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第三章「レゼンタック」
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第六十七話「賭け」

「それじゃあワイシャツよろしくね」


「……あ、うん、いってらっしゃい!」


 俺はヒナコに見送られて宿を後にすると、マラソン大会のスタート地点に向かう。


 アメリアさんから貰ったプレゼントの中身は年季の入ったカフスボタンだったのだが、俺が持っているワイシャツはカフスが着けられないのでワイシャツを一新することになった。


 それにしても今日の朝からヒナコとどうもギクシャクしてしまう。

 ヒナコは昨日の事を覚えているのだろうか……




 スタート地点に近づいてくるにつれて人の量が増え、店の前でフリーマーケットのような事を行っている人もちらほらと見られるようになってきた。



「おう、アレン!」

「早くしないと受付終わっちまうぞ!」


 スタート地点に到着し人混みの中で迷っていると、後ろからノアに声をかけられた。


「受付ってどこ?」


「あっちだ!」


 俺はノアの指差す方向に進み、受付を済ませてから発走順のくじを引き、ノアがいる場所まで戻った。


「アレン!」

「何番目のグループだ?」


「えーっと……、Aの先頭だって」


「それなら俺とトレバーと同じグループだ!」

「早く帰れてラッキーだな!」


 トレバーさんも参加するのか……

 いや、あの人なら参加するのも当然か。


「トレバーさんどこにいるの?」


「もうスタート地点に並んでる!」

「確か一列目って言ってたからアレンの近くにいると思うぞ!」


「そっか、じゃあ俺ももう並びにいくね」

「あとプレゼントありがとう!」


「ちょっと待てアレン!!」


 俺がノアの元を離れようとすると大声で呼び止められる。


「……え、なに?」


「アレン、賭けをしないか?」


「聞いてから考える」


「なに、簡単な事だ!」

「同じグループ内で二位までに入れなかったらアメリアさんの事をお譲と呼ぶ」

「足には自信があるんだろ?」


 二位までか……

 レゼンタックの中で俺はかなり足の速いほうだ。

 それに持久力にも自信がある。


 無理をして足を痛めるのが心配だが、ノアに負けても二位に入れば問題ない。


 それにノアの目が結構怖い。

 これは本気だ。


「いいよ、やろう」


「よし決定だ!!」



 俺はノアと強烈な握手を交わしてからその場を後にした。




「あ、トレバーさん」

「おはようございます」


 人混みをかき分けて指定の位置を探していると、トレバーさんが先頭の一番端で律儀に直立しているのが見えた。


「アレンさん」

「あなたも参加するんですね」


「仕事が休めるって聞いて……」

「あ、そういえば僕、昨日誕生日だったんですけど知ってました?」


「はい」


「さっきノアと賭けの約束をしたんですけど、トレバーさんも二位までに入れなかったら僕にプレゼント買ってくださいよ」


 トレバーさんは何だかんだで優しいのでちゃっかり無茶ぶりをしてみる。

 それに、トレバーさんならノアよりもいい物をくれそうだ。


「昨日、ノアさんからプレゼント貰いましたよね?」

「ワイン」


「え……、はい」


「ノアさんにアレンさんの誕生日を教えたのと、あのワインを選んだのは私です」

「味はどうでした?」


 俺はトレバーさんのその言葉を聞いて背筋が伸びる。


「えーっと……、美味しかったです」


 トレバーさんは俺に対して斜に立っていたのを正対し、俺の顔をじっと見つめた。


「セントエクリーガではブドウが採れないのはもちろんご存じだと思います」

「なのでワインは100%舶来品でして壁の中に入ってくるまでに多大な手間賃がかかっているのもご存じですよね?」


 いや、そんな事知らない。

 逆にセントエクリーガは農作物が豊富なイメージしかない。


 とりあえず訂正せねば……


「トレバーさん……」

「あのワイン、すごーっく美味しかったです!!」


 俺がわざとらしくそう言うと、トレバーさんは少し微笑みながらアキレス腱を伸ばし始めた。


「それはどうも」

「ちなみにお金を出したのはノアさんですが、喜んでいただけたのなら何よりです」

「それと、賭けには乗りましょう」

「アレンさんが負けたら美味しいご飯を食べさせてください」



 少し高い台の上に拳銃を持った人が立ったと同時に周辺がざわざわし始める。

 そろそろ始まるみたいだ。



 俺は入念なストレッチをしながら白煙の印が鳴るのを静かに待った。


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