その12 深遠の神秘
朝。日が上り、鳥の声が微かに響く。のそりと起き上がり、空を仰げば、希望に満ち溢れた雲ひとつない青空が広がっていた。そういえば、朝起きてすぐに青空なんてはじめての体験だな。キャンプの時は色々やることがあって空なんて見上げなかったし。背伸びをして、澄んだ空気を胸一杯に吸い込む。
「そう考えると、もったいなかったか······」
硬い地面で眠り固まった背中や腰の筋肉をほぐしてると、鳴島が声をかけてきた。そういえば昨日、鳴島にとんでもないこと任せたような······
「暁ー!おはよー!」
「朝から元気だな鳴島は······」
顔を鳴島に向けると、意外にもそこに火はあった。ドラム缶焚き火のように段ボールに段ボールを突っ込んでそこに火を灯していた。
「お、意外。火が残ってる。絶対眠って消すと思ったのに。にしてもよくそんなに段ボールなんて見つかったな。腐ってそうだけど」
「それなんだが暁。つっきーが起きたら話がある。馬鹿にしないで聞いてくれよ?」
「分かったよ。どうした?熱でも出たか?」
「違う違う。お、つっきー!おはよー!」
鳴島のその声につられて振り向くと、体を起こして目を擦っている築山がいた。朝は弱いのかボーッとしていて、ひらひらと手を振っている。
「ちくしょー、仕草もかわいいなつっきー」
「そうだな······」
焚き火の燃えカスの回りで、それぞれ報告して荷物を確認することにした。まずは築山の探索の結果。ナースステーション等を回ったところ、私たちのカルテどころか地下の存在自体に言及している書類は残っていなかったらしい。一階のは操作盤が取れていてわからないが二階以降のエレベーターには地下の表示がなかったようだ。他の書類はまとめて火をつけられただけで放置されていたのに対して地下のことはきちんと隠蔽されていたのか存在していなかった。
「それはさておき、だ。あたしの腕が何本に見える?暁。」
「何をバカ──えっ」
何を馬鹿なこと言っているんだ、と言ってやるつもりで言葉が留まった。うっすらと見える『四本の腕』を合わせて六本の腕が鳴島から生えてるように見える。
「なんだよそれ?」
「いや、わっかんね。しかもこれだけじゃないぞ。腕から段ボールとガムテープが出る」
鳴島が半透明な腕を振る。真ん中二本の腕がロープのようにピンとガムテープを張り、下二本の腕が和服の袖のように段ボールを垂らした。
「えっ······ええ······?」
「いやーわくわくするな!こういうのさ!ちなみにそこのつっきーもなんか出せるぞ!ごつくてヤバい奴!」
「えっちょっと嘘まって」
「ほら出して出して」
「嘘でしょ??」
すがるように彼女を見上げるが、笑顔で顔をふるふると振ると、2メートルを超すほど大きな巨人が2体、うすぼんやりと緑色に光りながらその後ろに現れた。これはヤバい。まじでヤバい。
「そうそう、約束通り名前を考えておいたよ!昨日遠くから見たら目みたいに光ってたからグリーンアイモンスター!」
「どうか私をおいてかないでくれ鳴島」
「いやー、この流れなら暁にもなんか出るって」
「やめてくれよ······」
頭が痛くなってきたな。
やっとだよ
やっとメインだよ
ジョジョ3部みたいな大胆な打ち出し方のが良かったかな