涙と秘密 1
ロトはうさんくさそうな顔でサウォークをにらんでいる。
「ま~た何かくだらない末端情報でもつかんできたのを、お~げさに話すつもりなんでしょうがね~、そうはいきませんからね!だまされませんよ」
「いつもにも増してひどいなお前!大変なときにいなかったのは悪かったよ!悪かったって言ってるだろ!」
アギーレが寄って来た。
「つまんねえ。すぐおさまっちまった。血の宴にしてやろうと思ったのによ」
「警戒は解いていませんね?」
「要注意人物はリストアップしといたよ。だけど、乗らなかったやつもいるやね。市長と…驚いたね。あのモントルーの年寄りだ。血の気の多い奴と思ったのは見掛け倒しかよ」
「普通に考えて当たり前のことです」
「ところでくだらない末端情報ってなに?」
サウォークは双子との約束は守った。
上手に文箱のことだけは隠して二人に伝える。
ロトは眉を寄せる。
「塩ですって?」
「そりゃ大変。砂糖や胡椒は大丈夫なん?」
「他のも困ってるらしいが、塩が一番だな」
従軍を共にした身なら調味料の重要性はわかっている。
「ギアズの弟か…。塩のみならず、物流を握っていそうですね。慎重に調べましょう」
アギーレが手を上げた。
「ちょっと待ってくれる。それな、おもしれえやつがこっちに来るんだよ」
「誰です?」
「カペルの兄貴さ」
思わず二人ともアギーレの顔を見た。
「何ですって?何のために?」
「おれが呼んだんだ。奴な、カペルの兄貴だけど弟なんだよ」
「意味がわかりません」
「あいつな、父ちゃんの弟に世話になってんだよ」
アギーレは説明した。
「父ちゃんが破産して自殺してな、分家して都で商売やってた叔父さんの方が羽振りがいいわけ。そんで、カペルを養子にしたんだけど、もともとの息子だがカペルより年下なわけ。わかる?兄なんだけど弟なんだよ」
「うんまあ。だがそいつが何よ」
「都で物流握ってる商人の跡取り息子だぜ!」
「何で来ることになったんだ?」
ロトが肘で小突いた。
サウォークは無邪気に聞き返す。
「え?なんで?」
「バカですね。弟のうまい話をかぎつけて、うまい汁を吸いに来たにきまってるじゃないですか」
アギーレは耳をひっかいた。
「まあ、カペルは怒るだろうな。仲悪いからね」
「シッ!」
ロトが灯りを消し、指をさした。
三人は音をたてずにすっとソファの後ろにしゃがむ。
さすがに訓練され熟練した兵士の動きだった。




