第七話「遊び」
「ははははは……」
俺は少女の質問を苦笑いでごまかした。
そしてケイに重大な質問をする。
「ケイちゃーん」
「お兄さんのレベルの事、他に教えた人いるかな?」
「みんなに教えたよ!」
村長さん、レベルの事を隠すのは失敗したよ……
俺は心の中で村長さんに謝った。
少女たちに連れられるまま、入り口で門番をしている青年に軽く挨拶をしてから村を出る。
遊び場までは川沿いをしばらく上るらしい。
木陰から日が差し込んできてとても気持ちがいい。
「そういえば、なんで村の周りにあんな柵があるの?」
「えっとね……」
「冬になると、たまにご飯を探しにモンスターが村に来るんだって」
「その時にモンスターが村の中に入ってこれないようにするためだよ」
「でも私はまだ見たことないな」
なるはど。
この世界に四季があるとするならば、今は春頃だろう。
なのでしばらくは安全だ。
それにしても、この世界のモンスターはご飯を食べるのか。
あまり聞いたことがないな……
道中、俺はケイにこの世界のことについていろいろ聞いた。
だが、ケイはあの村から出たことがないらしく、あまり詳しくないようだった。
帰ったら村長さんに聞こう。
そんなことをしていると川辺でポヨポヨ跳ねている青くて丸い物が見えた。
俺の心が躍る。
あれはスライムだ。
「着いたよー」
どうやらここが遊び場らしい。
「先に10体やっつけた人の勝ちね!」
「よーいドン!」
なにやら説明も無しに勝負が始まったらしい。
掛け声と共に少女たちは石を拾い、スライムに向けて投げ始める。
石がスライムに数個あたった時、形が崩れるように溶けた。
「おぉ……」
俺は少女たちの手慣れた動きに感心しながら見ている。
「アレン負けちゃうよ?」
手を止めて振り返ったケイに純粋な目で煽られた。
どうやら俺も参加していたらしい。
俺は急いで石を拾い、スライムに投げ始める。
……というか呼び捨てかよ。
スライムが不規則に跳ねているせいでなかなか上手く当たらない。
しかし、こんな少女たちに負けてしまっては大人の威厳が保てない。
俺はピッチングフォームからかけ離れた体勢で必死に石を投げた。
……俺は少女たちに惨敗した。
もともと野球は得意ではないし、なによりスタートで差がついている。
少し肩が痛い……
俺は優勝したケイをおんぶして村まで帰ることになった。
大人しく寝ていてくれればよかったが、ケイは村に戻るまで俺の背中ではしゃぎ続けた。
「オムじいが家に来いって言ってたぞ」
村の入り口までくるとあの青年に呼び止められた。
ちょうどいい。
俺もこの世界の事についていろいろ聞きたかったところだ。
俺はケイを背中からおろし、村長さんの家に向かう。
「アレン」
「レベルアップの声は聞こえたか?」
ドアを開けると、いきなり遠くの方からでかい声で村長さんが質問してきた。
もちろんそんな声は聞こえていないので首を横に振る。
「そうか」
「では、これを持て」
村長さんは立ち上がり俺に近づいてきて赤い花を手渡してきた。
俺はそれを親指と人差し指で優しくつまむ。
何だろう、告白かな?
ドスッ
そんな妄想をしていると、俺は村長さんに腹を殴られた。