文箱の行方 3
そこまで見届けると双子は交互に助け合いながら高い場所にある窓のふちから飛び降りた。
「面白くなってきたぞ~!?」
「ふりだしじゃん」
服の色は鮮やかな赤を使っていてもニマウの話しぶりは冷静で落ち着いている。
落ち着きすぎているぐらいだ。
オノエはどこまでも元気だった。
「じいちゃんとこ寄る?」
「やめとこ。今日ここに来たってバレたらまずいよ」
「しかし、そっか!中身はないんだ」
イマナは考え深げに言う。
「あれにはねベルガをぎゃふんと言わせる何か大事なものが入ってたんだ。だからウヌワも欲しがってたんだよ」
「なんで?わかるの?」
「イマナたちが言ってた。トゥアナ姉さんは切り札を二つ持ってる。その二つがあのはこの中にあるって」
オノエは目を見張った。
「でもなくなってたじゃん!」
「城には絶対ないよ。手紙魔のトゥアナだよ?そんなわしゃわしゃした紙たばのかたまりなんて場所を取る」
「中身を見つけよ!面白くない?」
「何かわかるの?」
「どうせ手紙のたばでしょ?何が書いてあったんだろうね?」
「奴らがベルガを連れて帰ってくる前に確かめたいだろうね」
オノエは周囲に誰もいないことを確認すると、木々の間から星空に向かって思い切り手を伸ばした。
「お父様は強かった。お父さまはぼくたちを守るために戦って死んだんでしょ。がっかりさせたくない」
ニマウは後を走りながら言う。
「オノエは戦いに行きたいの?」
「言いなりになるのが嫌なだけ!ニマウは?」
「アウナみたいに連れてかれてジジイと結婚すんのはやだな。あの時はトゥアナが反対したから没になったけど。結局、だれかとは強制的に結婚でしょ」
オノエは顔をしかめて身震いした。
「あーやだやだやだ!!女でいてよかったことなんてひとつもない」
風がいつの間にか雲をすべて吹きはらっていた。
空は澄んで鮮やかだ。
丘陵に出るとオノエは名残惜し気に後ろを見てもう一度叫んだ。
「あー!男に産まれてれば良かった!どんなぼうけんだってできる」
ニマウは先を急ぐ片割れの背中を見ながらぽつんとつぶやいた。
「わたしはオノエが無事ならそれでいい」




