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ラベル・エラベット  作者: 天海 悠
回廊にて
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訪れ 3

 






 毎朝きちんと身を処しているので歯を磨く必要がなかったロトは、ギアズを追って出迎えに馬を走らせた。

 小さいとはいえ着飾った金の筋が入った鎧の部隊に囲まれてこちらに手を振っている羽(かぶと)の男がいる。

 お忍びとあってさすがに旗は降ろし槍部隊も連れていなかった。ロトは膝をついて迎える。


「太子さま」

「ロト!悪い知らせ」


 太子はロトに苦い顔でささやいた。


「母上はラベル家存続の方向だ。ロージンとアウナをまだ諦めてない。ど~してもくっつけたがってる」

「そうですか…」

「だからロト、わたし言ったよね!?とっととベルガをやっつけて公領断絶、アウナあたりはごほうびに早くカペルとくっつけちゃえって!」

「ねことは違うのでそう簡単にはいきません。気持ちもありますから」

「そこだよ」


 ロトは太子があえてロージンとアウナのことだけを言及し、トゥアナとベルガについて避けたことに気が付いたが知らぬ振りをしていた。


「あの人、前からモントルーを贔屓したがるんだよ。公領廃止でラベル家を断絶させて直轄地にすりゃいいじゃん!そっからモントルーをっちまえば…!!!」

「あの地を征服するのは至難の業ですよ。しかも隣国にかなり侵食されています。内乱は付け入る隙を与えます」

「だから!弱ってる今がチャンスだったんでしょお?」


 ぱしっとこぶしを叩いて忌々《いまいま》しげに足踏みする。

 これでも武闘派のつもりなのだ。


「でもさ、まあわたしだってこれ以上トゥアナに嫌われるのも嫌だし…仕方ない。いいよ。だがベルガみたいな奴にでかい顔されちゃ困るんだよ!…ところでトゥアナは?げんき?」


 ここまでトゥアナの退路をつ作戦できていたくせに、元気もくそもないもんだ、とロトは腹の中で考えたがいつもの調子を崩さずに冷静に言った。


「一の姫は、父上と夫君を亡くされたにしてはお元気の部類に入るかと思われますね」

「ソミュールなんて!」


 吐き捨てるように太子は言った。


「あんなの最初っから最後まで仮面夫婦なんだから平気平気!トゥアナだってせいせいしてるって!まあ…」


 少し立ち止まり眉を寄せる。


「エグルがそんなにあっさり死んじゃうなんてどうにも信じがたいけどね」


 ロトのポーカーフェイスに跳ね返され、太子は明るく続けた。


「まあ、それだけカペルのやつに運がついてるってことね!あいつほんっと強運だよな~、その二つ名を呼んで強運のカペル、なーんてね!」

「聞きしにまさるテンションですにゃ」


 ギアズがカペルの部隊の兵士の耳にささやいた。


「あの調子で思いつきですぐぽろぽろ戦いを起こしたがるので困ったものなんだよ」


 城門では皆が総出で出迎えた。

 太子はベルガを完☆全☆無☆視して真っ先にカペルの方に走りより、肩を抱いてその背中を叩く。






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