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ご都合主義には裏がある  作者: おむすび公爵
1/3

ウド


 吸血鬼、それは寿命がない数少ない種族。食欲と睡眠欲、性欲が少なく、代わりに美味しい血液を飲みたいという吸血欲が強くなる。

 吸血欲は、食欲と性欲が合わさったような欲なので、異性の血液を好む傾向がある。


 生殖行動で子供が生まれる事は奇跡に近く、人に吸血した際にスキルを使って、人を吸血鬼にして増えるのが一般的だが、それも確率が低い。その為、個体数は物凄く少なく、生態はあまり知られていない。


 吸血鬼の種族スキルは多数あり、人を吸血鬼に変える際、どんなスキルを持って吸血鬼になるかは、吸血鬼になってみないと分からない。


 見た目より強靭な肉体を持ち、魔法抵抗力も高い個体が多い。


 血液を糧にするが血液以外に、特に必要なものがない。

 どんな血液でも糧にするためか毒も効果がない。


 貧血状態になると犬歯が少しずつ伸び続ける。喉が渇いてしまい、渇きは時間経過と共に強くなっていく。血液を一定量飲むと正常状態に戻る。


 犬歯が伸び終わると飢餓状態になり、飢餓状態が続いても死にはしないが、貧血状態より強く渇きを感じ、喉に激痛が走る。


 飢餓状態時は、能力は上がるが、渇きと激痛からか血液の事しか考えられなくなる。その為、残虐的で短絡的思考になりやすく、記憶も曖昧になる。

 元に戻るためには血液が大量に必要になる。


 一般的に太陽の光に凄く弱いが、太陽の光くらいしか弱点はない為、条件次第だが、数ある種族のなかで1、2を争うくらいに強い。


 中央大陸には、大小合わせて10以上の国があるが、特殊な事例を除いて、吸血鬼を入国させない国、人として生活できない国が多く、生活できる国は3つしかない。

 国のなかには、人ではなく魔物として扱う国もある。





 ドキドキしながら、ドアをノックして「夜分遅くにすみません。マーレン商会のウドです」家の中から「はーい」と聞こえてきた。


 暫くすると家の住人が扉を開けた。


「ご注文頂いた物です」


 配達物をこの家の住人、クリスさんに渡した。


「いつもありがとう。ウド君」

「いえ、こちらこそありがとうございます。こちらにサインをお願いします」


 魔法ペンを渡してサインしてもらった。

 いつみても、美味しそう(綺麗)だな…。


「はい。って、ウド君どうしたの?」


 犬歯が伸びたのを感じたので、お礼を早口で言った後、一礼し、すぐにクリスさんの家を離れ、街の広場に向かった。


 貧血状態になってるんだろうなと思いながら、ステータスを確認した。 

 

 名前:ウド 種族:吸血鬼


 LV :5 状態:飢餓(小) カルマ値:105


 MP :0 STR:0.935 DFE:0.569 AGL:1.363


 種族スキル:吸血 回復唾液 不老 日射耐性0 隠密 気配察知 吸血眼 吸血短剣


 Aスキル:マップ、逃げ足 


 Pスキル:気配察知 苦痛耐性


 ステータスは名前、年齢等の個人情報や、レベル、能力、スキル等を数値化、文字化したものだ。


 領兵さん達の強さは数値の平均1くらいで、普通の人は、平均0.5くらいだ。


 自分の能力しか分からないが、本人の了承があれば、他人も見る事ができる。


 本人の了承がなくても、他人の情報が分かる魔具がある。

 だいたいの街の門にはそんな魔具がある。

 その魔具は、カルマ値が300以上あると反応するだけだが、世界には、相手のステータス全てが分かる、魔具やスキルがあるらしい。


 カルマ値は、自分勝手な行動や、罪を犯すと上昇しやすい。


 罪の種類、犯した理由によって変わるみたいだ。

 残虐性が酷かったり、カルマ値が低い人に対して罪を犯すと急上昇しやすいらしい。


 カルマ値300以上の者になら、なにをしてもカルマ値は上昇しないらしい。


 ただ、時間経過で下がる事もあるし、街の外にいる魔物を倒すと下がりやすい。

 教会に多額な寄付をすると下がると言っていた。


 僕もカルマ値の事はよく分からない。とりあえずそんなものだと教えられた。


 僕の幼い頃の記憶で、お母さんに、「カルマ値が少ない大人になってね」と言われた。

 唯一残っている思い出だ。

 

 状態が貧血になっていたので、配達カバンから、水筒を出して血液を飲んだ。


 飲むとステータスの状態が正常に戻り、渇きが大分収まった。


 こうなるから、クリスさんの配達は嫌なんだよな…。

 ってヤバい。早く戻らないと魔物を倒す時間がなくなる。


 急いでライン街から出ていった。


 僕の名前はウド。違う国の孤児院出身の吸血鬼で、年齢不詳だが自分では十六歳だと思っている。マーレン商会リース本店の配達部で配達員をしている。


 十四歳の頃に吸血鬼になって二年たつので十六歳だが、吸血鬼になった時から見た目は全然変わらない。

 吸血鬼になった時には、見た目が変わってしまったが…。

 

 約二年前までは違う国で、助っ人斥候をしていた普人族の冒険者だった。


 孤児は十二歳になると孤児院から出ていくが、僕は領兵になって騎士になるために冒険者になった。

 僕以外の孤児に同い年がいなかった事や、目標がまずは領兵になる事だったので、決まったパーティーを組んでなかった。


 冒険者になって三年目で、冒険者の仕事にも慣れてきて、うまくいけば今年に領兵になれるかもと思っていた時だった。


 クエストの目的の品を手に入れたので野良ダンジョンを出た。

 ダンジョンから出た時は夜だった。


 帰り道の途中で綺麗な女性に会った。

 少し暗かったのと恐怖で顔はよく覚えていない。


 その時のパーティーメンバーは、良い人達ではなかったから早く逃げてほしかった。

 端的に言うとカルマ値が高そうな人達だった。


 夏だったので夜なのに暑かった。その為かその時の女性の格好も薄着で、目のやり場に困る格好だった。


 パーティーのリーダーが気持ち悪い事を言って、女性に近づいていった。周りも同調していたので、僕は街にむかって走りだした。

 僕は対戦能力が低く、僕の力じゃ女性を助けられないと思い、街から応援を頼む為だったが意味が無かった。


 街にむかって走っていると、なにかを蹴ったせいで転んでしまった。

 なんだろうと思い、蹴ったものを見てみるとリーダーの顔だった。

 えっ…と思いリーダーがいたところを見ると、リーダーの首から上がなかった。


 それから、僕以外のパーティーメンバーがリーダーの仇をとろうとしたが、勝負…とは言えなかった…。

 十秒もかからずに殺されてしまった。


 僕は転んだまま逃げる事も出来ず、その光景を見ていた。

 その時は分からなかったが、女性は吸血鬼だった…。


 吸血鬼は僕以外を殺すと、僕の首を吸血鬼が噛んだ。


 吸血鬼が僕の首から離した途端、からだ中のいたるところから激痛が走った。


 冒険者をしていたので、大怪我をした事があったが、その時の痛みがまだマシだと思えるくらいの激痛だった。

 この激痛は長時間続いたようにに感じたが、実際はそんなにかからなかったんだと思う。

 なぜなら激痛が我慢できるくらいになった後、パーティーメンバーの方を見ると、血がまだ流れていたからだ。

 吸血鬼は、パーティーメンバーだった人の首を噛んでいた。吸血していたのだと思う。


 その時は、この吸血鬼が一番大事な人で、この吸血鬼の為ならどんな事でも出来ると感じていた。

 神様みたいに思っていたんだと思う。


 そんな思いを持ちながら吸血鬼を見ていたが、吸血鬼が舌打ちして、「━━ない。ハズレか…」と呟き、その後なにか呟いて僕の元から姿を消した。


 すると、さっきまではあれほど大事な人だと思っていたのが、嘘のようになくなった。その時は分からなかったが、吸血鬼になった後、調べると吸血契約の効果だったと思う。


 吸血契約は吸血鬼を増やす為のスキルらしい。


 確率は低いが吸血した人種を吸血鬼にする事ができ、スキルレベルの数だけ、自分に忠誠を誓った下僕にできる。

 対面していれば自分が好きな時に解除もできる。但し、下僕にした者が半年経たずに死ぬと、下僕に出来る枠がなくなるらしい。


 その後、魔物の気配を感じたので、魔物に会わないように急いで街に向かった。

 街に向かっている時、自分の身体が重かった。

 その時は、痛みのせいと疲れたからかなと思った。

 当時住んでいた皇都の門まで戻り、ステータスを恐る恐る確認した。


 名前:ウド  ━ 種族:吸血鬼


 LV :1 状態:正常 カルマ値:150


 MP :0 STR:0.335 DFE:0.263 AGL:0.332


 種族スキル:吸血 回復唾液 不老 日射耐性0 隠密 気配察知 吸血眼 吸血短剣


 Aスキル:マップ、逃げ足


 Pスキル:気配察知


 ステータスを見ると絶望した。


 嫌われ種族の吸血鬼になっただけでもショックなのに、冒険者になって一年たち、レベル17だったレベルが1になり、全ステータスが下がった。ステータスに至っては半減して、MPは0になった。


 MPが0という事は、魔力が無くなったという事なので、魔法抵抗力も無くなった。


 MPが0になった為か、スキルがいくつかなくなり、魔法が全く使えなくなった。魔法といっても最低ランクの生活魔法しか覚えてなかったが…。


 それでもないと困るもの困る。生活をするのに便利だから生活魔法なのに…。


 更に、カルマ値が150になっていた。

 吸血鬼になる前は、お母さんの教えで一桁だったのに…。それが数少ない僕の自慢だったし、お母さんとの唯一の思い出(約束)を破ってしまった。


 それが吸血鬼になった事の次くらいに悲しかった。


 本当に悲しかった。


 ステータスを確認した後、門に向かった。

 門につき、街に入ろうとしたら門番のアドラさんに止められた。

 普段は挨拶すれば、通してくれるのになぜだろうと思っていた。

 止めた理由は僕の姿が変わっていたからだ。

 髪が白くなり、目が赤紫になっていた。

 

 事情をアドラさんに話すと、拘束され牢屋に入れられた。

 僕がいた国、ザフィード皇国では吸血鬼が住めない国だった。


 吸血鬼になった者は、主の命令には逆らえない…というか主からの命令ならば嬉々して実行するからだ。

 僕が吸血契約を解除されたという証拠はないので、今ならアドラさんの対応は間違ってはいなかったと思う。


 牢に入れれた後、いろんな人から事情を聞かれたり、カルマ値を計測されたりした。

 その時初めて血を飲んだ。人生で一番美味しかったが、美味しく感じる事がとてもショックだった。

 半月ほど牢に監禁された後、半年くらいかけて少数派の一つブライト王国に連れていかれた。


 自分の事だから、吸血鬼になってから、吸血鬼の事を調べているが、あまり分かっていないし、僕の状況が許さない。

 ゾフィード皇国で教えてもらった事だけだ。


 吸血鬼で分かっているスキルは、多種類あって、絶対についていた種族スキルは、吸血、回復唾液 不老らしい。


 僕の持っているスキルも悪くはないが、僕が持っていないもので、剛力、変化、影魔法など有用なものが沢山ある。


 なかには、あの吸血鬼が持っていた主従契約や、伝説の吸血鬼がもっていたとされる超再生、不死みたいに強すぎるスキルもあるし、伝説の吸血鬼は日射耐性0がない吸血鬼だった。


 あの吸血鬼が言ってた通り僕はハズレだった。


 ハズレではあったが、運は良かったのかもしれない。


 吸血鬼の事を調べると、吸血鬼になれる確率が低い。

 元の種族によっても変わるが、吸血鬼になれるのが一%~五%くらいしかないし、なれなかったら死んでしまうかグールになるらしい。


 それに、ハズレだったからこそ、吸血契約は解除された。

 ハズレじゃなかったら、今もあの吸血鬼に使われて、重犯罪を犯しているか、死んでいただろう…。


 それに、生まれた国がザフィード皇国だったのも良かった。

 あんな扱いをされたが、ザフィード皇国は吸血鬼に対して、まだ人道的だった。

 なかには、吸血鬼ってだけで殺されたり、犯罪奴隷にされたりする国もあるらしい。


 ブライト王国に来てからも差別は酷いが、なかには凄く良い人達もいて、その人達のおかげで生活できている。

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