打ち明け話 3
ぶらぶらと歩きながらずっと話している間に、ふっと人がきれた瞬間があった。
見晴らしのよい場所で石の上に座り、周囲に人がいないことを確認してカペルは言った。
「おれはベルガに預けることに決めたよ。もういいだろ」
それが何かは言わなかったが、トゥアナは頭を動かさずに声だけをひそめて答えた。
「わかりましたわ。でももうちょっと待ってくださる?今渡すとモントルー側が調子に乗りかねませんわ」
「わかった」
「町中、モントルーだらけですもの」
「何?」
胸に入れた小さな袋、その中にある印章がずしっと重くなった。
トゥアナは足先をぶらぶらさせる。
「帽子に羽がついてますでしょ。あれはみんなモントルーですわ。おとなしくしてるように見えますけど…ここまで増えてるとは思いませんでしたわ」
部隊の位置を動かしておいた方がいいな、とカペルは考えた。
トゥアナが体を動かして、近くによりそってくる。
「!」
カペルは細いのにふわっと柔らかい彼女の腕の感触を感じて体中が緊張してしまった。
「ウヌワが子供を抱いてますでしょ」
トゥアナは相変わらず小さな細い声で言う。
「あれはウヌワの子供ではありません。ソミュールの子供ですの」
えっ!?
カペルが思わず声を出しそうになるのと同時に、トゥアナは腕をまわしてぎゅっとカペルに抱きついた。
どうして考えなかったのだろう。
子もち!?
彼女、いつ出産したんだ?
「反逆者の跡取りとして殺される恐れがあったので存在を隠していたのです」
「子供って…あ…あ…あ」
「隔していて申し訳ありません。あなたがいいかたなので早く言わないとと思ってましたけど…」
カペルの動揺を彼女は怒りと捉えたようだった。
心配そうな顔だ。
懇願するように近くから迫ってくる顔に、どうにも言いづらい。
やっとのことで言葉をしぼりだした。
「子供って、そのぅ…あなたの、だよね?」
「え?」
「ソミュールと、あなたのだよね」
トゥアナはぴょんと体を起こして、間近からカペルを見上げた。
「いいえ!違いますわ。違うに決まってるじゃありませんの」
カペルもびっくりしてぴょんと体を起こした。
彼女がどうしてそんなに興奮するのかよくわからない。
「セレステです」
意味が頭に入るまで数秒かかった。
(あーーーあのやたら色っぽい妹か!)




