怒り 2
トゥアナは足を踏み鳴らした。
「あなたいっつもそう、いつも自分の感情だけ!子供のころからそう!」
ベルガは子供の頃のことを持ち出されてうろたえた。
「そ、そんなことは…」
「狩をしたい遊びたい、勉強したくない!あれはいや、これはいや、あいつが嫌い!話したくない。わたくしとワベアがどんなに苦労しても、結局ひっくり返すの。そんなだから、モントルーが入ってきたときも、あんなことになってしまったのじゃないの!」
白髪のワベアが今頃になって立ち上がり、とりなすように言う。
「誤解だ、モントルーはそんなつもりではなかったし、ベルガのせいだけではな…」
「どかどか踏み込まれて、城下を踏み荒らして!城で殺されたのはウヌワのお母さまだけじゃないのよ」
「あれは奴らが攻撃してきて門を開けないから…」
「言い訳はやめて!いつだってどこでだって、やめる機会はあったはずです」
さっきまで、都への反感で一瞬だけ一体となっていたはずの城の空気がまた変化しはじめた。
市長は腰を下ろしてすわり、髪を撫でつけてテーブルを整える。
数名がそれに従った。
臨戦態勢を取っているカペルの配下たちに気が付いて周囲に合図をした。
トゥアナの甲高いわめき声が大広間のど真ん中で響き渡っている。
「そんなことでこの先、やっていけると思うの!?」
「トゥアナさま、ベルガの立場もお察し…」
「ここを全部焼け野原にするまでやめないつもりなの?いい加減にしてくださいませ!!」
「トゥアナ、落ち着け」
見る影もなくしゅんとなって顔をうつむかせ、トゥアナの説教を聞いているベルガを見かねてカペルがトゥアナの腕を取る。
トゥアナはまだおさまらないようで、腹立ち紛れに言い捨てた。
「どうせあなた、私の手紙だって真面目に読んでやしないんだわ!」
「そんなことはない」
答えたのはカペルだった。
トゥアナが真っ赤になった頬をカペルのほうに向ける。
「ベルガはあなたの手紙を読んで泣いてたんだぞ」
トゥアナは目を大きく見開いた。
「ベルガが?」
「そうだ。今、怒ってるのだってあなたの身を心配してのことだろ」
「わたくしの身なんかより、領民のことを心配して!!!これだけ苦労したのに」
トゥアナは言い返したが、その声はだいぶ弱まっていた。
ベルガの方を向いてたずねる
「本当に?」
ベルガはぶっきらぼうにうなずいた。
「読んでくれましたの?」
「……」
カペルは、トゥアナの顔にうっすら赤味が浮かぶのを苦しい気持ちで見守っていた。




