表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルってなんですか?  作者: Nombre
第二章「セントエクリーガ城下町」
112/244

第七十五話「煙草」

 村の中に恐る恐る足を踏み入れ辺りを見渡すとオムさんやケイの友達を含めた村人の死体が正門付近に固まって転がっていた。

 そして、その死体には無数のアゲハ蝶が群がっている。


 認識できる限りではあるが、おそらく村人全員だ。



 ……おかしい。


 モンスターは食料にするために人間を襲うのではないのか?

 それなのに、死体が残っているのは変だ。


 そして村の中にはあの鬼に足跡と思われる物がそこら中に残っている。


 生き残っている村人を探していた?

 人を食べるのではなく、殺すことが目的だったのか?


 だが村人の死体はほとんどが真っ二つになっていて生きたまま甚振られた形跡もない……



 ……ショックは大きいが意外と冷静を保てる。



「<貧者の袋>」


 俺は貧者の袋から財布を取り出し、その中から昨日ユバルさんから貰ったタバコと安っぽいライターを取り出した。

 タバコの箱の中には2本のタバコが入っている。


 ユバルさんも意外とケチだな……

 そういえば、ケイに昼飯代を渡してなかったな……


 落ち着くために一応貰っていた物なので今は必要無いのだが、せっかくなら吸っておこう。


 俺は煙草を口に咥え、小刻みに震える手で火をつける。


「ゴホッ……オェ」


 一吸いすると思ったよりもタールが強くてむせた。

 味はまあまあだ。



 捨てるのももったいないので、口の中で吹かしながら村の中に足を進め、まずウォロ村で俺が暮らしていた家に向かった。


 ここにはオムさんから貰ったグローブが置いてある。



 ボロいドアを開けてグローブを拾うと、俺は寝床の上に座り込んだ。


 鎌もあるが、これはもう必要ないだろう。



「ふぅー--」


 冷静なのは自覚しているが、身体が先に進むのを拒む。

 ずっと咥えていたせいか、早くも一本目のタバコは指先ほどの大きさまで小さくなってしまった。


 煙のせいで目は乾燥して、口の中はもちゃもちゃする。



 俺は火を消してからもしばらく呆けていたが、時間も無いので膝に手をつき立ち上がって家を後にし、次はオムさんの家に向かう。

 外は空が黒い雲で覆われ、少し暗くなってきた。


 天気予報とか確認しとけばよかったな……



 オムさんの家の前にはカイの大剣が落ちていたが、カイの脚はどこにも見当たらなかった。

 大剣の周りには鬼の足跡が残っている。


 おそらく脚は持ち去られたか食われたかのどちらかだろう。


 食われたならば他の村人が食われていな理由が分からないし、持ち去られたのなら理由がわからない。

 これはもう考えるだけ無駄だろう。


 とにかくもう帰りたい……



 俺は落ちているカイの大剣の欠片を何枚か拾ってポケットの中にしまうと、オムさんの家の中に入った。


 ここに来た最大の目的はあの残りのHPを教えてくれる赤い花を持ち帰ることだ。


 図書館で調べたところ、セントエクリーガ城下町でも手に入れることは出来るが、日常的に使うようだと意外と金がかかる。

 しかし、あの赤い花の群生地はこの辺りだ。


 本当ならば、このような死人から盗みを働くようなことはしたくないのだが、やるしかない。



 オムさんの家を隅々まで探していると、埃をかぶった実験器具が乱立している部屋を見つけた。

 その奥には植物が保管されており、当分困らない量の赤い花も保管されている。


 このままだと持ち帰れないのでポケットから紙袋を出し、グローブを付けて花を素手で触らないように出来るだけ詰め込んだ。



「はぁ……、よし、帰ろう」


 俺は紙袋にパンパンに花を詰め込め終わると足早に部屋を出ようとする。

 しかし、近くの机の上にあった写真に目が留まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ