それが終わったあと
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男は白熱極まる議場で、怒号すら飛び交う中で今の状況と今後を漠然と整理し始めていた。
現在、今後の政局について会議中。ここは王国。困窮するこの国を救う為の戦争を仕掛けるのも辞さないという強硬派と、国内で問題消化するべきとの穏健派。男は言うなれば日和見主義。というよりはこの論議の意味の無さを理解していた
「トーレ君、討議に参加しなさい。」
当然ながら一言も発言しなければ、委員長からも発言を促される
トーレと呼ばれた男は立ち上がり、淡々と語り始めた。
「まずはお手元に資料をお渡しします。それに沿って発言をしたいと思っております。よろしいでしょうか?」
委員長は建設的な意見が好きだということはトーレは心得ていた
「かまわん。続けなさない」
トーレの頬は緩んだ
「ありがとうございます。先に結論から申し上げれば、今はこちらから戦争を仕掛けるべきではないと考えます。」
強硬派からのどよめきは委員長にすぐにたしなめられた
「現状、我々が大義なく戦争を起こせば戦線を二つ抱えることになります。我々が相手にしようとしている小国家、ケルゲドは秘密裏に大国のアステルロと手を結んでいます。これは我々の部隊が調査したもので、詳細は4.5ページに載っています。ここまでで、ご質問は?」
しばらくと経たない内に委員長が口を開いた
「ふむ。君の部隊が調査したとなれば信憑性は高い。しかし、先の発言で君は今は戦争をしないという含みを持たせた。どういう意味かを聞きたい。」
トーレは続けた
「端的に申しますと我が国はリリフット王国に狙われております。我々の戦争するべき相手はこちらです。彼の国は我が国と三方を海に囲まれておるにも関わらず、我々と二度の戦争にも屈さなかった。」
「彼らとはその際に条約を結んでいるはずだ!」
怒号飛び交う中でもトーレは至って冷静だった。
「そうです、条約は結んでいる、が期限付きのものです。そしてそれは二年も前に切れている。」
「これは我々が掴んだ極秘ですが、この上層部の討議では解禁して然るべきと判断しまして申し上げます。現在はリリフットの密使、捕虜数名と、かの国が戦争を企てていたという証拠を掴んでいます。」
「これにより大義なき戦争は自衛の戦争に切り替わります。」
委員長は鋭かった
「戦争相手を変える条件を我々上層部が呑めば、もう聞いている限りの駒は揃っているはず。何を待っている?」
「…あちら側に我々の部隊を紛れ込ませています。正式な宣戦布告とほぼ同時に主要な指揮系統を壊せるように。もう間も無く手配は済むと思いますが、王の喉元に剣を当ててからの方がスムーズかと。」
先程までとは違い、議場は水を打ったように静かになっていた
委員長は静かに口を開いた
「どのくらい時間を費やした?」
「諸々含め、二年強くらいですかね。」
委員長はニヤリとしたが直ぐに収めた
「他になければ、トーレ情報部隊長の案を通す。異議は?」
「…聞くまでもなかったか。これにて閉会!」
ー休憩所ー
「…はあー」
トーレはうなだれるように腰掛けていた
そこにコーヒーを置く女性士官
「お疲れ様です隊長殿。やはり上層部と話すのは緊張しますか?」
「サラサ副隊長か」
トーレはゆっくりと差し出されたコーヒーカップを持ち上げたまま話し始めた
「いんや、現場知らないおじさん達の顔色なんて伺わないよ。それより、まーた戦争が始まると思うと憂鬱でならないってことかな。しかも案と部隊を派遣している私は汗臭い正面突破組と一緒に行動だよ。」
「まあまあ。私もご一緒させて頂きますし
…やっぱりこの後も戦争は続くとお考えですか?」
「今回はただ勝つだけじゃダメだ。いかに少人数で掌握するかが鍵。疲弊してると思われれば早い者勝ちのように戦線布告がラジオから流れてくるぞ。」
「そーいう重大な話は休憩所で話すことじゃないだろー。」
うなだれるトーレに後ろから大男が話し掛けてきた
「君に聞こえるように話したんだよ。カグナ戦車部隊長。優しく戦地まで届けてくれよ。」
振り返ることなくトーレは言った
「…どちらにせよ、国力のバランスが崩れれば戦争は連鎖的に引き起こるよ。この国は強いから生き残れていたんだ。今さら経済協力なんて仰げないのは末端の私たちにも分かる。」
カグナが答えた
「もう少し楽観的にみようぜ。あそこは海産物の取引が盛んなところだ。とりあえず勝てば税の引き下げ、他国に強さを見せつけた上での無理矢理の経済協力やらも考えられるだろ?」
「まあね、ただそれが終わったとき…」
たしかに生産性の高い国に勝っても他国を敵に回さず自己に有利な条件を引き出すのみ、
過去にそういった戦争例がなかったわけではない。トーレは少し考えたがそこから先は口に出さなかった




