第二話「指輪」
なぜ俺は指輪をしている。
俺に指輪をつける趣味なんてない。
「……あぁ、これが特典か」
俺はそうつぶやいた。
先程から森の中が静かすぎて、なにか口に出さないと怖い。
それはそうと、これが特典なら指輪は何かしらの意味を持っているはずだ。
とりあえず指輪を外して調べようとする。
「……ん？」
「……ふんっ」
引っ張っても指から外れない。
これ以上引っ張ると指がさけそうだ。
仕方がないので着けたまま観察してみることにする。
指輪は何かしらの金属でできていて、緑色の小さな宝石らしきものが埋め込んであり、なにか文字が刻印されているようだった。
特徴といえばその程度でいたってシンプルだ。
The Ring will be with you
「リングは……あなたと一緒？」
「……リングはあなたと一緒になる？」
英語なんて分かんねーよ。
こっちは数学と物理の二科目受験なんだよ。
ちょっとイライラする
「英語か……」
さて……見た目で分からないとなれば、可能性としてあり得るのは何かしらの言葉に反応する説だ。
「ステータスオープン」
「……」
何も反応はない。
周りに誰もいなくてよかった。
「開けごま……」
「起動……」
「汝、我に力を示したまえ……」
俺は思いつく言葉を手当たり次第に口にし始める。
「アクティベイト」
突然、指輪に付いている宝石が光った。
「……」
「閉じろ」
「オフ」
「シャットダウン」
「ステイ」
指輪から光が消える。
どうやら『アクティベイト』と『ステイ』が鍵になっているようだ。
「まじか……」
俺は顔を両手で抑えながらそう呟く。
次は水だ。
少しのどが渇いた。
今いる場所は標高の高い場所のようだ。
というのも、ここより下は木が生い茂っていて、上は岩がむき出しになっている。
選択肢としては2つ。
上るか下るか。
山で遭難した場合は上るのが正しいとどこかで聞いたことがある。
しかし、革靴で岩肌を上るのは少しリスクがあるようにも感じる。
「仕方ないか……」
俺は勇気を出して下ることにした。
雪は見えないし登っても水は無いだろう。
そういえば、この世界に来てから生き物に会ってないな。
見知らぬモンスターに出会ったらどうしよう。
そんなことを考えながら数時間、俺は森の中を進んだ。
しばらくして足元を見ると地面が湿っていることに気づく。
この近くに川があるかもしれない。
そう思った俺は足を速める。
「ビンゴ！」
らしくもなく、思わず口に出てしまった。
川辺に近づくために、少し急な斜面を滑り落ちる。
辺りを見渡したが、周りには何もいないようだ。
俺は手と顔を大量の水で洗い流し、手ですくった水を口に流し込む。
「あぁ」
美味い。
思わず声が漏れる。
俺は水の美味さを最大限に感じていた。
……そういえば、自分の顔を確認してなかったな
そう思い、川をのぞき込んで顔を左右に揺らす。
しかし、流れのせいでしっかりと確認できなかった。
髪は黒色のようだ。
どうせなら金髪や原色の髪色でも面白いと思っていたのだが、少し残念な気持ちになった。
「ふぅ……よし」
俺は休憩を終わらせ、川沿いを下ろうと思ったその時、川上から話し声が近づいてくるのに気付いた。
これは少女の声だ。
一瞬焦ったが、俺は少女たちと話すことを決意した。
というのも腹が減った。
俺はこの世界にきてからまだ何も食べていない。
この子達についていけばご飯が食えると思った。
向こうは俺に気づいたのか歩く速度を遅くする。
少女たちに逃げられても困るので俺はその場から動かなかった。
少女たちは俺から少し離れた所で足を止める
「ハロー」
俺は確かな自信を胸に拙い英語で3人の黒髪の少女たちに話しかけた。
