私ってやられたら、億倍返しって決めてるの。五百年前もね、罪のない眷族の一人が人体実験されたうえに殺されたの。だから私も殺したんだ。ダンジョンは実験のつもりで作ったんだけどね。それは失敗だったわ。」
ダンジョンは、当時から西大陸でも作っていたが、その時は、自分の最大魔力を使って作ったら、どうなるんだろう。と考えて作ったけど、失敗だった。
(皇王)
「わ、私達は、まだなんにもしていない。む、息子なら引き取って、か、帰ってくれ」
大多数が賛同していた。
「安心して。基本億倍返しだけど、今回は法に則っるから。質問なんだけど、この国の法を司る人って、誰?出てきてくれる」
一人の男が、「私です。」と言って足を震わせながら、出てきた。名前はリードンだった。
罪がないのに、━━マズイのでは。の男だった。
「ありがとう。あなたに質問なんだけど、例えば、他国の王族を奴隷にしよう。と計画したらどうなるの?罪にはならないのかしら?」
すると、王族と吸血鬼を一緒にしないで下さい。と宰相が言った。
「私ったら、自己紹介が足りなかったわ。私、西大陸国の最高相談役なのよ。王みたいな者でしょ?」
(宰相)
「あそこは、議員制でしょ?そんなもの聞いた事がない。確か今は…フィロス大統領が王と同じ扱いになります。」
「あなた勉強不足ね。まぁ良いわ。フィロスは私の眷族だから。この場合はどうなるの?」
(宰相)
「…。フィロス大統領があなたの眷族って証拠はないでしょう?」
「そうね…。困ったわ。それじゃあ、西大陸国出身の人くらい一人くらいはいるでしょ?そこのあなた、探してきて」
一人の近衛兵を指差し、結界を解いた後、近衛兵を玉座の間から放り出した。
それから暫くすると、近衛兵が一人のドワーフを連れてきた。
すると、ドワーフは膝をつけて頭を下げた。
「ほ、本当に、リ、リリ、リ、リリス様。お顔を拝見させて頂きありがとうございます。儂は西大陸国では、中堅の職人でしたが、この国ではトップの鍛治屋をさせて…」
なんか長くなりそうだった。話を止めた。
ドルンが、あの名工が…。と驚いていた。
「後で話す時間を作るから、それくらいにして。ゴーロン、私の質問に簡潔に答えて。フィロスって私の眷族よね?」
「はい。フィロス大統領はリリス様の眷族です」
「これで良いかしら?まだ信じられない?」
「リリス様、もめ事ですかい?この国、終わったな…。それより、俺も出ていかないと、巻き込まれちまう」
「まだ大丈夫よ。まだね」
宰相を見ると、打ちひしがれていた。
それから、ゴーロンを帰して、リードンに同じ質問をした。
暫くの間、周りを見て、「罪になりません」と嘘を言った。こいつは、ウドを億分の一だが、一応は、一度庇ったので、
「んっ…。聞こえなかった。もう一度大きな声で言って。ちなみに、私は嘘が分かるから、返答は慎重にね」
私も一度、見逃した。
目を瞑りながら「つ、罪になります」と言ったので、「どんな罪かしら?」と聞いた。「いっ…一族しっ死刑です」
うわっ…、本当に!?罰、おっもっ…。
「た、例えば、本人以外、知らなかった場合は?」
「同じです。罪人の一族は死刑です。」
五百年前から変わってない…。まぁ、いいか。こうなったら仕方ないよね。
「どうしましょう。リードン以外死刑みたいよ?しかも、家族も道連れで。ゴーロンの言う通り、この国、終わったかもね」
ちょっと面白くて笑顔で言った。
二割が失神した。
最初はドルンが、膝をつきながら、頭を下げた。
「私は助けようとしたんだが、皇王には逆らえんのです。私には、まだ小さな女の子がいるんです。やっと産まれた子供なんです。助けて下さい。あなたも親なら分かるでしょ」
えーっ、こいつ、皇王売ったよ。将軍だろ!?大将軍だろ!?命乞いするなら、最初は貴族って思っていたけど、まさか、こいつとは…。
この国、私が潰す以前に終わってるよ。しかも、リードンの時に言ったよね。私、嘘が分かるって。
周りを見て、大多数、白い目で見てるよ。
いろいろ言いたかったけど、冷静に返答した。
「あなた、可愛いお子さんがいるのね。確かに子供は、親が必要な事が多いから、助けを求めるのはわかるわよ。皇王の命令だったら仕方ないわね。でもね。あなた、実験してペンティアム王国に負けないように、ザフィード皇国でも実験しよう。って言ってたじゃない。それに、リードンが反対したとき、吸血鬼は人じゃないから、人道的に接しなくても良いって言ったわよね。だから私も、私にとって普人族は人じゃないから、人道的に接しなくても良いって事にならないかしら?」
ドルンは初めの発言の時には、元気よく相づちを打っていたのに、後半になるにつれ、ドルン自身が打ちひしがれていた。
それを見ていた奴らは、私に命乞いを初めたが、冷静に返答し、何人かしたら、面倒臭くなった。
「あなた達みたいに、特権を持ってる奴が、自分の発言に責任をとらない事は嫌いだし、ゴミだと思うの」
皆、静かになり、家族の名前を言いながら謝っていた。
すると、皇王が震えながら発言した。
「そ、そんな事したら、かっ、神は許しにならないぞ」
皆が空元気で賛同していた。
困った時の神頼みね…。
神、一部以外仕事しないのに…。
そうね。私も神に頼もう。もう、こいつらと話すの疲れた。
「ちょっと、待ってて確認してあげるから…」
皆が、ポカーンとしていた。
『フィロス、その辺に天使いない?探してほしいんだけど』
『ミカエル様と話をしてたので、繋ぎますか?』
『ええっ、繋いで。…ミカエル聞こえる』
『はい』
『ミカエル、ちょっと困った事になったんだけど、どうしましょう』
これまでの経緯を教えた。
『私の判断では、不十分なので、待っててもらえますか?』
『わかったわ。早めによろしくね。』
暫く待っている間に、皇王、宰相、ドルン、ザフィ、近衛兵の一部、リードン以外を、私の事は口外しないように、ウドの牢屋を座敷牢に変えるようにお願いして帰した。
貴族達は重々しい足どりで帰っていった。
『お待たせしました。二十時にベンザラード様が、リリス様の別荘で話し合いたいそうです』
『分かったわ。それにしても、ベンばっかり働かせ過ぎじゃない?じじぃとかでもいいのよ』
『……』
『まぁ、いいわ。それじゃあね』
残り組に、ウドと話をする事と、それを邪魔しない事、明日の朝までに依り代を用意する事を伝え、リードンを連れて玉座の間を出て、ウドのところへ向かった。
私が出ると玉座の間で、言い争いが始まった。リードンはため息をついて、頭を振っていた。
移動中、どこにでもいそうな、女兵士に変化して、リードンといろんな事を話して、ウドのところへ行った。行くと兵士がいた。
「これはリードン様。お疲れ様です。どうしてこんなところに?それに、どうして吸血鬼なんかに座敷牢を使わせるんですか?」
イラっとしたが我慢した。
リードンは、私の方を一瞬見た後、安心していた。
「あぁ、これからは、こちらのリースが担当する事になった。これは勅令だ」
「はい。分かりました。こいつは誰なんですか?」
私は舌打ちするとリードンが兵士に怒った。
「お前は黙れ!お前に知らせるべき事なら言うし、言わないって事はお前が知らなくて良い事だ!!黙って職務を全うしろ!」
「はい。分かりました。申し訳ありません」
部下を庇ったのかな?
中に入ると、可哀想にウドは酷い尋問されたのだろう。大怪我をして、貧血になっていた。もう少しで飢餓状態になるところだった。
すぐに次元庫から血液の瓶を取り出し、ウドに渡した。美味しい、美味しい、と泣きながら飲んでいた。
ウドが必死で飲んでいる間、殺意が芽生えたが我慢した。
我慢したが兵士は失神し、リードンは震えていた。
ウドと話したかったが、まずは、休ませてあげたかったので、ベッドに運び、ウドが寝るのを確認して、怪我の酷いところは私が舐めてあげた。大方舐め終わったので座敷牢を出た。回復魔法でも良かったのに…
良いじゃない。結果は同じなんだから…
出た後、リードンとフィロスに中央大陸に関しての事を聞いた。
三時間くらい話した後、ウドも十分休んだろうと思い、ウドのところへ向かった。
「こんにちは。ウド君、私はリース。今日から君の担当になった。で、気分はどうかな?」
「はい。さっきまでは、喉の渇きが凄くて、歯も伸びるし、いったい僕は何なんでしょう?吸血鬼になった事は分かるんですけど、吸血鬼の事は分からなくて。それで…」
「一度に言わなくてもいいわ。私は吸血鬼の事は分かるからね。それで、まず、怪我しているところを舐めて見て、怪我が治るから。酷かったところは、私が治したから」
すると、ウドは恐る恐る舐めた。舐めると怪我が治って驚いて、怪我したところの治療が終わった。
治療が終わった後、ウドといろんな話をした。
初めウドは、自分が飲んだのが、血液だと知り、ショックを受けていた。
「吸血鬼にとっては普通の事。エルフにとってお肉は食べ物じゃないけど、あなたは食べるでしょ。他の人族にとって血液は飲み物じゃないけど、吸血鬼にとっては飲み物なのよ。いきなりは難しいと思うけど、少しずつ慣れていきましょうね。」
「分かりました。ちょっと抵抗感がありますが、慣れていきます」
それから、吸血鬼の事、ウドのこれまでの話、これからどうしたいかの話をして、ベンとの約束の時間が迫っていたので、瓶を五本置いて座敷牢を出た。
残念ながら、私と一緒に住めなさそうだった。
中央大陸で生活したい。もう十四歳だから自立したい。と言っていた。
まだ、あなたは0歳よ。と言ったら、顔を赤くして、十四です。と怒らせてしまった。反抗期かしら。それも可愛かった。
皇王達とのやりとりで疲れていたが、ウドと話して回復した。もう少し話したかった。
少しくらい遅れてもいいかな。と思ったが、約束は守る主義なので、泣く泣くウドとの話を終わらせた。
座敷牢を出ると、リードンが待っていた。
「どうしたの?見送り?」
「それもありますが、依り代の相談なんですけど…依り代って何なんでしょう?教会の者に聞いたのですが、分からなくて…」
えっ…。依り代くらい管理しろよ。教会って神の教えを説くことじゃないの?声を聞かないと分からないんじゃ…。
「教会って、あいつら…神の声を定期的に聞いてないの?それで、どうやって、あなた達に神の教えを説くの?」
「えっ…あっ、えっ?リリスさん。神は本当にいるんですか?」
「あなた達が助けを頼もうとしたんでしょ。いもしない相手に助けを求めていたの?意味が分からないんだけど。A級魔物以上の素材を人型にすれば依り代になるわ。出来ればS級が良いんだけど…」
「え、S級魔物ですか?そんな素材ありません。A級のレッサーデーモンの素材でも良いですか?」
「はーっ!?レッサーデーモンじゃ、五秒くらいしか顕現出来ないわよ。五秒で大丈夫?無理矢理、頭に情報を伝えるから、半分以上は死んじゃうわよ。そのなかに皇王いるけど…大丈夫?」
なんで、私がこいつらの心配しないといけないんだろう?
「それは困ります。どうしましょう?」
「知らないわよ。もう時間だから帰るわよ。ベン…武神ベンザラード待たせてるから、私はもういくわ。話し合って決めなさい」
私の別荘へ転移した。その際に、武神のべ、ベンザラード様…と呟いていた。
また、遅いと文句を言われたが、返すのも面倒臭くて、素直に謝ると、ベンが驚いて、お前大丈夫か?と心配された。
喧嘩売ってるのと問い詰めたかったが、面倒臭くて私の別荘に入って、話し合いを始めた。
『ミカエルから大体の事は聞いたが、お前はどうしたい?』
「正直どうでもいいわ。愛し子が無事なら」
『どうしたんだ?だいぶ疲れているな。お前なら、皆殺しだ。と言うと思っていたんだが…』
「もう私は早く終わらせたいの。どうせあいつら殺すなって説得しに来たんでしょう?説得されてあげる。その代わり、ウドの事よ。条件は三つ。一つ目は、ウドが安全に暮らせるところを用意する。二つ目は、ウドのカルマ値を下げてあげる。三つ目は、ウドを立派な吸血鬼にさせる。その際に、あなた達にあまり干渉してほしくない。例えば、ウドを使って、私をどうにかしたい。させたい。なんて考えないで。その意図が見えたら、私、この世界壊してしまうかも…。とりあえず、原因は滅ぼすから。それがじじぃでもね。出来ればあなたはこっちに付いてもらいたいわ。友達なんでしょう?」
『わ、分かった。干渉しないようにするし、しないようにさせる。そんなに、ウドって子は良い子だったのか?』
ウドの良いところを話した。
暫く話すと、ベンが、分かった。もういいから。と言われた。まだ、ウドの良いところの半分も言えてないのに…。
『それで条件だが、一つ目に心当たりがあるか?』
「そうね。ブライト王国が良いわ。そこには、フィロスの元眷族がいるみたいなの。なんか、田舎暮らしをしたいからって、西大陸国から出たみたい。フィロスが言っていたわ」
『そうか。それなら条件に入れなくても良かったんじゃないか?なにか隠しているな。吐け』
「チッ、…それでも吸血鬼の差別があるみたいなの。だから、あなたがどうにかして」
『そんな事出来るかっ!差別なんてなくならん。お前だって分かっているだろう。』
「なにも、差別を無くせ、って言っている訳じゃないの。ただ、害意を持って接して欲しくないの。その土壌作りをして、って言っているの。出来るだけ早くね。私も手伝うから」
『分かった。まぁ、それくらいならやろう』
「どのくらいで出来そう?」
『そうだな。最低限なら半月くらいで出来るだろう。俺もこの事だけに時間をかけれん』
「良かったわ。もし見かけたら、それが国王でも殺すから、頑張ってね」
『ちょっと待て。どのくらいの害意で殺すんだ?無視や悪口くらいで殺されたら、滅びてしまうだろう』
「そうね。暴行、詐欺、窃盗くらいだったらかな?これくらいならヤっても良いでしょ?」
『分かった。それでいいだろう。ただ、殺す前に報告をくれ』
「えぇ。分かったわ。それで二つ目はどう?」
『カルマ値は、うーん。難しいな。この世界の根幹に関わる部分なんだ。それを操作する事は難しい。理由を聞くか?』
「なによそれ。そんなの興味ないわ。出来ないか…。あの子、カルマ値が高くなった事が、魔力がなくなるよりもショックだったみたいなの。なんで吸血鬼にしただけで、あんなにカルマ値が上がったの?」
『お前の眷族になったからだ。お前は西大陸以外の大陸で恨まれているからな』
「そうなの…。それは悪い事をしたわね」
『そうか。お前も罪の意識があったか。これに懲りて、あんまり騒動を起こすな。そうすれば、他の大陸でも…』
「なに言ってんの?ちゃんと起きてる?私が悪いと思っているのは、ウドに対してだけよ。それ以外は微塵も思ってないわ」
『そうだよな…。お前に罪の意識なんてないよな…。』
「そうよ。そもそも、向こうから仕掛けてきたからやり返しただけじゃない。そこに罪の意識なんて感じないわ。だいたい、なんで私が…」
『分かった。分かったから落ち着け。それでカルマ値だが、お前の言う通り、ウドが良い子なら、そのうち下がるだろう。いくつだったんだ』
「確か、百超えたって落ち込んでいたわ。犯罪者は三百以上らしいから、三百はいってないんじゃない?前は一桁らしいんだけど。」
『ウドって子は凄いな。お前の眷族になって、三百超えないんだな。前は一桁か…本当に良い子なんだな』
「そうなのよ。ウドわね…って、ちょっと待って。それじゃあ、私は世界一悪い女みたいじゃない」
『女じゃなくて人だがな。…って物を投げるな。…この世界ではそうなんだよ。…そうか一桁か…』
「なんか嬉しそうね。そんなに凄いの?」
『そうだな。一桁は、世界中どこにでもいるんだが、お前の話が本当なら、中央大陸で孤児の冒険者なんだろう?それで一桁だから凄いんだ。お前はカルマ値なんて、と思っているかもしれないがな。俺も会ってみたいな』
「そう。それなら良かったわ。三つ目の条件なんだけど、ウドに戦い方をあなたから教えてもらおうと思ってたの。ほら、私って、武術はダメでしょ。魔法や魔導なら得意なんだけど、あの子は魔力ないから…。仕方なくお願いするわ。ありがたく思いなさい」
『待て、ちょっと待て…。いろいろとツッコミたいが、お前、干渉するなって言ったじゃないか。』
「私は、あまり、って言ったのよ。私が許可するなら良いのよ。というか、あなた以外は干渉させたくない。あなただから、あの子の事を信じて任せるの。」
『分かった。乗せられていてやるよ。だが、教えられるのは、まだ、先の話だな。ステータスが低いのに、俺が訓練すると死んでしまう』
「それでいいわ。それまで、こっちでやっとくから」
とりあえず、先約だけはとっておかないとね。
私のダンジョンを攻略する事になった時、困るからね。
さすがに、私が用意できる人だけだと、武術だけで、私のダンジョンは攻略出来ないから。
そらから、ザフィード皇国の事を話した。話した後、ベンザラードは帰っていった。
とりあえず、条件付きで皇国の奴らは生かして、依り代は私が用意する事になった。
それから、私はザフィード皇国の城に転移し、その辺にいた貴族を捕まえて、皇王のいる場所まで連れていってもらった。
皇王のところへ行くと、話し合いをしていた。
依り代の事や、私がベンと知り合いということに関して、話していた。
(リードン)
「依り代の素材は、レッサーデーモン以上はなさそうです。どうされますか?」
(皇王)
「私は出んからな。死ぬのが確実なのに出れん。これでも皇王だからな。ドルン、お前が出ろ。王命だ。」
(ドルン)
「皇王が、おっしゃったんだから、あなたが出ないといけないでしょう。あの死神も、自分の発言に責任持たないと殺されてしまいますよ。私が出るならゾフィ侯爵と、宰相も出ないといけないでしょう。」
すると、宰相とゾフィ侯爵も、出たくない。私が死ぬ事はこの国の損失だ。と言った後、私の代わりにお前が出ろ。とも言っていた。
すると、他の貴族達も、出たくない。私はそんな事頼んでいない。と言っていた。
(リードン)
「それでは、どうされますか?明日の朝に、リリスさんが来られますよ。誰も参加されないと、この国は終わりですよ。こちらの要望を聞いた形になったのに。」
リードンがそう言うと、誰かが、お前が出ろ。と言うと、皆から言われていた。
「…私は出ます。王命であれば…。ただ宰相、ゾフィ様、ドルン様は出ないと不味いと思います。出来れば、皇王様も出てほしいですが。…私の見たところ、本当にリリスさんは、私達の事を虫けら同然にしか見ていません」
やっぱり、リードンはなかなか良いわね。
依り代は、タダで貸してあげるつもりだったけど…。
「そんなふうには見てないわ。そうね。依り代は条件付きで、私が用意してあげる。赤龍の素材を貸してあげるから。これがあれば、全員参加できるでしょ」
次元庫から素材を出した。
(ゾフィ侯爵)
「レ、レッドドラゴンか?本物か?」
「違うわよ。レッドドラゴンじゃなくて赤龍。レッドドラゴンだとA級じゃない。これはS級上位の赤龍」
(宰相)
「え、S級上位…。そんなものがいるのか…。確かに、素材自体になんとも言えない迫力がある。西大陸はやはり凄いな。」
他の貴族も、迫力が━━。とか、西大陸は━━。と驚いていた。
いや、私のダンジョン出身だけど…。まあ、いいか。
(皇王)
「私も初代皇王と同じで、神に会える。私は伝説になれるぞ」
皇王が喜ぶと、他の貴族も喜んでいた。
えっ…。大丈夫か…。ツッコミたい事が結構あるんだけど…。
まず、私が出した物を簡単に信じていいのか?確かに迫力はあるけど。
それに、私は条件付きでって言ったのに、もう自分達は、神に会えると思っているし…。他にもあるが、あなた達が思う伝説にはなれません。
(リードン)
「条件ってなんでしょう?そんな凄い物を貸してもらう条件はなんでしょう?」
他のものは静かになり、私の発言を待っていた。
やはり、リードンだけは冷静だな。
「そうね。リードン、あなたが欲しいの。あなたには、なんの罪もないわ。だから、リードンを私にくれない?」
「リードンは、大事な家臣だからな」
そうか、さすがにそこまでバカじゃないか…。「そう。残念ね」と諦めた。
「だが、こちらの命を助けると約束するなら、諦めて、リードンを渡そう」
他のものは、リードンに、頑張れよ。とか、皇王様、さすがです。とか言っていた。陰では、あいつ、ムカついていたから、清々する。とも言っていた。
リードンを見ると締観していた。
あーっ…。大事な家臣なら売るなよ。というか、多分この国からリードンいなくなったら、大変だよ。
それ分かっていると思っていたけど、バカだったみたいだ。
「ありがとう。それじゃあ依り代はあげるから、ベンザラードとの邂逅を楽しみにしておいて。リードン行くわよ」
リードンを連れて、出ていった。
暫くすると、リードンが恐る恐る、「私はこれからどうなるのでしょう?」と聞いてきたので、これから、リードンにやってもらう事を話して、一人で転移した。
リードンは安心していた。吸血鬼にされるんじゃないかと、心配していたそうだ。多分、リードンはなれないし、そこまで、リードンを気に入った訳でもない。
次の日、玉座の間に行くと、皆、笑顔で私を出迎えた。
あれ…?私達って敵対してたよね。
一言、二言喋った後に、皇王が、ベンザラード様を呼んでもらおう。と言ったので、依り代を出して、ベンを呼んだ。
ベンを呼ぶと、皆、平伏して、奇跡だ。とかなんとか、言って感動していた。
ベンが、静まれ。と言うと静かになった。
『それでは、此度の裁定を下す。リリスを甲、私、リリス、リードン以外、この場にいる者を乙とする。一つ、甲乙共に、自衛以外で直接的、間接的に害してはならない』
皆、うるさくなった。お礼を言っていた。
『静まれ。二つ、乙は、甲に毎月、一人二リットルの血液を提供する。その血液は城で保管する。その際、提供できる血液は、本人と今現在の親族の者に限る。それを二十年、又はこの場にいる者が存命する限り続く。』
また、うるさくなった。次は不満を言っていた。
『黙れ。次、騒いだら殺す』
あれーっ。言ってた事と違うな。
『三つ、血液は甲が月に一度、直接受け取りに、ザフィード皇国に来る。四つ、ウドを安全にブライト王国に連れていく。五つ、これらの項目を破ったら神罰を下す。以上だ。質問は受け付けるが、意味のある質問をしろ。神罰は私が出向き、魂を滅する。』
私はウドに謝って欲しがったけど、ウドがいらないと言っていたので、条件に入れなかった。
(皇王)
「どうして、こんな事になったんですか?私達を助けてくれるのではないのですか?」
『十分、助けているだろう。この国の法に従うなら、リードン以外お前達全員一族皆殺しだ。下手をしたら、この国の国民、全てを殺されていたんだぞ。それを血液提供と、ウドという子を無事にブライト王国へ連れていくだけだ。十分助けているだろう』
皇王は、そうですね。ありがとうございます。とお礼を言っていたが嘘だった。
私は嘘が分かる。と言っていたんだから、神も分かると思えないのか?
想像力が足りないんじゃない。王でしょ。最悪を想定しろよ。
(ドルン)
「保管した血液が盗まれたり、壊されたりした場合はどうなりますか?」
『その質問に意味はあるのか?そんなの、もう一度集めないとダメに決まっているだろう。そんな馬鹿な質問はするな』
ドルンは、捨てられた豚みたいに落ち込んでいた。
皇王よりは可愛げがある。まぁ、私は大きな豚は嫌いなんだけど。
(宰相)
「どうして、親族に限られているのでしょう?同じ血液ですから、親族に限る必要はないのではないですか?私はの一族は少なくて…」
『それは、国民に血液を負担させるって事か?』
「はい。そうです。同じ血液なら、別に良いと思うんですけど」
あーあっ、それを言ったら、お仕舞いよ。
『お前、宰相だろっ!貴族だろっ!なんで、お前達の失態を、国民が負担しないといけないんだ!!逆はありだが、それはありえん!お前、宰相辞めろよ。次いでに人も辞めろ。そしたら、親族に負担がかからんぞ』
(ゾフィ侯爵)
「なぜ、今現在のなんでしょうか?」
『お前も宰相と同じか…。適当な国民を養子にして、その者に負担させない為だ。また同じ事を言わせたいのか?』
ゾフィ侯爵が大丈夫です。と言った。
ほとんどの貴族が、宰相とゾフィ侯爵の質問の返答を残念がっていた。
『お前達全員、死んだら禊は終わるぞ?その方が良いように感じたんだが。…そうだ。俺もこの国の事を調べたんだ。確か、リードンは優秀だと聞いた。もう、お前達は死んで、次に繋げたらどうだ?まだ、皇太子は小さいから、リードンを摂政にして…』
「ちょっと、待って。リードンは私のものになったから、リードンは、ウドの教育係にするから、その案はダメね」
『なん…だと…。そんな馬鹿な事が…』
「あるのよ。こいつら、馬鹿だから。って事で私とリードンは出ていいかしら?ウドに会いに行くんだ。そこで、リードンを紹介して…」
『ちょっと待て。リードンは諦めてくれないか。そうしないと、近いうちに、神罰が下りそうなんだ。神罰するのは俺なんだ。俺がわざわざ潰しに来たくない。俺も暇じゃないんだ』
「うーん…。レンタルなら良いわよ。一月で貸し一つで」
『それはボリ過ぎだろ。年に一だ。それ以上だったら、今潰した方が早い』
「分かったわ。それで良いわ。頑張ってね」
話が終わったので部屋を出た。
ウドのところへ行ったら、筋トレをしていた。なんでも、下がったステータスを戻したいそうだ。
それから、いろんな事を喋った。楽しい時間は、すぐに過ぎていき、遅い時間になったので帰った。
次の日、私は約束通り、ドワーフのゴードンの鍛治屋に行き、長い時間、話をした。
ほとんどが、ゴードンの身の上話だったが、昨日の顛末を話すと、自分もブライト王国に行くと言っていた。
話が終わると、ウドのところへ行き、種族スキルの最低限の使い方と欠点を教えた。
やはり、魔力がないので、あまり上手く出来てなかった。
それを私が加護をあげて、なんとか形になってきた。
後は、練習次第なので、上手く出来るようになったら、また教えてあげようと思った。
それから、ブライト王国の土壌作りの為に動いた。
ブライト王国に行き、A級野良ダンジョンを一週間で攻略した。
攻略した後、街を造る手続きをする為に、王城へ行った。
王様や大臣達にお願いして、この街では吸血鬼に対して、罪を犯した時の罰則を厳しくしてもらう特別な街にしてもらった。
この時、ベンと一緒にお願いしたので、すぐに聞いてもらえた。街や法の細かいところはベンに任せた。
私は、フィロスの元眷族を探したが、見つからなかった。
元眷族は見つからなかったが、信頼できる者を少し見つけたので、街の上層部や私が作る商会を任せる事にした。
そして、ウドがブライト王国へ出発するときが来た。
始めの頃は、隠れて一緒に行動していた。
ウドは、その間の休憩時間に筋トレや、種族スキルの訓練をしていた。
ウドは頑張り屋さんなのだ。
一月ほどたった頃、フィロスから連絡が来た。
なんでも、北大陸にある国の連合国が、西大陸国に攻めて来る噂があるみたいだ。
ただの噂なので、さすがにそれで攻める訳にはいけないし、統治も西大陸国だけで、面倒臭いのに、北大陸までしたくない。
私は攻めて来た時に備えて西大陸国に帰った。
これでも義務は果たすのだ。
ウドに対して、出来る事はやったつもりだったので、約二年間くらいウドと会わずに生活していた。
私はウドに会いたかったが、私の立場、周りの人とその状況が許してくれなかった。
ベンから、リードンのレンタルが終わった。という報告を受け、情勢も安定したので、ゾフィード皇国へ行き、リードンを連れて、ウキウキしながらブライト王国へ転移した。
それから、ブライト王国に来るとガッカリした。
まず、私が作った商会に変な吸血鬼がいた。
フィロスの元眷族だったが殺した。
そいつは偽装して、ウドに成りすまして堕落した生活をして、しかも、ウドをこの街に入れないように、手を回していた。
ウドがこの街にいる。という前提で行動していたので、全てご破算だった。
ウドは、別の街で貧民以上の厳しい生活をしていた。それでも、ひた向きに頑張っていた。
やはり、ウドには私が必要だ。
私は、いろんな奴を掃除しようと思ったが、リードンに止められたので我慢した。
そらから、商会長としてウドに会い、安い賃金で濃き使う事になった。
その際、リードンから、これでも高い方ですし、特別扱いにする事の危険性は分かるでしょう。と説得されたので、こんな形になった。