第三十八話「器物破損」
「おい!俺の分もテキトーに持ってきてくれ!!」
遠くにいるノアの叫び声が倉庫の中まで反響し、背筋に響き渡る。
しかし俺はそれを気にも留めず、倉庫の中に一歩踏み出した。
扉を開けた瞬間は実物に見えていたものが全て木製だったのは少し残念だったが、倉庫を埋め尽くす武器の数は圧倒的で、普通の剣から、槍、棍棒、少し変わったものを言えば多節棍や銃剣の様な物まで実に色とりどりだ。
しかし、俺がウォロ村で使っていたような農業用の鎌はなかった。
ざっと見るに、一段と槍の種類が豊富なので、おそらくノアは槍を使っている可能性が高い。
なので俺は自分の木刀とノアの分の木剣を取って倉庫を出た。
俺が木刀を選んだ理由はただ単に剣道が『チョットデキル』のと、ノアの武器として木剣を選んだのは槍よりかはある程度動きが読めそうだからだ。
「これでいいか?」
俺はノアに向かって木剣を強めに投げる。
「おう!問題ない!!」
ノアは俺が投げた木剣を片手で受け取りすぐさま中段で構えた。
やはり、あのガタイは見せかけでは無いようだ。
「ところで……俺のステータスはちゃんと確認しているよな?」
俺も木刀を中段で構えながらノアに聞く。
ノアに強めに打ち込まれた瞬間、HPの低い俺はまず即死するだろう。
それにしても、構えてみて分かったがこの木刀がかなり重く、体感では摸造刀と同じぐらいだということだ。
持ち手がかなり滑るので、気を抜くとすっぽ抜けそうだ。
「ああ!ちゃんと寸止めにするから安心しろ!!」
俺はその言葉を聞いてじわじわと前に歩みを進める。
周りを見ると先程まで立ち尽くしていた人たちはいつの間にかギャラリーになっていた。
……せっかくギャラリーがいるなら少し面白い事をしてみるか……
「ふぅーーー」
俺は大きく息を吐いて気を落ち着かせノアの剣先に集中する。
ノアの剣先は俺のみぞおち辺りに向いていて少し低めだ。
俺を舐めているのか柄を握る手は完全に緩みきっている。
これならばアレをやってみる価値はある。
ただ木剣を相手にやった事が無いのに加え、木刀でもやった事は無い。
「おい!どうした!!」
ノアが剣先をプラプラと上下に揺らしながら俺を煽ってくる。
あまり考えていても埒が明かないのでとにかく物は試しだ。
俺はノアの喉元に剣先を向けながら歩み足で近づき、木剣と刀の剣先が触れる寸前で大きく一歩を踏み出した。
そして右側にあった木刀の刀身を木剣の下から時計回りに通し、その勢いのままノアの木剣巻き上げながら思いっきり振り上げる。
木剣はノアの手から離れ宙に浮き、俺の手から離れた木刀と共に俺の後方へと飛んでいった。
バリィーーーン!!!
俺はその響き渡る音を聞いて慌てて振り返ると、3階の窓が粉々に割れていた。




