街中で 2
サウォークは一刻も早く鍛冶屋の所に行かなければならないと考えていた。
酒がまわり、能天気な気分になっていた昨日は重要性によく気が付いていなかったが、ウヌワたちの会話をもれ聞いた今となっては、文箱については内緒にしていて欲しいなどという双子のわがままなど構ってはいられない。
そっと抜け出そうとして、私服に着替えた。
剣だけは背中によっこらしょと背負う。
配下にはお忍びで街を巡回してくると告げて抜き足差し足、廊下を歩いていると、一つの部屋の前から大騒ぎしている声がする。
そこでは下の姫たち(子供たち)が、勉強しているはずの部屋だった。
そうっと覗き見ると、双子の一人が血相変えてウヌワに詰め寄っている。
「アウナが無理だからってオノエなんてなおさら無理に決まってるでしょ!ウヌワねえさん、何考えてるの?」
「オノエはいいと言ってます」
「うそ!うそだ!!そんなことあるもんか!うそつきウヌワ!」
「ニマウ、あんたもいい加減に離れなさい。いつまでも二人でいられるわけじゃないんだから」
サウォークは、ニマウと言ってるからニマウなんだろうな、と考えた。
ニマウは思いっきり叫んだ。
「オノエがそんなこと、いいっていうはずがない!!ウヌワがそうさせたに決まってるじゃない!」
「じゃあ本人に聞いてみれば?」
昨日、双子に教えてもらった抜け道からよっこらしょと外に出ると、頭上から声がかかった。
「どこに行くつもりなの?」
ざあっと木々と葉が揺れる音がして、目の前に双子の片割れが飛び降りてきた。服が赤い。
「おまえ、嫁に行ってもいいって言ってるのか?」
「ああ…」
オノエは笑った。
「おじさん、都から来たんでしょ?人がいっぱいいるんだろ?」
「まあ、いるっちゃいるけどよ。妹が怒ってたぞ」
「人がいっぱいいるってことは、剣の腕がすごい奴もいっぱいいるってことだろ?」
双子の片割れは男みたいな口をきいた。
「ぼくもっとたくさんの人を知りたいんだ!」
サウォークは沈黙する。
公爵どころか侯爵の嫁になって、ぼくがと言いながら強い奴と剣をまじえる。
そんな侯爵夫人がいてもいいなと思うし個人的には好みだが、実現することはまずないだろう。
籠の鳥のような生活なのに。
まして、嫁になるというのがどういう事なのかわかっているのか。この娘は。




