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第三章「レゼンタック」
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第九十九話「目学問」

「いや、できるって!」

「手先器用でしょ?」


「いや、家庭医学大辞典を読んだくらいしか知識がないので」

「すみません……」


「いや、十分だよ」

「それに縫ってくれるだけでいいから!」


「あの、すみません……」


 マルセア君は謝りながら段々と後ずさりしていく。


「おいアレン!」

「俺がやってやろうか!!」


 ノアはベッドを揺らしながら目を輝かせている。

 100人に聞いたら100人はこんな人にやらせたくないだろう。


「大丈夫、マルセア君ならできるって」


 俺はノアを無視してマルセア君にうったえかけ続ける。


「いや、それに道具がないので……」

「すみません……」


「縫い針ならちょうどここにあるぞ!」


 ノアはそう言うと、どこからともなくカーブした針を取り出した。

 見た目が少しいびつだが……、たぶん問題ない。


「糸もここにある」


 俺はさっきルーから拝借した毛をポケットから取り出し、ノアから受け取った針と一緒にマルセア君に渡した。


「……わかりました、やってみます」

「上手くできなかったらすみません」



 マルセア君はまず俺の脚と腕に巻いてあった包帯を手際よく外し、洗面所に置いてあった赤い薬用石鹸と歯ブラシで傷口を抉るように洗い始めた。


「ふぅー、ふぅー、ふぅー……」


 容赦ないな……

 お願いした手前、痛いなんて言えない。


 一通り洗い終えると、マルセア君は何も言わずに俺の腕と脚を思いっ切り捻った。

 そして、皮膚を寄せながら手際よく傷口を縫い合わせていく。


「はぁー、はぁー、んあ“ぁ」


 真っ赤になったベッドの上でノアがニヤニヤしながらこちらを見ている。

 だがムカつく余裕もない。


 そして真っ赤になった腕と脚を再び石鹸で洗い包帯を巻くと、ノアがどこからともなく取り出した添え木を当て、その上から再び包帯をきつく巻いてくれた。



「とりあえず終わりました」

「……すみません」


「いや……、大丈夫」

「ありがとう」


「飲み物でも買ってきましょうか?」


「え?あぁ、お願い」


「すみません、いってきます」


 マルセア君は頭を下げながら病室をあとにした。



「面白い人間だな……」


 ノアはなにか感心したように腕を組みながらボソッと呟く。


「知識は十分って感じだったよ」


 マルセア君は頭も良いし知識も十分だ。

 それによく考えている。

 だからこそ頼んでよかった。



「それで任務には戻れそうか!!」


「予定だと午後には出航だっけ?」


「いろいろあったから船の点検も含めて明日になるかもしれないな!!」


「じゃあ明日、判断する」

「それまで寝るね……」


 俺はそう言い残すと、気絶するように眠りについた。


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