思惑 1
ここのところ閉じこもりきりで顔を見せなかった長女が大階段を急いで降りてくるのが見えた。すそをつまみ、優雅な流れるような仕草だがすごいスピードだ。
「便りがありましたの?何て言ってます?」
はぁはぁ上下する胸がとりあえず落ち着くのを待って、ロトは封筒をトゥアナに渡さずふところにしまった。
「戦いは回避されました。ベルガ殿を伴って凱旋されるそうです」
「そう!」
一言しか言わなかったが、トゥアナの顔がぱっと輝いて頬が赤くなるのが見えた。
ロトの機嫌はいよいよ悪くなる。
「これ以降の無用なお手紙は不要です。くれぐれもおとなしくしていて下さるようお願い致します」
「へえ?そうですか。ベルガが来るの」
冷たい声が聞こえてぎょっとする。
トゥアナと二人、おそるおそる後ろを向くと、そこには皮肉な笑顔を浮かべたウヌワが立っていた。
さらにその後ろんは赤ん坊を抱いたセレステが立っている。
じっとこちらを見る目を避けたように見えないように気をつけながら、ロトは直立不動でいた。
ウヌワは皮肉さをいよいよ増して言う。
「宴の準備をせねばなりませんね。本当に良かったわねお姉さま」
怖い。
怒って怒鳴り散らしているウヌワよりずっと怖かった。
ロトが口を開こうとするのと同時に、バタバタと大きな足音が聞こえて、双方の間、目の前を双子が叫びながら走りぬける。
「わーーーーーーー」
「やーーーーーーー」
ロトはこめかみを二本指で押さえた。
「あなた方、どうか…お静かに…!」
「いつだって練習してるの!」
「毎日の鍛錬が必要なんだよ!」
戦闘は回避できそうだとみてから、ロトもしめつけを少しゆるめていた。
太子の強硬な態度が軟化したとすればなおさらだ。
双子は手の届かない場所にかけていってから、からかうように声を上げた。
「見つかんないね姉さんの文箱!見つけたいよね!」
「手伝ったげる、探してあげるから、待っててね」
「あなたたち!」
げんこつを振り上げて二人をおどすウヌワの後ろに、ロトはふと気が付いた。
セレステが赤ん坊を抱っこして低く歌を歌っている。
おくるみの中からかすかに赤子の手が動き、美しい頬を寄せて頬ずりをしているのが見えた。
ウヌワはいらいらした調子で戻ってくると、妹から子供をひったくる。足音荒く双子を追って行った。
空っぽになった手をセレステは眺め、それから肩をすくめてきびすを返し、城の奥に戻って行った。




