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第三章「レゼンタック」
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第四十五話「餌付け作戦」

「……地点A80で待機せよ」


「10-4」

「ふぅ……」


 俺は指令室から命令を受けると、辺りを警戒しながら壁の方に向かって歩き始める。



 今日はモンスターの数が少なくていいな。

 SPが得られないモンスターなんて、やる気が起こらないからな……

 足の調子もだいぶマシだ。


 しかし、やる気が無かろうと見慣れたモンスターだろうと気を抜いたら怪我をするのは避けられない。

 死ぬよりは足が痛い方が良い。


 仕事にもだいぶ慣れてきたことだし暇な時間を見つけて特訓でもしようかな……

 生きていた頃の運動量に戻せば、ちょっとは身体が強くなるかもしれない。

 だけど意味のない疲れる事はやりたくないな……



「それにしても、このレインコートに染み付いた汗の臭いには慣れないな……」

「お前もそう思うだろ?」


 俺はモンスターの厩舎に一人で寝ている白い狼に向かって話しかける。


「……今日も無視ですか」

「飼われてるモンスターなら声ぐらい出せるだろ?」


 最近、仕事のルーティーン化で退屈している俺の癒しはこの白い狼だ。

 西側の任務の度に近づいてみて話しかけている。


 だが、未だに反応してくれたことはない。


 しかし、今日から5日間連続の西側配備ということで俺はある作戦を思いついた。

 その名も『餌付け作戦』


 この作戦で撫でられるぐらいには仲良くなりたい……



 俺は寝ている白い狼の横でバッグからパストラミ肉をおもむろに取り出す。

 すると、同時に白い狼の肩がピクンッと反応した。


 耳は悪いが鼻はだいぶ利くようだ。


 狼の目の前まで移動すると、顔の前で指でつまんだ肉をゆらゆらと揺らす。

 どれだけ近づいても噛まれないことは確認済みだ。


「おーい」


 反応がないが、さっきピクンッと動いたので、この肉の存在には気づいているだろう。




「……地点A83へ移動せよ」


 時間か……


 まぁ、初日から仲良くなれるとは思っていない。

 こういうのは時間をかけるのが大切だ。

 飼い主に怒られるかもしれないが、お肉は雨に濡れない場所に置いておこう。



 俺は狼の顔の近くに肉を置くと、北に向かって走り始めた。




「……地点B81で待機せよ」


「10-4」

「ふぅ……」


 俺は命令を無視してUターンすると、狼がいる厩舎に向かう。

 今日も雨がひどい。


 それはそうと、昨日はいろいろと散々だった。


 頼まれていた夕飯の買い物をして帰ったのだが、傘を持っていなかったために買い物袋をグシャグシャにしてヒナコの宿にもどったら凄く怒られた。

 そんな文句を言うなら自分で買い物に行けばいいのに……



 俺は狼の近くに近づくと、バッグからパストラミ肉を取り出す。

 昨日と違って反応はないが、置いておいた肉は無くなっていた。


 昨日の事を踏まえた今日の対策は、汗臭くないレインコートとスパイスのついていない肉だ。

 やはり犬?は臭いに敏感だろうから、なるべく余計な臭いは落としてきた。


 俺は昨日と同じように狼の目の前で肉をゆらゆらする。



 ……今日も反応なしか。


 Uターンしてきているので肉を置いて早めに戻ろう。



 あと三日で仲良くなれるかな……


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