その2 見落し
上でがこがこと金属が動く音が聞こえる。ガリガリと擦れる音も。そして、ちっとも降りて来る気配がない。
「······もしかして、壊れてたりする?」
そうなるとここから出れないのでは?いや、落ち着け。他の部屋には窓があるかも知れないし、最悪ここの扉をこじ開けて飛び降りれば良いじゃないか。もちろん、ここが地下ならそれは無理だけども。全然大丈夫だ。地下だとしても、映画みたいに通風口から上がっていけるはず。大丈夫。体ちっこいし。
いくら待っても降りてこない昇降機を後にして、私はとりあえず探索することにした。こういうのは、切り替えが大切なのだ。
後ろへ振り返り、自分が出てきた部屋ではない部屋の戸に手をかける。自分のいた部屋と同じように引き戸で、002号室と書かれたプレートがついていた。
「もしかして、ここって、地下······?」
慌ててキョロキョロと見回すが、残念ながら案内板のようなものはなかった。
わからないのは怖いけれど、つまりはまだ可能性が無い訳じゃ無いってことだ。大丈夫。まだ大丈夫。
そうやって気を取り直してから部屋に入る。見た感じ中の様子は私の部屋と同じのようだった。窓はなかった。ただ、こちらにはカプセルの奥に戸棚があった。もしかしたら見落としただけであったのかも知れないな目覚めたところにも。とにかく、戸棚を開けて中を覗いてみた。
「······借りるだけ、だから、ね」
そこには、ペットボトルに入った水が3つと、牛肉の缶詰めが2つ入っていた。十中八九他人のものだけれど、閉じ込められているかもしれない状況だ。もらっていくことにする。持ち主もいないみたいだしね。
そう言えば、と思い出してカプセルを覗きこんでみた。が、やっぱり誰も居なかった。ガラスには私の顔が映るのみだ。茶色の目、長いまつげ、整った鼻とかわいらしい唇。記憶する限りの自分だった。自慢の茶色の髪は少々ボサボサになっていた。出たらお風呂入ってとかさねば。
でも、やっぱりこんなところに居る理由が思い出せない。目覚める前は多分親と出掛けてたと思うんだけどなぁ。
そんな調子でもうひとつの部屋も調べた。やっぱり窓はなくて、戸棚はあった。中には、なんと銃が入ってた。色は黒くて、確かハンドガンとか言う銃だった。リボルバーではなかった。リボルバーのがカッコいいと思うからちょっと残念。長さは15、6センチぐらいで、マガジン?には弾が5発入ってた。
部屋から出てきてもエレベーターはまだ来ていなかった。そこで気がついた。エレベーターを呼ぶには上がるボタンを押すのだ。
あー恥ずかしい。そりゃ来ないよ。エレベーター右にしっかりと上がるボタンがあったのを、見事に見落としていた。やれやれ。
というか下ボタンが無いじゃん。ここ最下層じゃんか。恥ずかし恥ずかし!
上ボタンを押したら、ものの数秒でドアが開いた。とりあえず覗くだけ自分のいた部屋を見よう。何かあるかなー
案の定戸棚はあって、乾麺が入ってた。多分パスタだと思うけど、何て書いてあるか読めなかった。缶詰めの方は牛の絵が描いてあったから一目でわかったんだけど、こっちには絵はなかった。緑色の袋で、真ん中が黄色くて文字が書いてあるだけ。
しかし、銃もだけどここって日本じゃ無いのかなぁ。何てことを考えつつ、エレベーターに乗り込んだ。
ちゃんとこのタイミングで階層を押す!ボタンがへこむ!閉じる!よし!
これが天才的前回のマヌケリカバーです
あっいや伏線だから!探索フラグ立てただけ!ノーカン!ノーカン!