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第二章「セントエクリーガ城下町」
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第十八話「癖強アパート」

 思った通りこの女の子は日本人だ。


 赤面している同い年ぐらいの女の子を目の前に、俺の耳まで熱くなってくるのを感じる。

 おそらく、お互いに日本人に会えて舞い上がってしまっているのだろう。


「……」


 2秒ほどの静寂が流れる中、靴を脱ぎ終わったケイが俺の隣に並んだ。


「あー、どうも初めましてアレンです」

「こんな名前ですけど日本人です」

「この子はケイです」


 赤面している女の子を前に、片言になってしまった。


「……と、とりあえず部屋まで案内しますね!」


 そう言うと女の子は身体を九十度捻り、階段を上っていく。


 かね折れ階段は吹き抜けになっていて、二階部分の天井には昭和を感じる小さなシャンデリアが一つぶら下がっている。



 階段を登りきると、手前に二つと奥に一つドアが見えた。


「あ、ここトイレです」


 どうやらトイレは部屋にないらしい。

 ……まぁ、俺には関係ないが。


 

 さらに廊下を進み、女の子は一番奥の方の部屋に案内してくれた。


 ドアを開けると、い草の香りと共に8畳ほどの畳が目の前に広がる。

 奥にもう一つ引き戸があるので、おそらく2部屋の間取りだろう。


「この部屋です、広いでしょ!」

「はい、これ鍵!」

「隣に人はいないので、ちょっとだけならうるさくしても大丈夫ですよ!」


 女の子は俺に鍵を手渡すと、自信満々に胸を張っている。


「ヒナコちゃん、この床なーに?」


 ケイはドアの前にしゃがみ、畳を手のひらでこすっている。


 どうやら畳を知らないようだ。


「……アレンさん、畳ってなんですか?」


 女の子は自信満々の笑顔から一変、真面目な顔で俺に質問を横流しした。


 どうやらこの子も詳しく知らないようだ。

 かといって俺もそんなに詳しいわけではない。


「あー、あれだよ……なんかー、植物を織って板に張り付けた的な……うん、そんな感じだよ」


 即興にしてはそんなに悪くない説明だ。


「ふーん、変なの」


 そう言うとケイは立ち上がり部屋の中に入っていった。


「アレンさんって物知りさんなんですね」

「とりあえず、金庫の使い方だけ説明しますね」


 女の子はケイに続いて部屋の中に入る。


 ケイが部屋の隅々まで探検している横で、俺は押し入れの中にある金庫の使い方の説明を受ける。

 金庫は4桁のダイヤル式だったので、ケイの誕生日の[0214]に設定しておいた。



「それじゃあ、机と布団だけ持ってきますね!」


「ああ、一緒に行きますよ」

「ケイはここで待ってていいからね!」


 俺は窓の外を眺めているケイを置いて女の子を追いかけた。


「手伝ってくれてありがとうございます!」

「それにしても左右で違う靴を履いてるなんて、アレンさんはオシャレさんなんですね!」


 突然、目の前の女の子が俺の心の傷をえぐってきた。


「ああ、そうかもしれませんね」

「ヒナコさんって日本人なんですか?」


 ヒナコさんに悪気がないのは分かっているので、適当に誤魔化し話題を変える。


「……アレンさんって何歳ですか?」


「19歳です、今年で20になります」


 突然の質問だったが俺は淡々と返す。


「私、18歳なので『さん』は止めてください!」

「ヒナコちゃんでお願いします!」


 どうやらあの自己紹介は本気だったようだ。


「ちゃんはあれなので、呼び捨てじゃだめですか?」


 流石に初対面なので、とっさに妥協案を提示する。


 まだ出会ったばかりだが、ヒナコの性格では完全否定だと食い下がらないのは目に見えている。


「許します!」


 ヒナコは妥協案をすんなり受け入れた。



 ……俺はなかなか癖の強いアパートに泊まることになったようだ。

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