打ち明け話 2
「殺してない?」
すごい目だ。
刺すように凝視されている。
「正確に言うと、ソミュール伯はやった。あいつ、停戦協定したのに夜襲かけてきやがってよ」
彼が戦死した時、部隊は喜ぶよりほっとした。
有能は認めるが、実に嫌な敵だった。
手強さには何種類かあって、尊敬の念、激しい憎しみ、二度と見たくないと感じる疲労の入り交じった嫌悪感とあるが、ソミュール伯はその後者だった。
停戦協定であわせた顔は細長くて青白く高慢で、頭からこちらを下に見る気配がある。
ラベル公の名代として来たと言う。
信用出来なさそうだと感じた。
予想を裏切らずにあっさり協定を破って闇討ちをかけて来た。
「だけどやつら、慌ててたね。統制が取れてなくて乱れてた。急ごしらえの軍か?って感じで追い散らせた。伯は見かけとは違って最後まで男らしかった。それは嘘じゃない。だけど、戦闘ってのは一人でやるもんじゃないからさ」
捕虜に聞くと、ラベル公は一日前に急死していたと言う。
ベルガは身を乗り出し、食い入るように聞いていた。
「病死か?他殺?暗殺された…?」
「わからない。もうラベル公は骨壺に入ってた」
「生きているかもしれないと?」
「捕虜が何人も死んでるのを見たっていうし、隠れる理由もない。逃げる場もないしな。第一、話を聞く限り逃げるキャラでもない」
ベルガはうなずいた。
「仕方ないから、ソミュールも荼毘に臥して、一緒にトゥアナに骨を送ったんだ」
「お前たちは、エグル・ラベルを殺していないと?」
「殺してない」
「そして、お前はそれをトゥアナに言っていないのか?」
カペルは居心地悪そうに体をもぞもぞ動かした。
「どう言っても同じだろ。おれたちが殺したも同然だから、変わりないよ」
「公表しなかったのはなぜだ?」
皆で額を集めて都からの指示を読んで相談した。
「太子からは何て?」
「『立派に戦って死んだことにしろ?』」
「うーん」
「『勇猛だったラベル公の名前を尊重してやってほしい』?」
「おれたちに何のメリットがあるんだ。仲間割れして殺しあったことを公開した方がすんなり城に入れるだろ」
「噂はすぐ回らぁ、何を考えてんだ都は」
ベルガが顔をしかめると鼻筋に皺が寄った。
「謎だな」
「うん」
ベルガはカペルの背中をどんと叩いてきた。
「よし、カペル、私と一緒にこの殺人の謎を解いて真犯人を見つけよう!」
「いやいやいや…それ違う話になっちゃうから」
老人とその集団と話していたサウォークが振り向いた。
「ベルガをラベル地区に伴う替わりに、おれらだけでモントルー地方に一度入れとさ。都との連絡もあるだろ。どうする?カペル」
「入ろう」




