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第三章「レゼンタック」
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第四十四話「テーピング」

「おはよーございまーす」


 俺は元気な挨拶で1分の遅刻を誤魔化すと、認識票を身体に着ける。


「アレン君、今日は早起きできたの?」


「あ、ヅーリンさん」

「今日はケイに起こされました」

「昨日切れてたテーピングってもう出てますか?」


「それならさっき補充しておいたよー」

「アレン君、最近、毎日テーピング、テーピングって言ってるけど大丈夫なの?」

「身体、痛めてるなら休んだほうがいいんじゃない?」


「大丈夫ですよ、単なる五月病ですから」

「それじゃ行ってきます!」


 俺は棚からテーピングを一個とると、呆れたヅーリンさんに見送られながら階段を駆け下り、レゼンタックを後にする。



 今日は西門か……

 そういえば今日から一週間、西門だったな……


 あの作戦を実行してみるか。



 俺は開店したばかりのデリカサンドに寄り、パストラミ肉を単品で買ってから西門へ向かった。



 俺は壁の中に入って手際よく支度を済ませると、ベンチに座って靴を脱ぎ、ゴムの靴下の上からきつめにテーピングを巻き始める。

 いちいち靴下を脱ぐのは面倒になってしまった。



 先週、<貧者>に振ったSPの合計が400ポイントになった。

 そのおかげで、かなり強力な<特能>を手に入れることが出来たのだが、その時から急激に身体にガタが出始めたのだ。

 おそらく、<HP>や<DEF>などの<身体スキル>をないがしろにし、<職業スキル>に集中的にSPを振っていた、しわ寄せがきてしまった。

 それに加え、ニワトリちゃんやイノシシ犬など、よく見えるモンスターからは既にSPが手に入らなくなってしまい、対処しようにもできていない状態となっている。


 今は得たSPを少しづつ<DEF>に振りながらテーピングで誤魔化し、スキルボードを見ながら対処法を考えている途中だ。



「はぁ……」


 俺は大きなため息をつくと、ベンチから勢いよく立ち上がり、レインコートを羽織って外に出た。


 いくら考えたって痛みがなくなるわけではない。

 とにかく今日を乗り越えよう。




「地点C72、10時方向にリンシェンクス一体を発見、距離200」


 雨季に入ってから視界がかなり悪くなり、500m先のモンスターを確認するのにも苦労するようになった。

 それに加え、リンシェンクスなどは屈んで草むらに身を隠すので、いつの間にか目と鼻と先にいるなんて事になり得るので、遠くだけではなく近くにも目を配るように心がけている。


「……10-0」


「10-4」

「はぁ……」


 敵意が視認できる<貧者の目>が発動していないということは、リンシェンクスはまだこちらに気づいていない。

 この距離でも気づかれていないのは<猫足>に加えて、新たに会得した<気配遮断>の効果のおかげだろう。

 この二つは壁の外にいる間は常に発動するようにしている。


「<弱点感知>」


 俺は念のため核の位置を光らせる。

 雨の時には結構、便利だ。



「ふぅ……」


 腰に携えた短剣の柄に軽く右手をかけ、深く呼吸しながら気を落ち着かせる。


「……よし」


 次の瞬間、俺はリンシェンクスに向かって一直線に足を伸ばした。

 一歩、二歩と地面を蹴るたびに、足の甲に金づちで叩かれたような痛みが走る。


 そして二十歩もしない内にリンシェンクスの懐まで接近すると、短剣の柄にかけていた手に力を込め、同時に左手で鞘を後ろに引き、雨が落ちるよりも早くリンシェンクスの核を両断した。



 うん。

 ユバルさんに改造してもらった鞘も快調だ。


「いてててて……」


 俺はその場でしゃがみ込んで足を軽くマッサージする。



 いつも通り、ちょっとサボってから報告しよう。


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