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第三章「レゼンタック」
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第十五話「うっかり」

「よし、訓練再開するか!」


 ノアは俺に向かって槍を構える。


 俺は右手で持った鞘を顎の下で構え、左手で持った短剣をヘソの前で構えた。

 これならば、右足が前の方がいいだろう。



「少しだけゆっくりいくぞ!」


 ビュンッ


 ノアは俺の首元を狙って槍を真っすぐ突いてきた。


 俺は右手で槍をさばきながら、大きく左前に踏み込み、ノアの脇を斬り上げながら通り過ぎる。


「……どんな感じだ?」


「鞘が短いから右ひじが少し怖いかな……」

「それ以外はけっこう良いかも」


 ノアは左手で脇から流れる血を止めている。

 真っ白なワイシャツに血が滲んでいくのが分かる。


「……ちょっと待ってろ!」


 ノアはそう言うと、着ているワイシャツを脱ぎ、綺麗に畳み始める。



「すまんすまん!」

「これ以上、汚れるのは御免だからな!」


 ノアは脱いだワイシャツを建物の陰にそっと置くと戻ってきた。


 ノアって意外と几帳面なのか?



「……ノアって結婚してる?」


 左手の薬指に指輪は見えないが、ユバルさんが結婚している事を考えるとノアがそうであってもおかしくはない。


「結婚はしてないが同棲ならしてるぞ!」

「気が向いたら恋人にも会わせてやるよ!!」


 ノアは満面の笑みでそう言うと、俺に槍を構える。


 やっぱりノアが几帳面ということはなさそうだ。



 それにしてもノアに彼女がいるのか……

 その辺りの事情に関しては友達だと思ってたのに……


 いや、ノアもいい歳だしな……



「お前も彼女いるんだろ?」


「だからアレは違うって!!」


 俺は強めに言い返すとノアに向かって短剣を構える。



 ノアはニヤニヤしながら槍を構えると、前に踏み込みながら槍の先端を上げ、真っ直ぐ振り下ろしてきた。


 俺は身体の正面で右手の鞘を使って槍を受け、肘を押し出すように鍔を使って左に弾く。

 その動作と共に、ノアに正対したまま右前に移動し、ノアの左肘を斬り降ろす。

 余裕があったので左脇も斬ってバックステップで距離を取った。


 少しムカついたので股間を斬ろうと思ったが流石に可哀そうなので止めておいた。


「よし、今度は対応できてるな!」

「次から速度を戻すぞ!!」


「いつもより速くしてもいいんだよ?」


「……言ったな?」



 俺はノアを挑発すると、いつもより気合を入れてノアに挑んだ。




 時計を確認すると、もう4時になろうとしている。

 ノアは建物の端に畳んであったワイシャツを着始めた。


 あの後も数回、組み合ったが、だいぶ使えるようになってきた気がする。


 基本的には右手の鞘で受け流す、もしくは鍔で弾いてから攻撃に入るのがパターンだ。

 途中で肘のバネを上手く使う事がコツだと分かり、受けもだいぶスムーズになった。


 だが自分から攻撃を仕掛ける場合と、連撃の対処はまだ難しい。

 この二つはもう少し慣れが必要だ。



「……なぁ、アレン」


「なに?」


 息を整えながら顔を上げると、ノアが神妙な面持ちでこちらを見ていた。


「凄く言いにくいんだが、一つ確認して良いか?」


「う、うん」


 なんだ急に。


「その鞘にどんな目的で鍔をつけたんだ?」


「どんなって……、攻撃を捌くためだよ」


「だれの攻撃だ?」


「それはもちろんノアだよ」


「はぁ……」

「やっぱり、そうだよな」


 ノアはため息をつくと、目に手を当てた。


「俺たちの仕事内容はなんだ?」


「護衛と討伐?」


「戦う相手は?」


「……あ」


 俺がこの武器を向ける相手はノアでもなければ他の人間でもなく、モンスターだ。

 すっかり頭から抜け落ちていた。


「まぁ、攻撃を捌けることは悪い事ではないが、基本的にはモンスターの行動を見切り、PCCを一撃で破壊することが基本だからな」

「それは忘れるなよ」


「もちろんだよ!」

「ハハハハハ……」


 俺は笑い声を出しながら腰に差さった鞘を見つめる。


 この仕事ではノアとの訓練のように、こうしてモンスターと組み合うことは無い。

 つまり、わざわざ改造をする必要はなかったという事だ。



「はぁ……」


 バタンッ!


 俺がため息をつくと、運動場から建物に繋がるドアが激しく開いた。


 中から出てきたのは自信満々の笑みを浮かべるハリソン君だった。


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