第二十三話「カッコいい」
カチャンッ……カチャカチャ……カチャッ……カチャン
ハリソン君は黒いバッグから銃を取り出すと、本体に短剣やらなにやらを付け始めた。
銃の先の短剣は折りたためるようだ。
……何をやっているのかよく分からないが、カッコいい。
座っていたおっさんも、ハリソン君が銃をいじっているのをジッと見ている。
「ハリソン!」
「遅いぞ!」
俺はカチャカチャと準備をしているハリソン君を横目に、ノアがいる場所に近づいた。
壁にはなにやらベルトコンベアのような装置がついている。
「アレン、今日はどこで終わる予定だ?」
「北門……だよね?」
「そうだ!」
「そしたらな、武器ケースをここに置いて[北]のボタンを押せ!」
「機械様が北門まで運んでくれる!」
「いちいちここまで戻ってくるのは面倒だろ?」
「おぉ……」
なにこの便利機械。
ピッ
俺の武器ケースがベルトコンベアで運ばれていくのを眺めていると、横からハリソン君が割り込んできた。
「……ノアさん、この大きさ大丈夫ですか?」
「大丈夫だろ!」
「槍のケースでも問題ないからな!」
ピッ
ハリソン君は俺と同じように[北]のボタンを押すと、バッグが見えなくなるまでキラキラとした目でずっと眺めていた。
男ならハリソン君もオートマチックな機械に興味あるよな……
「二人とも、これが通信機だ!」
「今日はお前たちには子機を持ってもらうが、明日からは親機を持つんだぞ!」
「あそこに通信機と一緒に担当の番号も書いてあるからな!」
ノアはそう言いながら、俺とハリソン君にトランシーバーの様な物を手渡した。
見た目で想像したよりも軽い。
そしてカッコいい。
俺は渡された通信機をクリップでベルトに固定し、インナーとパーカの間にコードを通してイヤホンを耳にかけた。
ゴム製のイヤホンは少しきついが、どんなに動いても外れなさそうだ。
しかし重さは大丈夫だが、左側に武器、後ろにポーチ、右側に通信機と、腰回りがごちゃごちゃしてきた。
「最後にここに書いてある表を見ながら忘れ物ないかチェックして出発だ!」
「俺も準備してくるから確認して待ってろ!!」
ノアはそう言い残し、手際よく自分の準備を始める。
出口の前で腰回りに手を当てている内に少しだけ緊張してきた。
ピッ
ベルトコンベアが流れる音が聞こえたので、俺はノアの武器を確認しようと振り返る。
ノアは思った通り槍を手にしていたが、その形状は少し不思議な物だった。
訓練用の物よりも明らかに太く、途中で大きくS字に湾曲している。
そして、槍の切っ先から30センチほど下がったところには槍と垂直に小さな刃物が出ているが、三叉槍とは違う。
「準備はいいか?」
「うん」「大丈夫です」
ノアがこちらに近づいてきたことで分かったが、槍と垂直に出ている刃物より切っ先側には小さな棘状の突起物もついている。
……おそらく『あの人』の武器だろう。
ノアが壁にはまっているドアを開くと、悶々とした空間に新鮮な空気が流れてきた。
いよいよ出発だ。
「クソガキたちー」
「頑張れよー」
後ろでお茶を飲んでるおっさんが笑いながら手を振ってくれている。
「いってきまーす」
俺はおっさんに手を振り返すと、ノアとハリソン君に続いて外に出た。