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第三章「レゼンタック」
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第十九話「拒絶反応」

 ヒナコはダイニングの床で正座をしながら目を泳がせている。


 この状況は……俺から何か話しかけたほうがいいのか?


「そのね!」

「ケイちゃんがね!」


 俺がヒナコに話しかけようと思い口を開いた途端、ヒナコが先に話し始めた。


「ケイちゃんが『風邪、移したくないから一人で寝る』って言ってたんだけど……」

「アレンはどこで寝る?」

「ちなみに私の部屋でも大丈夫だょ……」


 ヒナコはうつむきながらゴニョゴニョと話した。


 ……あぁ、そういうことか。


「……いや、大丈夫」

「居間の方に布団、敷いて寝るから」


 俺はそう言いながら立ち上がり、窓を閉めてダイニングを後にしようとする。


「そ、そうだよね!」

「そうだよね……」


 ヒナコは俺の後に続いて立ち上がり、庭のライトを消した。


「あ、明日ここ出るの遅い」

「12時集合だから」


「それじゃあお昼ご飯は?」


「うーん……、適当に済ませるよ」


「じゃあ用意しとくね!」


「ありがとう」

「おやすみ」


「うん、おやすみ!」


 俺はヒナコとの会話を終わらせると、ダイニングの引き戸を閉めて階段を駆け上った。



 俺もそこまで鈍感ではない。

 自意識過剰かもしれないが、ヒナコは少なからず俺に好意を持ってくれているだろう。

 この短期間でなぜ?という疑問はさておき、そのことに関しては別に悪い気はしない。


 だが、なんだろう……

 この悪寒に近いモヤモヤは……


 俺の心の中の何かがヒナコと接するのを拒否している気がする。



「うっ……」


 俺は部屋のドアに手をかける直前で、Uターンをしてトイレに駆け込む。



「うおェッ……」

「カハッ……、ぺッ」


 俺は急いで便器を両手で抱え込むと、そのまま嘔吐した。

 胃の中から喉を伝って口から透明なドロッとした液体があふれ出る。


 なにこれ……、気持ちわるっ


 胃が収縮した感覚はあるが、胃液とは違う気がする。

 ……触るのは流石に止めておこう。



 カイ……、オムさん……


 まったく、ゲロを吐いて思い出すなんて……



 清潔なトイレ、便器の冷たさ、自分の身体から出た物の奇想天外さが相まって、それ以上吐き気を催すことは無かったので俺は平然として部屋に戻った。



 適当に寝る準備を済ませ、寝室に畳んであった俺の布団を居間に移動させる。

 ケイは少し険しい顔をしながらも、仰向けの状態で静かに眠っていた。


 俺は寝る前に一度だけ短剣を眺めると、そのまま眠りについた。




 ピピピピピピピピ……


 目覚ましの音がいつもより小さく聞こえる。


「うーん……」


 ゴツッ


 ……びっくりした。


 俺は寝室の方を向くように寝返りを打とうとすると、肘が硬い物に当たる。

 ゆっくりと身体を起こすと、俺の布団の中でケイが眠っていた。


 俺は立ち上がって寝室の目覚ましを止めると、リビングに戻ってケイの肩をゆすった。


「お腹いたい……」


 ……起きているのか寝言なのか分からない。


「ケイ、体調は?」


「大丈夫だよぉ」


 ケイはそう言ってダルそうに起き上がると、うなだれながら顔を洗いに行った。


 ……大丈夫じゃなさそうだな。

 これってケイが休む場合は、俺が直接レゼンタックまで言いに行かなくちゃダメなのかな……



「めんどくさいなぁ」


 俺はケイが顔を洗い終わったのを確認すると、入れ替わるように顔を洗い、朝食の時間を待つ。



 ……でも仕方ないか。


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