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ご都合主義には裏がある  作者: おむすび公爵
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放任主義の過保護なお母さん


 ~ジャグラード知識~


 リリス━本名、リリス·ペチャラード·パイオニラ·イクロス。伝説の吸血鬼。吸血鬼の始祖。二つ名は多数あるが、中央大陸では、「滅国の魔女」、「女死神」が有名。


 吸血鬼の弱点の、太陽の光をあびても問題ない。

 更に、スキル不死を筆頭に、超再生、魔導の頂きなど様々なスキルを持っている。


 いろいろ伝説があるが、五百年前、ある事件をきっかけに中央大陸に大きな被害を出した。

 犠牲者者は三億人を超え、三つの国がなくなった。この時のカルマ値は歴代最高で、今も更新している。


 滅びた国があったところに、S級ダンジョンを作り、今は西大陸に住んでいる。


 中央大陸のダンジョン外魔物の約6割は、このS級ダンジョンから生まれてる。


 SS級魔物に認定している国も複数ある。



 (リリス視点)


 私のダンジョンを、早く誰か攻略してほしいわ…。わざわざ、中央大陸に毎月来ないといけないじゃない。なんで作った本人は攻略出来ないのよ…。


 そんな事を考えながら、自分が作ったS級ダンジョンから出てきた、S級魔物ダークデーモンを殺した。


 ダンジョン周辺に出て来てたB級魔物以上を討伐したので、今回はザフィード皇国を見てから転移で帰ろうかな。


 ザフィード皇国に魔物を殺しながら向かっていると、人の気配がしたので、冒険者のパーティーだろうと思い、今の冒険者のレベルを測ろうと近づいた。


 冒険者達も私に気付いたようだ。目視できる位置にきたので、ステータスを鑑定した。


 全員、くそ弱っ!…。でもウドって子はいいわ。と考えていると、一人の(クズ)が、近づいて来た。


「おいおい、なんでこんなところで売りをしてるんだ?しょうがないな。俺が買ってやろう。銅貨二枚でな。」

 屑が言うと、ウド以外が笑った。ウドはそわそわしていた。


「リーダー、銅貨二枚は高いですよ。胸が小さいじゃないですか。一枚で良いでしょ。」

 (カス)が言い、屑は「そうだな。」と笑いながら、私を触ろうとした。


 あぁ、そうだ。ゴミ掃除って良い事よね。誰よこんなところに、屑と滓を捨てたの。

 ゴミ掃除と言ったら、風魔法よね。と考えて、屑の首を切った。


 すると、滓達はポカーンとしていた。ウドがいない事に気付いた。ウドはこけていた。

 少し怒ったからって、五()くらいなら全て把握しなきゃ。と反省した。


 それにしても、あの子勘が鋭いのかしら、だったら将来有望ね。それに少しかわいいかも。なんであの子、ゴミの集まりにいるのかしら…。そうだ。あの子を吸血鬼にして、ダンジョンを攻略してもらおう。百年あればいけるかな?あの子なら、なれる気がするし。


 そんな事を考えながら、残り三つを掃除した。

 掃除が終わるとウドを吸血した。

 とても美味しかった。

 って吸いすぎた。慌てて、スキルの吸血契約を使った。


 あの子見てると、貧血になるわ…。さすがに、変化中は吸血できないし…。仕方ない、滓の血液を使おう。私って頭良い。ゴミだったものを活用するんだから。


 資源活用していると、ウドは吸血鬼になった。


 かわいい顔で私を見てるわ…。また貧血になっちゃいそう。鑑定しなきゃ。

 更に弱くなっちゃった。ちょっと吸いすぎちゃったからな。でも、あの子なら大丈夫よね。まぁ、ダンジョン攻略が少し伸びるくらいになるくらいかな?でも、魔力がないのが心配だわ。と考えてると、フィロスから連絡が来た。


『マム、ミカエル様がいらっしゃって、伝言を承りました。』


『なんて言ってたの?』


『ベンザラード様が、さっさと神界に来い。ペチャ…ここから先は、私の口からはとても言えません。』

 カチンときた。

 フィロス…。それはほとんど言ってるよ。悪気はないんだろうけど…。


『「チッ」フィロス、ミカエルと繋いで。』

 フィロスは返事をして、ミカエルと繋いでもらった。


『ミカエル、用があるならてめえが出向け!お前に指図される「謂われはない。ハズレか」みが!!って、ベンに伝えて。』

 いけない。声に出ちゃった。

 いきなり神様と話す変人って思われちゃう。多分、大丈夫だ。


『暫くお待ちください。…。ベンザラード様がいらっしゃるようです。ただ、中央大陸は顕現すると大騒ぎになるから、リリス様の別荘で頼む。だそうです。』


『ミカエル、だいぶオブラートに包んだわね。まぁいいわ。直ぐに行ってやるから、玄関で待ってろ。って伝えておいて。』


 せっかくいい気分だったのに。ベンのせいで台無しじゃない。

 あっ…。契約解除しないといけなかったわ。束縛するのは嫌いだし。されるのは、もっと嫌いだけどね。


 契約解除して、ゴミを次元庫にいれて私の別荘に転移した。


 転移すると、ベンが待っていた。

『遅いじゃないか。ペチャパイ。お前が言ってた通り、俺は待っていたぞ』

 そっちがその気なら…。

 暫く、不毛な言い争いをしながら別荘に入った。


 別荘に入ってからも言い争いは続いたが、なんか面倒臭くなってきたので、「で、用件は?」と聞いた。


『…。そうだな…。用件は、中央大陸で吸血鬼を増やしただろう?』


「それがなにか?私のダンジョンを誰かが攻略できる気がしないから、それをしてもらおうと思って変えたわ。いけなかった?それにあまりあの子に関わる気はないわ」


『関わる気がないのは、とても良い。変えるのも、まぁ良いだろう。だが場所がいけなかった。お前、中央大陸の事なんか興味ないから知らないだろう?、中央大陸は、お前のせいで吸血鬼は生きにくいんだぞ。五百年前の事でだ』


「なんで?向こうが悪いんじゃない。やられたら億返しが基本でしょ?」


『違うだろ!』


「私はそうなの。それなのに、私のカルマ値が増えるのは納得できないわ」


『お前、カルマ値なんて気にしてたのか?してないだろう』

 失礼な。ちょっとくらいは気にしてるわよ。ちょっとくらいは。

『目は口よりものをいうな。髪の毛一本くらいには気にしてるのか?』


「バカじゃない。髪は女の命よ。カルマ値なんかと比べないで。だから、あなたは女神達に…」

 続きを言おうとすると、また止められた。


『すまん。俺が脱線させたな。それでだ。五百年前の事で、吸血鬼が危険視されてる。魔物扱いする国もある。それに、人体実験している国もある』


「実験してる国ってどこなの?」


『ペンティアム帝国だが…。まぁ、待て。その吸血鬼は罪を重ねて捕まった。詳細は省くがカルマ値も万超えだった。しっかり裁かれたうえでのその扱いだ。同情する余地はない。俺と友達(お前)を本気で戦わせないでくれ。頼む』

 ベンが珍しく頭を下げた。


 ベンがそう言うなら、そうなんでしょう。罪を犯したら償わないといけないわね。私ですら償ってるんだし。


「ごめんなさい。今度は私が脱線したわ」


『あぁ、分かってくれたなら良い。もし、その子がだ。なんの罪もなく、殺されたり、人体実験されたらどうする?』


「その質問の意味ってあるの?」

 なんで当たり前の事をきくんだろう?


『そうだよな…。ヤるよな…。お前は。しかも億倍返しで…』

 分かってるなら、聞かないでほしい。


『だから呼んだんだ。中央大陸は、現在アンバランスな状態なんだ。お前がB級以上を倒してくれていてもだ。アンバランスな状態で何億人も殺されたらバランスが崩れて、人が住めなくなる恐れがあるから、ジャグラード(創世神)様に頼まれてな。その対策で来た』


 じじぃ案件か…。面倒臭い。


「それでどんな対策を考えてるの?」


『とりあえず、反論せず最後まで聞いてくれ。その後にお前の考えを聞く』

 分かったと、返事を返して対策を最後まで話を聞いた。


 聞いた対策は、大きく分けると三つあった。

 ざっくり話すと、一つ目は、私がウドを引き取る。

 二つ目は、私は引き取らないけど、ウドを中央大陸から出す。

 三つ目は、じじぃが考えた。ウドを特典付き、記憶付きで転生させる事だった。


 全て論外だった。まず、一つ目と二つ目は、私のダンジョンを攻略させる為に、吸血鬼にした事。なにより、今のウドの能力じゃ、中央大陸以外、生活するのが厳しいと思った。

 強くなるまで、私が引き取れば良いじゃないか、と言われたが、必ず面倒臭い事態になるし、束縛するみたいで嫌だ。


 三つ目なんて、論外過ぎて言葉にならない。

 私は殺された事がないから、わからないが想像はできる。痛いだろう。苦しいだろう。悲しいだろう。辛いだろう。なんでこんな目にと怒りが湧いてくるだろう。あくまでも想像だから、実際はそれ以上かもしれない。それ以下かもしれない。それをこちらの都合で殺されるのだ。

 しかも、殺そうと計画した相手が、創世神(じじぃ)なのだ。なにを信じれば良いか分からなくなる。また都合が悪くなれば、殺されてしまうんじゃないか。とビクビクしながら生きていく事になる。

 私だったら、原因()とじじぃに復讐する。


「じじぃ、バカなんじゃないの?百年前の吸血鬼()と同じじゃねぇか。ニホンだったか、トウキョウだったか、そんなところに毒されてねぇか?」


 百年前の屑は、吸血鬼に変える為に何万人も殺していた。せっかく吸血鬼になったのに、少し能力が低いからといって、契約解除したあとに、半年間監禁していた。した後に、殺したり、殺させたりしていた。


 屑は、不死で魔力だけはあったから、今も監禁して私の家の魔導具や魔具の動力源にしている。

 私にかかればどんなゴミだって、資源に変える。やっぱり私って天才だ。


 なんか、吸血ガチャだろ?リセマラだろ?って意味分からない事を言ってた。詳しく聞いたら、あぁ屑だなと思った。


 考え方が似てる。やり直しが出来るゲーム(遊び)じゃないから。人生だから。


 だが、屑から有用な事もいろいろ聞けた。アイテムボックスってものを天才()は魔法で再現した。次元庫がそうだ。

 そういうものをいろいろ作ったり、再現している。


『お前、話し方が汚くなってるぞ。清楚な女になるんじゃないのか?』


「あら、失礼。それでじじぃの事、あなたはどう考えてるの?」


『ジャグラード様の事は今は良いじゃないか。今はウドって子の事だ。お前はどうしたいんだ?これも嫌、あれも嫌じゃ通らないぞ。代案を出せ。』


「逃げたわね。…まぁいいわ。…そうね。色々考えがあるけど、私とあなたとの二人で話している事がナンセンスね。まずはあの子の考え、希望が大切でしょ?」


『っ!!…そうだな…。その子が当事者なんだ。お前と二人だけで決める事じゃないな。…っはぁ…。特権への慣れだな。当事者の意見なんて考えてなかった…。当たり前の事なのに…』


「自らの間違いを恥じて反省する事が出来る。他人の意見を素直に聞ける事が、あなたの数少ない長所よ。まぁ、特権を持ってもいいくらい、あなたは頑張ってるし、能力があるもの。特権だけ振りかざすゴミとは違うわ。いるでしょ?沢山。そんなゴミが」


『…。それじゃあ、ウドに意見を聞いてもらって良いか?』


「…。質問を聞かなかった振りをするのはよくないわ。そういう所も直した方がいいと思うわよ」


『お前が…っ、ふー。お前に言いたい事はいろいろあるが、また、言い争いになるからな』


「なによ。…まぁいいわ。あの子の事は任せておいて。連絡はどうするの?この別荘で待っててもいいわよ?」


『そんな暇はない。やることが多くてな。連絡は天使の誰かにしてくれればいい』


「あなた、いつも働いてるわね。少しくらい休んだらいいのに」


『そういう訳にはいかんさ。特権持ってるからな。それじゃあな。くれぐれも穏便にだぞ』


 私が分かったわ。と言うと、本当に穏便にだぞ。と言って、ベンはいなくなった。

 だから私は大きな特権なんか持ちたくないわ。あんなに忙しいのは嫌だし、ゴミにはなりたくないもの。


 それから、別荘で血液を次元庫に入れて(補給して)から、ザフィード皇国に転移した。もう、夜が明けていた。


 皇都ザフィードに転移して、猫に変化して歩いていると、吸血鬼が捕まった。今、城の牢屋にいる。という話を聞いたので、小鳥に変化して城に向かった。

 ウドより美味しそうな人は見なかった。やっぱりあの子は特別ね。


 ウド(あの子)のところに着くと、取り調べをされていた。


「なんでお前だけが、吸血された。おかしいだろう?」


「僕に聞かれても、分かりませんよ。僕は吸血鬼が襲われると思って、助けを呼びに皇都に戻ろうとしただけです。僕じゃ、上弦の狼のメンバーを止められないから…」


「吸血鬼に助けなんていらないだろう?なにを言ってんだ?」


「だから、吸血鬼って知らなかったんです。綺麗なお姉さんだと思ったって言ってるじゃないですか…」


 えっ!?ウドって勘が鋭いわけじゃなかったのね。

 それにしても、この気持ちはなんだろう?

 これが母性愛かしら…?

 他人に心配される事や、助けてもらえる事なんて、いつ以来…そもそも、そんな事あったかしら。

 助けを呼びに行こうとしてたなんて、その考えはなかったわ。


 どうしよう。超かわいい。また貧血に…。あの子を束縛したい(連れて帰りたい)わ。

 でも、ダメね。まずは、愛し子の希望を聞かないとね。とりあえず、皇王のところに行って、私が話せるようにしないとね。


 給血して、玉座の間(ぎょくざのま)まで飛んでいった。そこでは、大勢でウドの事を議論していた。

 それを窓に止まって聞いていた。


 ドルン(オーク)は、ペンティアム王国に負けないように、人体実験をしよう。と言い、周りの一部(将軍達や辺境領の領主)が賛同して、それに対して、ザフィ侯爵(ハゲ)は、人体実験するのに大金が必要だから、実験をしているペンティアム王国に、貸して研究を結果をもらおうと言い、周りの一部(領主の貴族達)が賛同し、それに対しては、宰相(ヒョロメガネ)が、ザフィ領の隣がペンティアム王国だから、ペンティアム王国を優遇したいのは分かるが、ここは、国庫補填の為、オークションして売ろう。と言い、周りの一部(官僚貴族)が賛同していた。


 大きく分ければ、自分達で実験しよう。ペンティアム王国に渡そう。オークション又は、直接国に売ろうの、実験、譲渡、売却この三つの意見だった。


 一人の男が、罪がないのに人道的にマズイのでは。という意見があったが、ドルン派が、吸血鬼は人ではない。侯爵派は、吸血鬼の利用価値が分からないのか。宰相派は、あなたがその分の国庫を補填できるのか。と言われて、さっきまで言い争いをしていた派閥が、仲良く一人の意見が踏み潰した。


 その後もどうするかを議論していた。

 ベンが穏便にだぞ。と言っていたので、私は我慢しながら、暫く議論を聞いていた。


 怒りの限界を超えようとした時、「まぁ、待て」と皇王が不快な話を止めた。


 そういえば、皇王(こいつ)の意見、聞いてなかったな。皇王の意見を聞いてからにしよう。


「私は吸血鬼が欲しい。あの吸血鬼は私のコレクションにする。それに、吸血鬼に、犯罪奴隷等の罪人を吸血鬼にすれば、全部できるのではないか」


 この意見に、大多数が賛同していた。

 次は、ウドが罪人を吸血鬼にしたら、どれから優先するかの話をしていた。

 ウドは吸血鬼を作ることはできないのに…


 すごーい。こいつら私をこんなに怒らせる事ができるんだ。いつ以来だろう。そうだ。百年振りだ。

 でも、穏便にしないとね。


「フフフっ、面白い話をしているわね。私も混ぜてくれるかしら」

 私は変化を解いて、窓から飛び降り、玉座の間に入り、皇王に近づいていた。

 皇王含めて、ポカーンとしていた。


 初めに事態を認識したチビメガネが、「お前は誰だ!?衛兵はなにしている。早く不届き者を捕まえよ!!」と言うと、玉座の間に兵士?(弱すぎて兵士か定かではなかった)が入ってきて、私を取り囲んだ。


 が、「これは、ドルン大将軍の失態ですぞ」とドルンに言った。ドルンは苦虫を噛み潰した顔をして、兵士らしき人達に指示を出していた。それを見て、近衛だったんだ。と更に、驚いた。


 皇王等が、玉座の間を出ようとしていたので、結界魔法を使った。近衛兵が「扉が開きません」といいながら、扉に体当たりをしていた。


「まだ議論は終わってないでしょう?早く席にお着きになって」


「お前の仕業か!早くここから出せ。ドルン、近衛兵早くなんとかしろ!」と皇王が言ったので、「早く席に着けっ!!」と少し殺気を飛ばすと、周りの人、ドルン(オーク)と、ドルン派閥の人、扉を体当たりしていた近衛兵の三人以外失神した。


「早く全員を起こしてくれないかしら。」

 三人にお願いしたが、お前に指図される謂れはない。と断られた。


 確かにそうだな。と思った。

「そう…。倒れてるだけならゴミね。私、ゴミ掃除って得意なのよ」と自慢したら急いで起こしてくれた。


 皇王は、扉の前でビクビクしていたので、座りたくないのかしら?それなら、私が座りましょう。と言って、転移で移動して玉座に座った。


「とりあえず、自己紹介しましょうか。リリス…これが早いか。」

 ステータスを見せると、皆驚き、不快な名前(二つ名)を言ったりしていた。皇王を含む何人かがまた、失神した。

 話が進まないと思い、舌打ちすると、今度はお願いしなくても起こしてくれた。

 

「リリスさんと呼ばせてあげる。次、リリスさん以外で私を呼んだら…分かるよね?」

 こいつらに名前を呼ばれるのも嫌だけど、不快な名前を呼ばれるのは、もっと嫌なので許してあげた。


 私も譲歩したんだから、そっちもしてほしい。


 (宰相)

「リリスさんは、なんの用で来られたんですか?」


「話を聞きに来たのよ。それでね。ステータスに載ってない事なんだけど、ウドって私の…」

 言いかけて、そういえばと考えた。

 ウドって私のなんだ?契約解除したから、眷族じゃないし、なんだろう。


 (宰相)

「リリスさん…。どうしたんですか?…。ウド(あの吸血鬼)は、リリスさんの眷族なのでしょうか?」

 暫く考えていると、恐る恐る宰相が質問してきた。


 私が「眷族ではないわ。」と言うと、宰相を含めてほとんどの奴が安堵していた。


 (侯爵派の一人)

「それじゃあ、関係ない奴は出てい…っかぇ…ああっーっ。痛いよ。━━ママーっ、助けてーっ。━━」

 言った奴の左腕を風魔法で切り飛ばした。


 うるさかった(ゴミになった)ので、掃除しようとしたが、いいことを聞いたので、治癒魔法を飛ばして、血を止めてあげた。


「私の事は、リリスさん以外は呼ばないように言ったでしょう。それでね、関係なくないわ。ウド(あの子)は私の息子なの。」


 そう言った後、静かになった。


「それでね。私ってやられたら、億倍返しって決めてるの。五百年前もね、罪のない眷族の一人が人体実験されたうえに殺されたの。だから私も殺したんだ。ダンジョンは実験のつもりで作ったんだけどね。それは失敗だったわ。」


 ダンジョンは、当時から西大陸でも作っていたが、その時は、自分の最大魔力を使って作ったら、どうなるんだろう。と考えて作ったけど、失敗だった。


 (皇王)

「わ、私達は、まだなんにもしていない。む、息子なら引き取って、か、帰ってくれ」

 大多数が賛同していた。


「安心して。基本億倍返しだけど、今回は法に則っるから。質問なんだけど、この国の法を司る人って、誰?出てきてくれる」

 一人の男が、「私です。」と言って足を震わせながら、出てきた。名前はリードンだった。

 罪がないのに、━━マズイのでは。の男だった。


「ありがとう。あなたに質問なんだけど、例えば、他国の王族を奴隷にしよう。と計画したらどうなるの?罪にはならないのかしら?」


 すると、王族と吸血鬼を一緒にしないで下さい。と宰相が言った。


「私ったら、自己紹介が足りなかったわ。私、西大陸国の最高相談役なのよ。王みたいな者でしょ?」


 (宰相)

「あそこは、議員制でしょ?そんなもの聞いた事がない。確か今は…フィロス大統領が王と同じ扱いになります。」


「あなた勉強不足ね。まぁ良いわ。フィロスは私の眷族だから。この場合はどうなるの?」


 (宰相)

「…。フィロス大統領があなたの眷族って証拠はないでしょう?」


「そうね…。困ったわ。それじゃあ、西大陸国出身の人くらい一人くらいはいるでしょ?そこのあなた、探してきて」

 一人の近衛兵を指差し、結界を解いた後、近衛兵を玉座の間から放り出した。


 それから暫くすると、近衛兵が一人のドワーフを連れてきた。


 すると、ドワーフは膝をつけて頭を下げた。


「ほ、本当に、リ、リリ、リ、リリス様。お顔を拝見させて頂きありがとうございます。儂は西大陸国(向こう)では、中堅の職人でしたが、この国ではトップの鍛治屋をさせて…」


 なんか長くなりそうだった。話を止めた。

 ドルンが、あの名工が…。と驚いていた。


「後で話す時間を作るから、それくらいにして。ゴーロン、私の質問に簡潔に答えて。フィロスって私の眷族よね?」


「はい。フィロス大統領はリリス様の眷族です」


「これで良いかしら?まだ信じられない?」


「リリス様、もめ事ですかい?この国、終わったな…。それより、俺も出ていかないと、巻き込まれちまう」


「まだ大丈夫よ。まだね」


 宰相を見ると、打ちひしがれていた。


 それから、ゴーロンを帰して、リードンに同じ質問をした。

 暫くの間、周りを見て、「罪になりません」と嘘を言った。こいつは、ウドを億分の一だが、一応は、一度庇ったので、

「んっ…。聞こえなかった。もう一度大きな声で言って。ちなみに、私は嘘が分かるから、返答は慎重にね」


 私も一度、見逃した。


 目を瞑りながら「つ、罪になります」と言ったので、「どんな罪かしら?」と聞いた。「いっ…一族しっ死刑です」


 うわっ…、本当に!?罰、おっもっ…。

「た、例えば、本人以外、知らなかった場合は?」


「同じです。罪人の一族は死刑です。」

 五百年前から変わってない…。まぁ、いいか。こうなったら仕方ないよね。


「どうしましょう。リードン(あなた)以外死刑みたいよ?しかも、家族も道連れで。ゴーロンの言う通り、この国、終わったかもね」

 ちょっと面白くて笑顔で言った。


 二割が失神した。


 最初はドルンが、膝をつきながら、頭を下げた。


「私は助けようとしたんだが、皇王には逆らえんのです。私には、まだ小さな女の子がいるんです。やっと産まれた子供なんです。助けて下さい。あなたも親なら分かるでしょ」


 えーっ、こいつ、皇王売ったよ。将軍だろ!?大将軍だろ!?命乞いするなら、最初は貴族って思っていたけど、まさか、こいつとは…。

 この国、私が潰す以前に終わってるよ。しかも、リードンの時に言ったよね。私、嘘が分かるって。

 周りを見て、大多数、白い目で見てるよ。

 いろいろ言いたかったけど、冷静に返答した。


「あなた、可愛いお子さんがいるのね。確かに子供は、親が必要な事が多いから、助けを求めるのはわかるわよ。皇王の命令だったら仕方ないわね。でもね。あなた、実験してペンティアム王国に負けないように、ザフィード皇国でも実験しよう。って言ってたじゃない。それに、リードンが反対したとき、吸血鬼は人じゃないから、人道的に接しなくても良いって言ったわよね。だから私も、私にとって普人族は人じゃないから、人道的に接しなくても良いって事にならないかしら?」


 ドルンは初めの発言の時には、元気よく相づちを打っていたのに、後半になるにつれ、ドルン自身が打ちひしがれていた。


 それを見ていた奴らは、私に命乞いを初めたが、冷静に返答し、何人かしたら、面倒臭くなった。

「あなた達みたいに、特権を持ってる奴が、自分の発言に責任をとらない事は嫌いだし、ゴミだと思うの」


 皆、静かになり、家族の名前を言いながら謝っていた。


 すると、皇王が震えながら発言した。

「そ、そんな事したら、かっ、神は許しにならないぞ」

 皆が空元気で賛同していた。


 困った時の神頼みね…。

 (あいつら)、一部以外仕事しないのに…。


 そうね。私も神に頼もう。もう、こいつらと話すの疲れた。

「ちょっと、待ってて確認してあげるから…」

 皆が、ポカーンとしていた。


『フィロス、その辺に天使いない?探してほしいんだけど』


『ミカエル様と話をしてたので、繋ぎますか?』


『ええっ、繋いで。…ミカエル聞こえる』


『はい』


『ミカエル、ちょっと困った事になったんだけど、どうしましょう』

 これまでの経緯を教えた。


『私の判断では、不十分なので、待っててもらえますか?』


『わかったわ。早めによろしくね。』


 暫く待っている間に、皇王、宰相、ドルン、ザフィ、近衛兵の一部、リードン以外を、私の事は口外しないように、ウドの牢屋を座敷牢に変えるようにお願いして帰した。

 貴族達は重々しい足どりで帰っていった。


『お待たせしました。二十時にベンザラード様が、リリス様の別荘で話し合いたいそうです』


『分かったわ。それにしても、ベンばっかり働かせ過ぎじゃない?じじぃとかでもいいのよ』


『……』


『まぁ、いいわ。それじゃあね』


 残り組に、ウドと話をする事と、それを邪魔しない事、明日の朝までに依り代を用意する事を伝え、リードンを連れて玉座の間を出て、ウドのところへ向かった。

 私が出ると玉座の間で、言い争いが始まった。リードンはため息をついて、頭を振っていた。


 移動中、どこにでもいそうな、女兵士に変化して、リードンといろんな事を話して、ウドのところへ行った。行くと兵士がいた。


「これはリードン様。お疲れ様です。どうしてこんなところに?それに、どうして吸血鬼なんかに座敷牢を使わせるんですか?」


 イラっとしたが我慢した。

 リードンは、私の方を一瞬見た後、安心していた。


「あぁ、これからは、こちらのリースが担当する事になった。これは勅令だ」


「はい。分かりました。こいつは誰なんですか?」

 私は舌打ちするとリードンが兵士に怒った。

「お前は黙れ!お前に知らせるべき事なら言うし、言わないって事はお前が知らなくて良い事だ!!黙って職務を全うしろ!」


「はい。分かりました。申し訳ありません」


 部下を庇ったのかな? 


 中に入ると、可哀想にウドは酷い尋問されたのだろう。大怪我をして、貧血になっていた。もう少しで飢餓状態になるところだった。


 すぐに次元庫から血液の瓶を取り出し、ウドに渡した。美味しい、美味しい、と泣きながら飲んでいた。

 ウドが必死で飲んでいる間、殺意が芽生えたが我慢した。

 我慢したが兵士は失神し、リードンは震えていた。


 ウドと話したかったが、まずは、休ませてあげたかったので、ベッドに運び、ウドが寝るのを確認して、怪我の酷いところは私が舐めてあげた。大方舐め終わったので座敷牢を出た。回復魔法でも良かったのに…


 良いじゃない。結果は同じなんだから…


 出た後、リードンとフィロスに中央大陸に関しての事を聞いた。


 三時間くらい話した後、ウドも十分休んだろうと思い、ウドのところへ向かった。


「こんにちは。ウド君、私はリース。今日から君の担当になった。で、気分はどうかな?」


「はい。さっきまでは、喉の渇きが凄くて、歯も伸びるし、いったい僕は何なんでしょう?吸血鬼になった事は分かるんですけど、吸血鬼の事は分からなくて。それで…」


「一度に言わなくてもいいわ。私は吸血鬼の事は分かるからね。それで、まず、怪我しているところを舐めて見て、怪我が治るから。酷かったところは、私が治したから」


 すると、ウドは恐る恐る舐めた。舐めると怪我が治って驚いて、怪我したところの治療が終わった。


 治療が終わった後、ウドといろんな話をした。


 初めウドは、自分が飲んだのが、血液だと知り、ショックを受けていた。


「吸血鬼にとっては普通の事。エルフにとってお肉は食べ物じゃないけど、あなたは食べるでしょ。他の人族にとって血液は飲み物じゃないけど、吸血鬼にとっては飲み物なのよ。いきなりは難しいと思うけど、少しずつ慣れていきましょうね。」


「分かりました。ちょっと抵抗感がありますが、慣れていきます」


 それから、吸血鬼の事、ウドのこれまでの話、これからどうしたいかの話をして、ベンとの約束の時間が迫っていたので、瓶を五本置いて座敷牢を出た。

 残念ながら、私と一緒に住めなさそうだった。

 中央大陸で生活したい。もう十四歳だから自立したい。と言っていた。

 まだ、あなたは0歳よ。と言ったら、顔を赤くして、十四です。と怒らせてしまった。反抗期かしら。それも可愛かった。


 皇王達とのやりとりで疲れていたが、ウドと話して回復した。もう少し話したかった。

 少しくらい遅れてもいいかな。と思ったが、約束は守る主義なので、泣く泣くウドとの話を終わらせた。


 座敷牢を出ると、リードンが待っていた。


「どうしたの?見送り?」


「それもありますが、依り代の相談なんですけど…依り代って何なんでしょう?教会の者に聞いたのですが、分からなくて…」


 えっ…。依り代くらい管理しろよ。教会って(あいつら)の教えを説くことじゃないの?声を聞かないと分からないんじゃ…。


「教会って、あいつら…神の声を定期的に聞いてないの?それで、どうやって、あなた達に神の教えを説くの?」


「えっ…あっ、えっ?リリスさん。神は本当にいるんですか?」


「あなた達が助けを頼もうとしたんでしょ。いもしない相手に助けを求めていたの?意味が分からないんだけど。A級魔物以上の素材を人型にすれば依り代になるわ。出来ればS級が良いんだけど…」


「え、S級魔物ですか?そんな素材ありません。A級のレッサーデーモンの素材でも良いですか?」


「はーっ!?レッサーデーモンじゃ、五秒くらいしか顕現出来ないわよ。五秒で大丈夫?無理矢理、頭に情報を伝えるから、半分以上は死んじゃうわよ。そのなかに皇王いるけど…大丈夫?」


 なんで、私がこいつらの心配しないといけないんだろう?


「それは困ります。どうしましょう?」


「知らないわよ。もう時間だから帰るわよ。ベン…武神ベンザラード待たせてるから、私はもういくわ。話し合って決めなさい」


 私の別荘へ転移した。その際に、武神のべ、ベンザラード様…と呟いていた。


 また、遅いと文句を言われたが、返すのも面倒臭くて、素直に謝ると、ベンが驚いて、お前大丈夫か?と心配された。

 喧嘩売ってるのと問い詰めたかったが、面倒臭くて私の別荘に入って、話し合いを始めた。


『ミカエルから大体の事は聞いたが、お前はどうしたい?』


「正直どうでもいいわ。愛し子が無事なら」


『どうしたんだ?だいぶ疲れているな。お前なら、皆殺しだ。と言うと思っていたんだが…』


「もう私は早く終わらせたいの。どうせあいつら殺すなって説得しに来たんでしょう?説得されてあげる。その代わり、ウドの事よ。条件は三つ。一つ目は、ウドが安全に暮らせるところを用意する。二つ目は、ウドのカルマ値を下げてあげる。三つ目は、ウドを立派な吸血鬼にさせる。その際に、あなた達にあまり干渉してほしくない。例えば、ウドを使って、私をどうにかしたい。させたい。なんて考えないで。その意図が見えたら、私、この世界壊してしまうかも…。とりあえず、原因は滅ぼすから。それがじじぃでもね。出来ればあなたはこっちに付いてもらいたいわ。友達なんでしょう?」


『わ、分かった。干渉しないようにするし、しないようにさせる。そんなに、ウドって子は良い子だったのか?』


 ウドの良いところを話した。


 暫く話すと、ベンが、分かった。もういいから。と言われた。まだ、ウドの良いところの半分も言えてないのに…。


『それで条件だが、一つ目に心当たりがあるか?』


「そうね。ブライト王国が良いわ。そこには、フィロスの元眷族がいるみたいなの。なんか、田舎暮らしをしたいからって、西大陸国から出たみたい。フィロスが言っていたわ」


『そうか。それなら条件に入れなくても良かったんじゃないか?なにか隠しているな。吐け』


「チッ、…それでも吸血鬼の差別があるみたいなの。だから、あなたがどうにかして」


『そんな事出来るかっ!差別なんてなくならん。お前だって分かっているだろう。』


「なにも、差別を無くせ、って言っている訳じゃないの。ただ、害意を持って接して欲しくないの。その土壌作りをして、って言っているの。出来るだけ早くね。私も手伝うから」


『分かった。まぁ、それくらいならやろう』


「どのくらいで出来そう?」


『そうだな。最低限なら半月くらいで出来るだろう。俺もこの事だけに時間をかけれん』


「良かったわ。もし見かけたら、それが国王でも殺すから、頑張ってね」


『ちょっと待て。どのくらいの害意で殺すんだ?無視や悪口くらいで殺されたら、滅びてしまうだろう』


「そうね。暴行、詐欺、窃盗くらいだったらかな?これくらいならヤっても良いでしょ?」


『分かった。それでいいだろう。ただ、殺す前に報告をくれ』


「えぇ。分かったわ。それで二つ目はどう?」


『カルマ値は、うーん。難しいな。この世界の根幹に関わる部分なんだ。それを操作する事は難しい。理由を聞くか?』


「なによそれ。そんなの興味ないわ。出来ないか…。あの子、カルマ値が高くなった事が、魔力がなくなるよりもショックだったみたいなの。なんで吸血鬼にしただけで、あんなにカルマ値が上がったの?」


『お前の眷族になったからだ。お前は西大陸以外の大陸で恨まれているからな』


「そうなの…。それは悪い事をしたわね」


『そうか。お前も罪の意識があったか。これに懲りて、あんまり騒動を起こすな。そうすれば、他の大陸でも…』


「なに言ってんの?ちゃんと起きてる?私が悪いと思っているのは、ウドに対してだけよ。それ以外は微塵も思ってないわ」


『そうだよな…。お前に罪の意識なんてないよな…。』


「そうよ。そもそも、向こうから仕掛けてきたからやり返しただけじゃない。そこに罪の意識なんて感じないわ。だいたい、なんで私が…」


『分かった。分かったから落ち着け。それでカルマ値だが、お前の言う通り、ウドが良い子なら、そのうち下がるだろう。いくつだったんだ』


「確か、百超えたって落ち込んでいたわ。犯罪者は三百以上らしいから、三百はいってないんじゃない?前は一桁らしいんだけど。」


『ウドって子は凄いな。お前の眷族になって、三百超えないんだな。前は一桁か…本当に良い子なんだな』


「そうなのよ。ウドわね…って、ちょっと待って。それじゃあ、私は世界一悪い女みたいじゃない」


『女じゃなくて人だがな。…って物を投げるな。…この世界ではそうなんだよ。…そうか一桁か…』


「なんか嬉しそうね。そんなに凄いの?」


『そうだな。一桁は、世界中どこにでもいるんだが、お前の話が本当なら、中央大陸で孤児の冒険者なんだろう?それで一桁だから凄いんだ。お前はカルマ値なんて、と思っているかもしれないがな。俺も会ってみたいな』


「そう。それなら良かったわ。三つ目の条件なんだけど、ウドに戦い方をあなたから教えてもらおうと思ってたの。ほら、私って、武術はダメでしょ。魔法や魔導なら得意なんだけど、あの子は魔力ないから…。仕方なくお願いするわ。ありがたく思いなさい」


『待て、ちょっと待て…。いろいろとツッコミたいが、お前、干渉するなって言ったじゃないか。』


「私は、()()()、って言ったのよ。私が許可するなら良いのよ。というか、あなた以外は干渉させたくない。あなただから、あの子の事を信じて任せるの。」


『分かった。乗せられていてやるよ。だが、教えられるのは、まだ、先の話だな。ステータスが低いのに、俺が訓練すると死んでしまう』


「それでいいわ。それまで、こっちでやっとくから」


 とりあえず、先約だけはとっておかないとね。

 私のダンジョンを攻略する事になった時、困るからね。

 さすがに、私が用意できる人だけだと、武術だけで、私のダンジョンは攻略出来ないから。


 そらから、ザフィード皇国の事を話した。話した後、ベンザラードは帰っていった。


 とりあえず、条件付きで皇国の奴らは生かして、依り代は私が用意する事になった。


 それから、私はザフィード皇国の城に転移し、その辺にいた貴族を捕まえて、皇王のいる場所まで連れていってもらった。


 皇王のところへ行くと、話し合いをしていた。

 依り代の事や、私がベンと知り合いということに関して、話していた。


 (リードン)

「依り代の素材は、レッサーデーモン以上はなさそうです。どうされますか?」


 (皇王)

「私は出んからな。死ぬのが確実なのに出れん。これでも皇王だからな。ドルン、お前が出ろ。王命だ。」


 (ドルン)

「皇王が、おっしゃったんだから、あなたが出ないといけないでしょう。あの死神も、自分の発言に責任持たないと殺されてしまいますよ。私が出るならゾフィ侯爵と、宰相も出ないといけないでしょう。」


 すると、宰相とゾフィ侯爵も、出たくない。私が死ぬ事はこの国の損失だ。と言った後、私の代わりにお前が出ろ。とも言っていた。

 すると、他の貴族達も、出たくない。私はそんな事頼んでいない。と言っていた。


 (リードン)

「それでは、どうされますか?明日の朝に、リリスさんが来られますよ。誰も参加されないと、この国は終わりですよ。こちらの要望を聞いた形になったのに。」


 リードンがそう言うと、誰かが、お前が出ろ。と言うと、皆から言われていた。


「…私は出ます。王命であれば…。ただ宰相、ゾフィ様、ドルン様は出ないと不味いと思います。出来れば、皇王様も出てほしいですが。…私の見たところ、本当にリリスさんは、私達の事を虫けら同然にしか見ていません」


 やっぱり、リードンはなかなか良いわね。

 依り代は、タダで貸してあげるつもりだったけど…。


「そんなふうには見てないわ。そうね。依り代は条件付きで、私が用意してあげる。赤龍の素材を貸してあげるから。これがあれば、全員参加できるでしょ」


 次元庫から素材を出した。


 (ゾフィ侯爵) 

「レ、レッドドラゴンか?本物か?」


「違うわよ。レッドドラゴンじゃなくて赤龍。レッドドラゴンだとA級じゃない。これはS級上位の赤龍」


 (宰相)

「え、S級上位…。そんなものがいるのか…。確かに、素材自体になんとも言えない迫力がある。西大陸はやはり凄いな。」


 他の貴族も、迫力が━━。とか、西大陸は━━。と驚いていた。

 いや、私のダンジョン出身(中央大陸にいたん)だけど…。まあ、いいか。


 (皇王)

「私も初代皇王と同じで、神に会える。私は伝説になれるぞ」


 皇王が喜ぶと、他の貴族も喜んでいた。


 えっ…。大丈夫か…。ツッコミたい事が結構あるんだけど…。

 まず、私が出した物を簡単に信じていいのか?確かに迫力はあるけど。

 それに、私は条件付きでって言ったのに、もう自分達は、神に会えると思っているし…。他にもあるが、あなた達が思う伝説にはなれません。


 (リードン)

「条件ってなんでしょう?そんな凄い物を貸してもらう条件はなんでしょう?」


 他のものは静かになり、私の発言を待っていた。

 やはり、リードンだけは冷静だな。


「そうね。リードン、あなたが欲しいの。あなたには、なんの罪もないわ。だから、リードンを私にくれない?」


「リードンは、大事な家臣だからな」


 そうか、さすがにそこまでバカじゃないか…。「そう。残念ね」と諦めた。


「だが、こちらの命を助けると約束するなら、諦めて、リードンを渡そう」


 他のものは、リードンに、頑張れよ。とか、皇王様、さすがです。とか言っていた。陰では、あいつ、ムカついていたから、清々する。とも言っていた。


 リードンを見ると締観していた。


 あーっ…。大事な家臣なら売るなよ。というか、多分この国からリードンいなくなったら、大変だよ。

 それ分かっていると思っていたけど、バカだったみたいだ。


「ありがとう。それじゃあ依り代はあげるから、ベンザラードとの邂逅を楽しみにしておいて。リードン行くわよ」


 リードンを連れて、出ていった。


 暫くすると、リードンが恐る恐る、「私はこれからどうなるのでしょう?」と聞いてきたので、これから、リードンにやってもらう事を話して、一人で転移した(帰った)

 リードンは安心していた。吸血鬼にされるんじゃないかと、心配していたそうだ。多分、リードンはなれないし、そこまで、リードンを気に入った訳でもない。


 次の日、玉座の間に行くと、皆、笑顔で私を出迎えた。

 あれ…?私達って敵対してたよね。


 一言、二言喋った後に、皇王が、ベンザラード様を呼んでもらおう。と言ったので、依り代を出して、ベンを呼んだ。


 ベンを呼ぶと、皆、平伏して、奇跡だ。とかなんとか、言って感動していた。

 ベンが、静まれ。と言うと静かになった。


『それでは、此度の裁定を下す。リリスを甲、私、リリス、リードン以外、この場にいる者を乙とする。一つ、甲乙共に、自衛以外で直接的、間接的に害してはならない』


 皆、うるさくなった。お礼を言っていた。


『静まれ。二つ、乙は、甲に毎月、一人二リットルの血液を提供する。その血液は城で保管する。その際、提供できる血液は、本人と今現在の親族の者に限る。それを二十年、又はこの場にいる者が存命する限り続く。』


 また、うるさくなった。次は不満を言っていた。


『黙れ。次、騒いだら殺す』


 あれーっ。言ってた事と違うな。


『三つ、血液は甲が月に一度、直接受け取りに、ザフィード皇国に来る。四つ、ウドを安全にブライト王国に連れていく。五つ、これらの項目を破ったら神罰を下す。以上だ。質問は受け付けるが、意味のある質問をしろ。神罰は私が出向き、魂を滅する。』


 私はウドに謝って欲しがったけど、ウドがいらないと言っていたので、条件に入れなかった。


 (皇王)

「どうして、こんな事になったんですか?私達を助けてくれるのではないのですか?」


『十分、助けているだろう。この国の法に従うなら、リードン以外お前達全員一族皆殺しだ。下手をしたら、この国の国民、全てを殺されていたんだぞ。それを血液提供と、ウドという子を無事にブライト王国へ連れていくだけだ。十分助けているだろう』


 皇王は、そうですね。ありがとうございます。とお礼を言っていたが嘘だった。

 私は嘘が分かる。と言っていたんだから、(ベン)も分かると思えないのか?

 想像力が足りないんじゃない。(トップ)でしょ。最悪を想定しろよ。


 (ドルン)

「保管した血液が盗まれたり、壊されたりした場合はどうなりますか?」


『その質問に意味はあるのか?そんなの、もう一度集めないとダメに決まっているだろう。そんな馬鹿な質問はするな』


 ドルンは、捨てられた豚みたいに落ち込んでいた。

 皇王よりは可愛げがある。まぁ、私は大きな豚は嫌いなんだけど。


 (宰相)

「どうして、親族に限られているのでしょう?同じ血液ですから、親族に限る必要はないのではないですか?私はの一族は少なくて…」


『それは、国民に血液を負担させるって事か?』


「はい。そうです。同じ血液なら、別に良いと思うんですけど」


 あーあっ、それを言ったら、お仕舞いよ。


『お前、宰相だろっ!貴族だろっ!なんで、お前達の失態を、国民が負担しないといけないんだ!!逆はありだが、それはありえん!お前、宰相辞めろよ。次いでに人も辞めろ。そしたら、親族に負担がかからんぞ』


 (ゾフィ侯爵)

「なぜ、今現在のなんでしょうか?」


『お前も宰相と同じか…。適当な国民を養子にして、その者に負担させない為だ。また同じ事を言わせたいのか?』


 ゾフィ侯爵が大丈夫です。と言った。

 ほとんどの貴族が、宰相とゾフィ侯爵の質問の返答を残念がっていた。


『お前達全員、死んだら禊は終わるぞ?その方が良いように感じたんだが。…そうだ。俺もこの国の事を調べたんだ。確か、リードンは優秀だと聞いた。もう、お前達は死んで、次に繋げたらどうだ?まだ、皇太子は小さいから、リードンを摂政にして…』


「ちょっと、待って。リードンは私のものになったから、リードンは、ウドの教育係にするから、その案はダメね」


『なん…だと…。そんな馬鹿な事が…』


「あるのよ。こいつら、馬鹿だから。って事で私とリードンは出ていいかしら?ウドに会いに行くんだ。そこで、リードンを紹介して…」


『ちょっと待て。リードンは諦めてくれないか。そうしないと、近いうちに、神罰が下りそうなんだ。神罰するのは俺なんだ。俺がわざわざ潰しに来たくない。俺も暇じゃないんだ』


「うーん…。レンタルなら良いわよ。一月で貸し一つで」


『それはボリ過ぎだろ。年に一だ。それ以上だったら、今潰した方が早い』


「分かったわ。それで良いわ。頑張ってね」


 話が終わったので部屋を出た。

 ウドのところへ行ったら、筋トレをしていた。なんでも、下がったステータスを戻したいそうだ。

 それから、いろんな事を喋った。楽しい時間は、すぐに過ぎていき、遅い時間になったので帰った。


 次の日、私は約束通り、ドワーフのゴードンの鍛治屋に行き、長い時間、話をした。

 ほとんどが、ゴードンの身の上話だったが、昨日の顛末を話すと、自分もブライト王国に行くと言っていた。


 話が終わると、ウドのところへ行き、種族スキルの最低限の使い方と欠点を教えた。

 やはり、魔力がないので、あまり上手く出来てなかった。

 それを私が加護をあげて、なんとか形になってきた。


 後は、練習次第なので、上手く出来るようになったら、また教えてあげようと思った。


 それから、ブライト王国の土壌作りの為に動いた。


 ブライト王国に行き、A級野良ダンジョンを一週間で攻略した。

 攻略した後、街を造る手続きをする為に、王城へ行った。


 王様や大臣達にお願いして、この街では吸血鬼に対して、罪を犯した時の罰則を厳しくしてもらう特別な街にしてもらった。

 この時、ベンと一緒にお願いしたので、すぐに聞いてもらえた。街や法の細かいところはベンに任せた。


 私は、フィロスの元眷族を探したが、見つからなかった。

 元眷族は見つからなかったが、信頼できる者を少し見つけたので、街の上層部や私が作る商会を任せる事にした。


 そして、ウドがブライト王国へ出発するときが来た。


 始めの頃は、隠れて一緒に行動していた。

 ウドは、その間の休憩時間に筋トレや、種族スキルの訓練をしていた。

 ウドは頑張り屋さんなのだ。


 一月ほどたった頃、フィロスから連絡が来た。

 なんでも、北大陸にある国の連合国が、西大陸国に攻めて来る噂があるみたいだ。


 ただの噂なので、さすがにそれで攻める訳にはいけないし、統治も西大陸国だけで、面倒臭いのに、北大陸までしたくない。

 私は攻めて来た時に備えて西大陸国に帰った。

 これでも義務は果たすのだ。


 ウドに対して、出来る事はやったつもりだったので、約二年間くらいウドと会わずに生活していた。


 私はウドに会いたかったが、私の立場、周りの人とその状況が許してくれなかった。


 ベンから、リードンのレンタルが終わった。という報告を受け、情勢も安定したので、ゾフィード皇国へ行き、リードンを連れて、ウキウキしながらブライト王国へ転移した。


 それから、ブライト王国に来るとガッカリした。


 まず、私が作った商会に変な吸血鬼がいた。

 フィロスの元眷族だったが殺した。

 そいつは偽装して、ウドに成りすまして堕落した生活をして、しかも、ウドをこの街に入れないように、手を回していた。


 ウドがこの街にいる。という前提で行動していたので、全てご破算だった。

 ウドは、別の街で貧民以上の厳しい生活をしていた。それでも、ひた向きに頑張っていた。

 やはり、ウドには私が必要だ。


 私は、いろんな(ゴミ)を掃除しようと思ったが、リードンに止められたので我慢した。


 そらから、商会長としてウドに会い、安い賃金で濃き使う事になった。

 その際、リードンから、これでも高い方ですし、特別扱いにする事の危険性は分かるでしょう。と説得されたので、こんな形になった。

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