第五話「掟」
残り時間はあと30分。
残り2問になり、ちらっと脇に目を向けるとハリソン君が机に突っ伏していた。
もう解き終わったのか、それとも……
まぁいい、自分の事に集中して最後まで頑張ろう。
Q104 モンスターの新種が生まれる条件と、新種、または変異体と思われる個体を発見した際の対処方法を答えよ。
新種のモンスターが生まれる条件は3つある。
まず前提として、モンスターのほとんどは双子で生まれ、同じ種が配合した場合はその種のモンスターが生まれるが、違う種のモンスターで配合した場合は一定確率でどちらかのモンスターが生まれる。
だが、三つ子以上で生まれた場合に限ってはどちらの特徴も持つ潜在能力を持った個体が生まれる場合がある。
一つ目の条件で生まれたこの個体を①とする。
二つ目は、①の個体が長く生きていること。
モンスターはある日、突然変異的に姿を変える。
それまでには①が生まれてから、何十年とかかる。
この突然変異した個体は変異体と呼ばれ、新種ではない。
また、変異体は先天的疾患を持っていることが多い。
この個体を②とする。
三つめは、②同士が配合した子供が生まれること。
②と現存のモンスターが配合した場合は、必ず現存のモンスターが生まれ、②のモンスターが生まれることはない。
しかし②同士で配合した場合、新種が生まれる。
(②は同じ姿をしていなくても遺伝的に一致していればよい)
新種は先天的疾患を持つことなく健康体として生まれ、さらに他の種と配合した場合でも一定確率で③が生まれる。
②および③と思われる個体を発見した場合、本部への報告後、視認できる限界の位置で観察する。
姿や歩き方や挙動を見てどのモンスター同士の新種、または変異体か、そして②と③のどちらかを判断し、随時報告をする。
②と思われる場合、責任者の到着後、即刻処分しなければならない。
③と思われる場合、責任者の到着後、可能ならば生きたまま捕らえる。
また、ランクが測れるまでは単独での新種への接近は禁止されている。
「ふぅ……」
回答用紙パンパンになったけどギリギリ収まった。
あの黒い鬼について調べていたのが役に立ってよかった。
Q105 任務時、モンスターと戦闘中に重傷を負った場合、どのような行動をするべきか。
手持ちの通信器具、または緊急発煙筒を使って助けを呼ぶ。
助けが来るまではその場で神に祈る。
できるなら遺言を残すべき。
間違っても街や国道に逃げてはならない。
……これは生態表の裏表紙に掟として書かれてあった。
この仕事では、どんなに死にかけても最後にモンスターの位置を報告した場所から動かないほうが良いとされている。
なんだか残酷にも思えるが、理には適っている。
ちなみに助けが来るまでは平均で3分程度らしい。
よし、終わった!
残り時間はあと10分もないが一応、軽く見直しだけしておこう。