第九話「一縷の望み」
……ん?
そういえば、さっきから自分の事を<村人>だと言っているが、鑑定以外で職業を知る方法がないならなぜ自分やウォロ村の住民が<村人>って分かるんだ?
あと、カイってだれだ?
「なぜ自分が<村人>って分かるんですか?」
俺は首を傾げながらオムさんに率直に質問する。
「ふむ」
「いくつかの職業には固有の<特能>というものが存在する」
「<村人>の場合、レベルが3~5になるときに<戮力協心>というスキルが発現する」
「このスキルは一定の範囲内にいる<戮力協心>スキルを持つもの同士で経験値を共有するというものだ」
「そのため、子供達には遊びと称してモンスターを倒して貰っている」
おぉ……
職業ごとの固有な<特能>が存在することは、既にスキルボードで確認済みだ。
鑑定が使えないのならば、そのような統計を使った調べ方があるのは妥当だ。
ただ、レベルが上がらないと<職業>が判別できないというのがデメリットになっているだろう。
それはそうと<特能>は少なくともスキルにSPを10ポイント振らなければ会得できないので、SPとレベルの関連性はあまりなさそうに感じる。
それに、この発言から推測するにSPで<特能>を得るという方法はやはり特殊なようだ。
オムさんにスキルボードの事を相談するのにはもう少し様子を見た方がいいな……
それに、子供たちに経験値を稼がせるとは少し道徳心に欠けている気もするがなかなかエスプリの効いた方針で面白い。
「……なるほど」
「あと、カイって誰ですか?」
「はぁ……」
「アレンよ、お前は村人たちに自己紹介したのか?」
オムさんは髭を触りながらため息をつく。
……たしかにこの村にきてから名前を教えたのはケイだけだ。
俺は首を横に振った。
「はぁ……」
「村の入り口で門番をしている奴がいるだろ」
オムさんは再び大きなため息をつく。
「……あぁ」
あの青年のことか。
「カイはレベル40の<守護者>、ケイはレベル24の<メイド>だ」
「お前とカイが戦ったら一瞬で殺されるだろうな」
呆れた顔をしながらオムさんはそう言うと、椅子から立ち上がった。
「なぜ、ケイとカイも職業が分かるんですか?」
「今日はもう遅い、また明日ここにこい」
俺がさらに質問をしようとすると、はぐらかされた。
仕方がない。
俺は立ち上がり扉の前まで足を進める。
「<HP>は自動で戻るから安心しろ!」
「ちなみに、私のレベルは35だ!」
オムさんの自信満々の声が後ろから聞こえてくる。
髭面のどや顔が容易に想像できた。
俺は振り返らずに手を振って家を後にする。
外にでるとすっかり日が暮れていた。
少し話し込みすぎたようだ。
オムさんは少し荒い性格だが、普通にいい人だ。
知識も豊富で話していて面白い。
日が暮れると途端に村人の姿が見えなくなる。
明かりも全くなく、凄く不気味な雰囲気だったので、俺は家まで走ることにした。
急ぎ足で家に戻るとすでにそこには食事が置かれていた。
多分、ケイが置いてくれたんだろう。
「4食連続は少しきついな」
俺はそうぼやきながら、ゆっくりと食事をとった。
食事を済ませ、俺は硬い藁の上に横になる。
「アクティベイト」
目の前に表示されたスキルボードには、昼前には無かったはずのSPが10貯まっていた。