角突き合い 3
「あなたはいいかたですわ」
トゥアナはもたれていた頭をちょっとだけ離してカペルを見上げた。
「そ、そ、そうかな…」
「私のこと信用してくだすって、気持ちをわかってくださって、話をきいてくださるの。そんなかた、誰もいませんでした」
「そ、そ、そういう…」
カペルは真っ赤になって立っていられないほど膝がガクガクしていた。
タイミングを見計らってキスをしようと考えていたのはまだ余裕がある時で、今はすべて頭から完全に消えている。
「頑張ってて一生懸命なあなたが…好き…だから…」
胸をバクバクさせながら、カペルは別のことばかり考えている。
彼女は、ソミュールもベルガも好きじゃない!
太子には困ってる。
ずっと薄曇りだった胸の中がぱっと晴れて青空が広がった。
彼女だってまんざらじゃない。
きっといいって言ってくれる。
喜んでくれるかどうかまではわからないが、きっと、きっと嫌がらないに決まってる。
大丈夫だ、大丈夫!!
何かが倒れるような、割れるような派手な音がして、カペルとトゥアナは同時に広間の方を見た。
宴席は奇妙に静かになっている。
トゥアナは髪をなでつけ、服についた草の葉を落として、しわをのばした。
「さて、帰らなきゃですわ。あの二人、大喧嘩してなきゃいいんですけど…」
カペルががっかりする暇もなく、トゥアナは彼の手を取った。
「あのお手紙を覚えていらっしゃる?」
「も、もちろん」
「わたし、あなたにおまかせしますわ。全部あなたに」
「トゥアナ…」
「あなたは指揮官です。わたしたちに厳しい処分を言い渡さなくてはならないこともあるでしょう。でもかまいません。あなたに全部従います」
トゥアナは思いきったように、カペルの頬に唇をあてた。
背中を向けて先に広間のほうに急ぐ。
カペルはぽつんと独り取り残されて、後ろ姿につぶやいた。
「かえって無茶苦茶言いにくくなったんだけど…。どーすんだこれ」
トゥアナが急いで広間に入ると、皆がいっせいに彼女の方を向いた。
机に手をついて立っているベルガだけが下を向いて動かない。
太子の姿はすでになかった。
「いったい、どうなさったの?何がありましたの?」
ベルガが、ゆっくりとトゥアナの方を向く。
その顔は今は真っ白から真っ青になっていた。
ぎゅっと結んだ唇から、吐き捨てるように言葉が飛び出した。
「戦争だ!」
ぎょっとしてトゥアナはベルガを凝視した。
「はあ?何を言っていらっしゃるの?正気なの、ベルガ!」




