その9 痛みーむ
タイトル考える才能あるわこれ
真っ暗な廊下を、裸足の少女が瓦礫に注意しながら慎重に進んでいる。ここらへんは目立った崩壊は少ないが、それでも注意が必要だ。暗くなった今、蛍光灯の割れたのがあるかもしれない。尖った小石も踏んだら刺さる。実際、いくつか危険な箇所はあった。
「なあ暁、この蛍光灯外して持ってったら使えないかな」
「どこに包んで持っていくんだ?割れたら危ないだろ。それにどうやって外すんだよ。肩車?」
「なんか布とか段ボールとかあればいいなぁ。そしたらこんなに注意しながら進んだりっ痛っ」
「どうした?切ったか?」
「や、踏んづけた。石だ。ちくしょー、一歩ぐらい良いだろー」
足に体重をかけないでその先が大丈夫か、といったまさに手探りで進んでいた。めんどくさいし、時間はかかるし、けっこう大丈夫だから油断はするし、その油断を狙い打ちするかのように悪いことはある。ただ今回はめんどくさがった鳴島がゆっくりとだが普通に歩いていたのが原因だ。
「ったく、早く戻るぞ。さっさと洗い流さないと」
「平気だってこんぐらい······」
「死にたいらしいな?破傷風は辛いぞ?全身が固まるんだ。首吊りのが倍は楽だね」
「······そんなこと言うなよー。わかったよ」
「とりあえずとっとと石抜いとけよ」
しばらくして、今度は問題なくロビーに戻ってきた。隠しておいた水で足を洗い、缶詰め二つを二人で食べた。フォークで缶詰めを食べながら、不意に鳴島が話し出した。
「しかし、何が起こってんだろうな?」
「どうした鳴島」
「いやさ、これ地下にあったんだろ?おかしくねぇ?拳銃もさ。記憶無いけど入院してたってんなら見舞いの品としてはおかしいし、なんかのゲームですーって方がまだわかるぜ?脱出ゲームかな」
「あー、確かに。でも脱出ゲームで銃は無いだろ。キレて主催側撃ったら危険だし物壊すにしても斧があったろ?遠いもの壊すのなんて素人には無理だし」
「そこはほら、他の参加者を脅すのに使ったり?なぁ暁」
「そうだ、もう一人ってのはどんな子なのさ?見たところ鳴島のが探索向いて······いや、無かったわ」
「テメー······。まぁ良い。アイツはな、名前は築山っつって、まぁあたしらと同じで記憶が抜けてる少女なんだけど、あたしより数倍強い能力を持ってるのさ。凄かったぜ?」
「ほーん。どんな?」
「めちゃくちゃ怖かった。得体が知れなくって······えーと、なんだったかな。あれ?っかしーな?」
「おいおい······」