第三十話「吊り橋効果」
少しの雑談と共に朝ごはんを食べ進め、10分もしない内に俺とケイは朝ごはんを食べ終わった。
しかし、ヒナコの器にはまだ3分の1ほど残っている。
ウォロ村で、食事を急かされたことが多かったためか、食事のスピードが速くなってしまったのかもしれない。
次からはヒナコに合わせることにしよう。
「ヒナコちゃん、テレビ観ていい?」
ケイは返事を待たずにテレビに手を伸ばしている。
「うん、いいよ」 カチッ
ケイはヒナコの返事と同時にテレビに電源を入れる。
ケイは一日でテレビの魔力にやられてしまったようだ。
俺はヒナコの食事をなるべく邪魔しないように、見る気もないテレビの方に身体を向けた。
「ごちそうさまでした」
ヒナコが小声で呟いたのと同時に自分がごちそうさまを言っていないことに気づく。
習慣とは恐ろしい物だ。
今度からは言うように心がけよう。
ヒナコは食事を終えたのと同時に片づけを始めたので、俺はその手伝いをした。
「ありがとね!」
「洗い物は私がやるからいいよ!」
「わかった」
俺は部屋に戻ろうと思ったが、キッチンから出る直前で立ち止まった。
「……そういえば、昨日の名札はつけてないの?」
手伝いをしていた時に気になった事をヒナコに聞いてみる。
「……あぁ、あれね」
「テンションに任せてテキトーに作ったやつだから閉まっちゃった!」
「それに、もう名前覚えたでしょ?」
「付けてほしいなら付けるけど?」
ヒナコは洗い物から目を離さずに答える。
初めて会ったあの時、ヒナコのテンションが高く感じたのは間違いではなかったようだ。
「ふーん」
「せっかく作ったんだから付けておけば?」
「ヒナコっぽくていいんじゃない?」
正直どちらでも良かったが漢字が見れるのは少し嬉しいのでつけてもらおう。
「うん、わかった!」
「じゃあ、この家にいる時は付けておくね!」
ヒナコは洗い物から手を放し笑顔をこちらに向けて答えた。
「あ、それと昨日の書類はテーブルの上に置いておいたから」
「じゃあ戻るね」
俺はヒナコの返事を待たずにキッチンを後にし、棚の上に置いておいた書類をテーブルに移動させる。
そしてテレビからケイを引っ剥がすとダイニングを後にした。
俺は自分の部屋に戻ると、歯磨きを済ませ、ケイに目覚ましの止め方を教えると畳に寝転がった。
時刻は8時30分なので出発までまだ30分もある。
ケイはなにかソワソワしているようで、部屋の中をウロウロしている。
「……」
ヒナコと普通に話せたな……
やはり昨日の胸の高鳴りは勘違いだったようだ。
そもそも俺は年上好きだから、18歳なんて興味が無いはず。
せっかく異世界にきたんだから、ケモミミ金髪美少女との恋なんていうのも面白いかもしれない……




