第六十三話「朗報」
俺に任せられた業務は主に2つ。
タナバタフェスティバルで行われるマラソン大会で使うテントの設営と物資の運搬だ。
ただそのテントの大きさと物資の量がえげつない。
なぜだか大量の星条旗が入っている。
俺の班はノアがリーダーとなって4人1組で行動するのだが、初対面の人が二人いるので気軽にサボりにくい。
どうしたもんか……
「おいアレン、いくぞ!」
ノアはそう言って俺に大きな袋を背負わせると三人を先導して走り始めた。
よし、考えないほうが吉だ……
仕事は俺の体力を適度に削りながら順調に進んでいく。
アメリアさんが言っていたよりも早く終わりそうだ。
「ノア、そういえば仕事どうしたの?」
「サービス出勤?」
「違うぞ!」
「タナバタフェスティバルの手伝いすると仕事がサボれるからな!」
「アレンも同じだろ?」
「いや、俺はアメリアさんとデート中」
「お譲と?」
「相変わらず変な趣味してるな!」
「だったら明日のマラソン大会も出ないのか?」
「仕事サボれるぞ?」
「え……?」
俺ってそんな変な趣味してるように思われてるのか……
それよりも明日のマラソン大会に出れば仕事行かなくてもいいのか。
それだったら返事は一つしかない。
「あぁ、もちろん出場するよ」
俺がそう答えると、ノアはニカっと笑いながら俺の肩を強く叩いた。
「終わったーー!!」
俺を除いた三人のモチベーションが意外と高く、日が暮れるよりもずっと前に仕事を終わらせることが出来た。
今は5時手前頃だろうか……
「おい、アレン!」
「飯行くか?」
「いや、大丈夫」
「用意してもらってるから」
「お、あの彼女か!」
「それなら仕方ないな!」
「あぁ、いや……、まぁそうだよ」
もうこのやり取りには疲れた。
「それじゃあ俺、レゼンタックに戻るんで」
「おつかれさまでーす」
俺は二人に挨拶をするとその場を離れる。
レゼンタックに預けてる短剣を回収して帰ろう。
「まて、アレン!」
「レゼンタックに戻るなら俺も用がある!」
ノアはそう言うと俺の肩を強く叩きながら横に並ぶ。
「用が出来るような仕事なんてやってたっけ?」
俺が見た中では緊急時以外、ノアがあの椅子から動いているのを見たことはない。
「ただお譲に呼び出されただけだ」
「ま、大したことじゃない!」
「ガハハハッ」
ノアは大きな口を開けて笑うと再び俺の肩を強く叩く。
「いっ……、そうなんだ、頑張ってね」
「ん?あぁ!」
俺はノアの手を振り払うと、レゼンタックに向かう足を速めた。