第四十話「飾り羽」
カチャンッ
俺は左手でホルスターから短剣を鞘ごと外すと、右手に持ち替えて左手で短剣を抜く。
カポウツェロはかなり飛行能力が高く、ギリギリまで引き付けないと避けることが難しいので、念のため鞘も構えておく。
それに使い所が今ぐらいしかない……
カポウツェロは助走を翼を上下に動かしながら助走をつけこちらに向かってくる。
ビューーー
風邪を切るような音がした瞬間、カポウツェロは大きく翼を羽ばたかせ空中に浮かび上がり、こちらに急加速してきた。
俺は鞘と短剣を構えカポウツェロに正対し、1mほどの距離まで引き付けた所で右手に少し力を込め、鋭いクチバシに鞘を当てながら身体を右に捌いて攻撃を躱す。
俺の脇を通り過ぎたカポウツェロはさらに加速しながら空高く飛び上がった。
相変わらず早いな……
雨で飛行能力が落ちる事を少し期待していたのだが、そう簡単にはいかないようだ。
避けるのは余裕があるが、足を滑らせないように足元だけは注意しよう。
近い距離で空高く飛び上がったカポウツェロの動きを見ようとすると雨が目に入って見えないので、少し距離を取って目線を低くする。
カポウツェロは俺が距離を取った事にすぐに気づき、その場から斜めに一直線に突っ込んできた。
だがカポウツェロも地面にぶつかるような事はしないので、俺の目の前で急減速する。
俺はその攻撃をバックステップをしながら身体を捌いて躱し、カポウツェロの動きを再び目で追う。
片手が開いてれば、クチバシを掴めたかもしれなかった。
カポウツェロは地面から1mほどの高さを平行に飛びながら俺から離れていく。
翼の動きが目に見えて遅くなった。
羽ばたく回数も段々と減っていく。
俺はカポウツェロの後ろを急いで追いかける。
おそらく着陸するのだろう。
やはり雨の影響をかなり受けているのかもしれない。
カポウツェロは地上に足を付けてこちらに振り返ると、翼を大きく広げて威嚇した。
だが、それが威嚇と分かっている以上、なにも怖くない。
天気が良ければこの鮮やかな翼がもっと綺麗だっただろう。
カポウツェロは再び翼を上下に動かし飛行準備を始めるが、俺との距離はもう目と鼻の先だ。
「ハァ……ハァ……、<弱点感知>」
俺は一応<特能>を使って核の位置を目で把握する
やはり資料通りカポウツェロは核が小さい。
ズチュンッ
俺は走り出したカポウツェロの正面で地面を強く踏み込むと、顎下から脳天に向かって左手の短剣を振り上げ、すかさず右手の鞘をカポウツェロの首に押し付けて鍔に引っ掛けながら地面に押し付けた。。
「よかった……」
地面に倒れているカポウツェロの身体が溶けていく。
核を外したら面倒だからな……
それにしても全力で走ったので疲れた。
1分だけ休憩してから報告しよう……