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第二章「セントエクリーガ城下町」
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第七十八話「鈍痛」

 ダイニングに戻ると、机の上に白飯とスープ、一品のおかずが用意されていた。


「夜ご飯これしかないからね!」

「それで、ケイちゃんどうするって?」


 ヒナコはそう言いながら椅子を引き、俺の対面に座る。


「『もういいよ』だって」


 俺が淡々と答えると、ヒナコは目を手で抑える。


「はぁ……」

「ご飯食べたら早くお風呂入ってね」

「わたし、ケイちゃんと話してくるから」


 ヒナコはそう言い残しダイニングから出て行った。



 俺は静かな部屋で無言で手を合わせると、淡々とご飯を食べ進める。



 10分もかからず夕食を食べ終えると、俺は空の器に向かって手を合わせてからキッチンの流しまで運び、脱衣所に向かった。



 そして、泥だらけの服を脱ぎ捨て、風呂場に入り、汚れた身体を流すと、風呂に浸かった。



「ステイ」

「<猫足>切るの忘れてた……」

「あぁ……もう、めんどくさいな……」


 でも逃げるわけにはいかない。


 というか、俺は悪くない。

 嘘もついてない。

 それに二対一なのもずるい。


 しかし、こんなことをいくら言おうと言い訳にしかならない。

 泣かれて被害者面を向けられた時点で俺の負けだ。


 あとはもう時間が過ぎるのを待つしかない。



 心と身体は今日でだいぶすり減ってしまった。

 俺を支えている華奢な糸も切れてしまいそうだ。



 相談するならノアか?

 ……いや、トレバーさんだな。


 あの人なら安い同情でなく、俺が見たくない現実を言葉にしてそのまま投げてくれる気がする。

 時間があったら相談してみよう。



 ……所詮、俺もまだクソガキだな。



 いくら湯船に浸かっても、疲れは取れるが痛みが増すばかりなので、5分もしない内に湯船を出た。


 ピンクのパジャマに着替えてダイニングに戻ると、ヒナコがキッチンにいた。


「ケイちゃんもう寝たから起こさないようにね!」

「明日も7時半に朝ごはんだから!」


 ヒナコはキッチンで洗い物をしている。


「……ありがとう、おやすみ」


 俺がそう言い残しこの場を去ろうとすると、ヒナコは俺に向かって微笑んだ。


「おやすみ」


 ヒナコの返事を聞くと、俺はダイニングを後にし、階段を上る。

 足が棒になったみたいで、上手く上れない。



 部屋に戻ると適当に歯磨きをなどを済ませて寝室に行く。



 先程とは違い、ケイは布団から顔を出して眠りについていた。


 俺は立ったまましばらくケイの顔を眺める。



「はぁ……」


 俺はため息をつくと、自分の布団に入り目を瞑った。


 この調子だと眠りに入るのは早そうだ。



 瞼の裏では今日見てきた光景がいくつにも重なり合って浮かんできた。


 森の緑に赤い血は良く映える。



 昨日はあまり寝付けなかったので今日は安眠できることを願おう。

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