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第二章「セントエクリーガ城下町」
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第六十五話「御馳走」

 ヒナコが開けた鍋の中を覗くと、薄い色をした黄金色の出汁に一口大の肉と何種類かの見慣れた野菜が入っていた。


「本当は魚にしようと思ったんだけどね、アレンお魚嫌いでしょ?」


 ヒナコはそう言いながらおたまで器によそい分けると、俺とケイの前に渡してくれる。


 どうやら昼間の反応を見られていたようだ。


 俺は薄笑いを返しながら、何気なくスープを口に少し含んだ。



「……うんめぇ」


 この鍋、もっとチープな味だと思っていたが全然違う。


 いうなれば、ウォロ村で食べたあの肉のスープの上位互換版だ。

 大きく違うのはウォロ村で食べたものは牛肉っぽい味だったが、こちらは香りから予想していた通り鶏肉っぽい味だ。


 そしてウォロ村のは、すべての具材の味が詰まった旨味の洪水という感じだったが、こちらは濃縮されたそれぞれの具材の旨味の雫が連続的に舌に落ちてくる感じだ。


 悪く言えば味がまとまっていないという捉え方もできるが、連続的に味が変化する分、素材それぞれの味が際立っていて美味しい。


 そして飲み込む寸前、下の奥で全ての味が交わり、喉を過ぎると鼻から豊潤な香りが抜け、味の余韻が下の奥から舌全体にゆっくりと広がっていく。



「……おかわり!」


 味の余韻に浸りながらチラッと脇に目を向けると、1杯目を食べ終わったケイがヒナコに2杯目をよそって貰っていた。


 ケイは地球で生きている内では考えられないような、このとんでもない代物をしっかりと味わっているのだろうか……



 俺は鍋の中身の量をさりげなく確認すると器をテーブルに置き、肉に箸を伸ばした。


「うんっま」


 器の中では形を保っていた肉は、口に入れ、一噛みした途端にホロホロと崩れ、牛肉にも負けない旨味と脂のほのかな酸味が舌の上に重くのしかかる。

 そして2噛み、3噛みと噛んでいくうちにトロトロの脂が肉にまとわりつき、肉本来が持っていた甘みを引き出していく。


 昼間に食べた、あのヘンテコな魚とは大違いだ。


「……おかわり!」


 肉が口から無くなるのを惜しみながらゆっくりと咀嚼していると、ケイが2杯目を食べ終わり、三杯目をヒナコによそって貰っている。


 もっとゆっくり食べた方が良いとケイに言うべきだろうか……


 まぁ、放っておいてもそのうち満腹になるだろう。



 俺は次に、器に入ったトロトロの野菜を箸で口に掻き込んだ。


「うん」


 言わずもがな美味い。


 形が崩れるまで煮られた野菜は、十分にスープの旨味を吸っている。


 味を探そうとしても思考が止まり、美味いとしか考えられない。



 俺は少し冷めたスープと共に器に残った具材を口に入れると、ヒナコにおかわりをお願いして、もう一度アツアツの鍋を楽しんだ。

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