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ラベル・エラベット  作者: 天海 悠
回廊にて
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街中で 1

 




「妹!?あの背の高い…」


 カペルはそこで言葉をおさえ、トゥアナの前で『美人』と言うのをけた。

 遅まきながら気付く。

 妹と浮気してたんだよな?

 ソミュール伯とトゥアナは、夫婦仲がよくなかった…ってことか?

 カペルは探り出そうとして言葉を探した。


「妹が伯の恋人だったっての?」

「よくわかりませんわ。わたし、うとくって」


 トゥアナは肩をすくめた。

 カペルは全力をこめてトゥアナの顔色を透視しようとした。

 ソミュール伯の冷たい、貴族らしい顔だちを必死で思い出す。トゥアナの可愛い、少女らしい顔立ちと並べてみた。ついでに一緒に寝ている所を想像してみた。


「あまり共通点のない二人だったし、話をしているのを見たこともないの」


 夫が妹と通じて子供まで産ませるとは…。

 女が一番嫌うのは浮気だと聞く。

 しかもその子供はもしかすると、トゥアナが推しているベルガと後継者を争う立場になるかもしれない。

 悲しんでいるのか、嫉妬があるのか、憎しみがあるのか…。

 彼女の表情からは何も読み取れない。

 トゥアナは手をひらひら振ってみせた。


「ほら、私ってぴょんぴょんしているでしょ。殿方は扱いづらいらしくって」


 逆にあまりにもあっけらかんとしているので、貞操観念や倫理感などまったく存在しないのかと疑うほどだ。

 こんなことを言っては何だが、とカペルは考えた。

 考えてみれば父親があれだし、はっきり言ってトゥアナがソミュール伯と「合う」ような気がまるでしない。

 いくら想像しても、ソミュール伯とトゥアナがお行儀よくベッドに並んで棒のように寝ている姿しか想像できない。

 そこから発展しそうにない。


(しかし、女ってのはよくわかんねえからな)


「ベルガはともかく、モントルーたちがアドラのことをどう受け止めるかしら?父とソミュール側の人のことを信じていないし、恨んでいます。脅威としか思わないでしょう」

「今はギアズの子ってことになってるんだよな?」

「そうよあの子はこのまま、ウヌワの子として育てることが出来たらいいのでしょうけど…。そううまくいくとも思えないわ。ギアズはいいの。ウヌワです。あの子はモントルーが大嫌い!」


 ウヌワがベルガを見る目にも軽蔑がこもっていた。


「ウヌワのお母さまは、ウヌワの目の前で死んだんですの。あの子には今も深い傷が残っています」


 彼女の声にばかり気を取られていたカペルは、後ろから複数の叫び声が聞こえてさっと立ち上がる。


「何事でしょう?」


 叫び声は、男女入り乱れて聞こえてくる。カペルはトゥアナを後ろにかばった。

 すると、道の向こうから太った男がふうふう息を切らしながらこっちに向かって走ってくるのが見えた。


「サウォークじゃねえか!」


 ロトの指示で彼を連れ戻しに追ってきたのかと身構えたカペルだったが、サウォークは私服でいて、しかも後ろから大勢の連中が追いかけている。


「カペル!カペル!助けてくれ~!!」





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