第三十九話「クソ鳥」
「おい、アレン!」
「弟がそろそろ武器の点検に来いって言ってたぞ!」
俺が認識票を足首に付けていると、ノアがコーヒーを片手に呑気にやってきた。
「今日の帰りに丁度、寄ろうと思ってた」
「おう、そうか!」
「それと今日はあまり無茶するなよ!」
「わかってるって」
俺はノアに見送られながら階段を下りてレゼンタックを出ると、南門の方へ足を進める。
街に人はまだ少ない。
南側は国道があるので本来は新人の役割ではないのだが、昨日、怪我した人の代打で俺が出ることになった。
俺は国道よりさらに南の森付近を担当する。
一応、ウォロ村から来たということで土地勘があるという事になってしまった。
だが、あのクソ鳥とクソ猿にリベンジできるかもしれない。
俺は南門で準備を済ませ壁の外に出ると、地点K46に向かって走った。
現在時刻は朝6時。
天気は小雨。
最近、雨の日が多くなった気がする。
ただえさえ視界が悪いのに、眠すぎて目が開かない。
とにかく10時まで頑張ろう……
「なるほど……」
2時間ほど走り回って分かった事がある。
それは地点A1からA2を移動するのと、地点K1からK2に移動するのでは距離が違うことだ。
休憩中に地図を広げ、地面に計算式を書きながらザッと計算したところ、約1.3倍、距離にして400m弱、長い。
移動距離という意味では大丈夫だが、15分という時間の制約にペースを崩されて変に疲れてしまった。
「あー、ねむッ」
「……地点K41、8時方向にカポウツェロを発見、距離300」
「……10-0」
「10-4」
やっぱ一人だよな……
一人ぐらい加勢が来て欲しかった。
そっぽを向いているが、おそらくこちらには気づいている。
あの大きな黒い眼はいつみても怖い。
まぁいい。
やっとあのクソ鳥にリベンジできる。
あの時はクソ鳥の情報が薄かったが、あれから俺は生態表を読み込んだ。
アイツは飛び立つ時に助走をつけるが、その時に一番、無防備になる。
だが、この距離では先に飛び立たれてしまうので、まずはあえて飛ばせてしまう。
そして、アイツは長く飛ぶことが出来ないので降りてくるのを待つのがセオリーだ。
飛行中のアイツの攻撃を避けるコツは点ではなく線で軌道を読むと書いてあったが、初見でも避ける事はできたのでなんとかなるはず。
とにかくあの長いクチバシに注意すれば大丈夫だ。
1つだけ気を付けなければいけないのは、カポウツェロは身体の大きさの割に頭が小さいのと比例して核が小さい。
間違えても首を切断することだけは避けなければならない。
「よし、復習おわり!」
俺が気合を入れて一歩、足を踏み出すと、今までそっぽを向いていたカポウツェロのがこちらに身体の正面を向けた
そして、俺がもう一歩、足を踏み出すとカポウツェロが翼を大きく広げて助走をつけ始める。
リベンジ開始だ。